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EVERY STEP  作者: awa
37/68

SCENE 36 * JENNIE * Girls Talk

 二月十二日、金曜日の昼休憩時間。

 二年F組の隣にある空き教室で、ジェニーはレナ、マリー、アニタと四人でランチをとった。

 空き教室といっても、生徒用の机や椅子は置かれておらず、代わりに会議用のテーブルが黒板と平行に八脚、テーブルひとつに対して四脚のパイプ椅子が置かれている。

 ミュニシパル・ハイスクールは、高確率でいろいろな教室を自由に使うことができる。もちろん特別教室の準備室には鍵がかかった状態であることが前提で、すぐに使える状態で楽器が置かれている音楽準備室や、見本となる作品があらかじめ展示されている美術室などには、簡単には入れないけれど。

 彼女たちは窓際の、前方からみっつめのテーブルを向き合うように使っていた。ジェニーの右隣にレナ、その向かいにアニタ、その隣にマリーが座っている。

 食後にと買っておいた紙パックのレモンティーをストローを使って飲み、アニタが言う。

 「みんな幸せそうすぎて超うらやましいんですけど」

 「あなたはいつでも幸せそうじゃない」と、レナ。

 彼女が笑う。「そうだけど。わかってるくせに。ラブラブすぎって言いたいの」

 「私に言うの? それ。“ラブラブ”なんて言葉が私とあのアホに似合うと思ってんの?」

 アニタが微笑みを返す。「じゃあ“アツアツ”にしてあげる。」

 ジェニーとマリーは顔を見合わせ、同時に笑った。

 「ヒートアップしてる!」と、マリー。

 「うーん」脚を組み、レナは椅子に背をあずけた。「そっちのほうがまだマシ」

 ジェニーが口をはさむ。「違いがわからないんだけど」

 「“ラブラブ”っていうのはあなたたちのことよ、ジェニー。可愛いらしくてウブな感じ。で」続けてマリーに言う。「“ベタベタしてる”っていうのはマリーとギャヴィンみたいなことを言うの。今じゃわりと普通に廊下でキスしかけてる感じ」

 マリーが顔を真っ赤にすると同時に、アニタは手をたたきながらけらけらと笑った。

 「わかる! 超わかる! あたしがマリーと一緒にいる時にギャヴィンが現れると、もうなんかすごい邪魔者になった気分するもんね」

 少しわかる気がしたので、ジェニーは笑った。

 「でしょ?」とレナ。「ジェニーたちとはちょっと種類が違うのよね。ジェニーたちは学校とか私たちがいるところじゃ絶対にそういうことしないらしいから、そういう雰囲気にはならないんだけど。マリーたちはもう、いいんじゃない? みたいな雰囲気になってるのよ」

 ジェニーとジャックは、学校だったり、友人たちと一緒にいる時は、手をつなぐことすらしない。友人たちに気を遣われることなく遊びたいという理由から、あからさまな取り決めをしたわけではないものの、ふたりのあいだには自然とそういうルールができていた。そしてそのぶん、自分たちだけの時間を楽しむことにしている。

 照れ隠しに顔をしかめ、マリーがレナに質問を返す。「そういうレナはどうなの? ランチに誘ったんだから、報告してくれてもいいと思うんだけど」

 このランチタイムは、昨日の夜、報告があるから女子会ランチをしようというレナからの提案ではじまった。

 アニタが彼女たちを見やる。「なに? 報告? いい報告?」

 レナが微笑む。「いい報告。だと思う。あのバカ、私にメロメロらしいわ」

 気持ちを聞けたのだと思い、ジェニーは安心した。「よかった」

 マリーが口元をゆるめる。「私は心配してなかったけどね」

 「ほんとに?」

 レナは質問を返した。「なんで?」

 「なんとなく」

 あまりにもあっさりな勘という名の答えに、彼女たちは言葉を失った。そして笑った。

 マリーが続ける。「なんかレナは“特別”って感じがするのよ。あえて言うなら、同じ地元の同級生の勘」

 アニタがまた笑う。「あんま説得力ないんだけど」

 彼女も笑った。「やっぱり?」

 「じゃ、あとはアニタにがんばってもらいましょうか」と、レナ。「そしたらまた、八人でピクニックができるわ」

 「言われなくてもがんばる。でもフラれたら慰めてね」

 マリーは顔をしかめた。「告白するまえからフラれる時のことなんて考えないで」

 「なに言ってんの」アニタは腕を組んで椅子に背をあずけた。「表と裏を考えておくのはキホンでしょ。ダメだった時のことを考えておいたらダメだった時、つらさがちょっとはマシになるし、うまくいったら喜びが倍増。これ恋愛のキホン」

 ジェニーは関心した。「そんなふうに考えたことなかった気がする」告白する気がなかったからかもしれないが、そんなふうに考えたことはなかった。

 レナが苦笑う。「アニタみたいな子、断る男いない気がする」

 「んー? フラれたことはあんまりないかな。フラれるまえにこっちからフッてやるし」

 「強いな、アニタは」マリーも尊敬の表情を浮かべている。「私なんかどうしようどうしようの連続だったもん」

 「私もそう」レナが言う。「なんか驚きの連続で、どうしていいかわかんなかったし」

 恋愛は、ヒトそれぞれだ。

 アニタは苦笑った。「強いってわけじゃないと思うんだけどね。まあ強気って意味ならそうだけど。プライドがあんの。人間は、自分を傷つけた相手のことは忘れないじゃん。自分が傷つけた相手のことは忘れるんだけど」悪戯に口元をゆるめる。「だからあたしは、傷つけられる前に傷つけてやる、みたいな。それと一緒で、フラれる前にフッてやんの。あたしよりいい女がいるはずないじゃん、あんたよりいい男はいるけどね、みたいな」

 ジェニーは心の底から、彼女を尊敬した。すごいの一言しかなかった。

 レナが笑う。「なに、かっこよすぎるんだけど」

 「どうしたらそんなに自信が持てるの?」と、マリー。

 アニタはにっこりとした。「だからね、プラス思考なだけじゃなくて、プラスとマイナスを考えること。それから、もちろん自分にできる最大限の努力をしたうえで、自分を卑下しないこと。それがあたしの信念。それがプライド」

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