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新説 呂布奉先伝 異伝  作者: 元精肉鮮魚店
第五章 その大地、徐州

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第四話(途中まで)

 陳宮と郝萌の謀反と聞いて呂布は大急ぎで徐州城へ戻ってきたのだが、そこで待っていたのはまったく予想もしていない状況だった。

「呂布将軍、お帰りをお待ちしていました」

「……何だか聞いていた状況と随分違うね」

 陳宮から出迎えられて、呂布は多少困惑する。

 謀反と聞かされて半信半疑ながらも急いで戻ってきた呂布だったが、徐州城には特に争った形跡も見えず、また陳宮が本気で謀反を起こしていたとしたら呂布が簡単に徐州城にたどり着けるはずもない。

「俺は陳宮と郝萌が謀反を起こしたと聞かされて戻ってきたんだが、それはどうなった?」

「我が軍内に袁術からの工作員が紛れ込んでいたらしく、その者達が私と郝萌の名を語って陥れようとしていたらしいのです。幸い郝萌と高順によって未然に防ぐ事が出来ました」

「俺は何もしていない」

 陳宮の言葉を高順は強く否定する。

 手柄を賞賛されていると言うのに、高順は何故かすこぶる不機嫌そうだった。

「……で、何故ごく普通な顔して周瑜が紛れ込んでいるんだ?」

「あ、気付いてました?」

 周瑜は笑っているが、隠れているならともかく紛れ込もうとするには見栄えし過ぎる容姿である。

「確か、孫策殿は江南の地を得たとか。その事で多忙なのでは?」

「その事もあって呂布将軍におねだりに来たのですが、まもなく戻られると陳宮殿に言われ、お待ちしていたところです」

 素直な口振りには好感が持てるが、この周瑜と言う男は孫策の無二の親友にして極めて有能な軍師と武将を兼ねた、稀有な人物である。

 若さ故か血気に逸って暴走しがちな孫策を、陰ながら支える周瑜の存在は孫策軍にあって非常に大きな存在だと、孫策自身が呂布に言った事があったのを思い出す。

 新たな地盤を手に入れたばかりの孫策にとって手元に残しておきたい人物のはずなのだが、それがここにいると言うのは不可解な事でもあった。

 それに呂布にはねだられたところで出せるモノなど無い。

 謀反の件は単純に誤報だったと言う事で処理し、呂布は周瑜や陳宮などを連れて徐州城に入り、高順達には引き続き徐州城近辺の警戒と警護を任せる。

 一応ではあるものの当初の予定通り袁術と劉備の和解には持ち込む事が出来たが、袁術軍には確実に不満が残っている事は容易に予想出来るので、感情だけに任せて軍を進める恐れもあった為、警戒を強めなければならなかった。

 高順は言われるまでもないといった感じで引き受けたが、意外な事に郝萌も外回りの方に協力を申し出てきた。

 基本的に内勤が多く、また袁術軍の警戒を同じ袁術軍所属の郝萌に任せるのもどうかと思うところはあったが、その方が都合が良いと陳宮が言うので任せる事にした。

 しかし、これまで何があっても我関せずだった郝萌が自ら名乗りを上げると言うのは、一体どう言う心境の変化だろうかと呂布は不思議に思う。

 誤報だったとは言え謀反の嫌疑をかけられた事への、郝萌なりの対処なのかもしれない。

 外回りの事は任せ、呂布は陳宮や周瑜を共に徐州城に入る。

 そこで来客は周瑜一人では無かった事を知った。

 陳登が相手をしていたのは初老の男性で、呂布とは面識は無いものの物静かな佇まいには深い知性を感じさせる。

「これは呂布将軍。お噂はかねがね。私は孫策の遣いで、張紘ちょうこう 字を子網しこうと申します」

「これはどうも、呂布奉先です。周瑜の話では、何かねだりに来たとか。ですが、俺にねだられても大したモノは持ち合わせていないと思うのですが」

「はっはっは、それは公瑾らしい物言いですが語弊がありましたな」

 張紘は穏やかに笑う。

 髪も髭も白い為に老人の印象の強い張紘だが、姿勢もよく声に張りもあるので実際には見た目より若いのかもしれないと呂布は感じた。

「我らの殿、孫策は混乱の続いた空白地であった江南をまとめ上げましたが、今はまだ小悪党共を追い払っただけの事。朝廷から認められて、初めて領主となるのです」

「その通りですね」

 陳宮が頷く。

「そこで朝廷に正式に認めていただけるよう、私が使者として赴くところだったのです。ですが江南の地は朝廷から遠く、また我が主孫策は二十代の若輩の身。領主の重責に耐えられるかを不安視される恐れもあるので、呂布将軍からも推薦していただけたらと思い、そのお名前をお借りできたらと寄らせていただいたのです」

「そんな事でしたか。そう言う事でしたら、喜んで」

 呂布は張紘の申し出を快諾する。

 確かに領主になるには若いところはあるが、孫策であればその重責も見事にこなせるだろうと判断出来た。

 若さ故に勢い任せなところは目に付くが、それもこの周瑜や張紘、父親の代から軍師を勤めている程普辺りが諌めれば良い。

「ほら、張紘先生。呂布将軍は実際に会ってみなければ分からないと言った通りだったでしょう?」

「ふむ。公瑾の言う通り。世間の評判とはアテにならないものですね」

 張紘は長い髭を撫でながら、周瑜に頷いてみせる。

「どうも俺は噂が一人歩きしやすいみたいで」

 呂布は苦笑いしながら言う。

「将軍の武勇伝は人の身では有り得ない、と思いたい人が多いんですよ。そこからくる嫉妬が、呂布将軍を化物にしているのです」

 周瑜が言う。

「人の悪意と言うモノはそう言うモノです」

 それに陳宮が続ける。

 分かっているつもりではいるのだが、呂布は軍師達の様に人の評判や感情、思考と言った目に見えないものを誘導するのは向いていないと言う自覚がある。

 妻の厳氏や娘も同じなので、呂布の人並み外れた武勲と真実とは言い難い事実が負の感情と絡まって、奇っ怪な呂布像が出来上がってしまったのだ。

すみません。

後半は26日中に更新予定です。

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