SCENE 56 * RENA * With Rian
二度寝していたレナは、携帯電話の着信で目を覚ました。ライアンからだ。シーツの中にもぐって電話に応じる。
「おはよ」
「なんだ。まだ寝てんのか」
「起きたから電話に出てるのよ」と、レナ。
「あーあ。んじゃ無理だな」
「なにが?」
「今ジャックの家出たとこ。そのままお前のとこ行こうと思ったんだけど」
当然、彼女はぽかんとした。「またジェニーの邪魔したの?」
「違うわアホ。十時半前、ジェニーから電話かかってきて。九時に待ち合わせてんのにジャックのアホがこないとか言って。合鍵があるから図書館まで行って、今ジェニーをあいつの家に送ったとこ」
レナはすばやく計算した。「一時間以上も待ったってこと?」
ライアンが笑う。「そう。すげえよな。オレは絶対無理。途中でジャックの電話の電源も落ちたらしくて、どうしようもなくてこっちに電話してきたっぽい。エレンに電話して、ただ寝てるだけだってのはわかったんだけど。エレンに電話する前にタクシー呼んでたから、ひとっ走り行ってきた。ジェニーを送ったらそのままお前に会えると思って」
彼女の脳が反応する。話そのものはよくわからないが、“お前に会えると思って”の部分のみが頭の中に残った。
「でも寝てたんならしょうがねえな」ライアンが言う。「一回家に帰るわ。寒いし」
「ちょっと待ってよ。でもどうするの? メグが家にいるんでしょ? こっちは一家全員いるわよ」
「メグは予定変更で十時に遊びに行くつってて、オレが家出る時にはいなかった。親父たちも仕事に行った」
レナはすぐ起き上がった。
「何分くれる?」
「んー。あ、んじゃ久々に図書館に入ってみる。ちょうどそこにあるし、そしたら寒くないし。ジェニーがあれだから、一時間は待ってやる」
一時間──ライアンの言葉とは思えない。自分も、一時間以上など待てない。できても三十分が限界のような気がする。「無理してない?」
「いや、今日はできる気がする。けどそれ以上は待たねえぞ。電話切ったら一時間きっちり計るからな」
ジェニー効果なのか? なんだか、ライアンが変だ。「わかった」




