SCENE 26 * RENA * With Jennie
レナは中学の頃から、誕生日の前日は必ず、夜の十一時までには寝るようにしていた。友人たちが零時ちょうどに携帯電話に送ってくれる祝いのメールを、誕生日の朝一番に見たかったからだ。
だが今年は、それができなかった。どうしても眠れずに、けっきょく、ジェニーたちが送ってくれたメールを読みながら、午前一時に近い時刻まで起きていた。朝起きてもやはり、そんなメールはなかった。
頭ではわかっていた。ライアンがそんな気の利いたメールを送ってくれるわけがない。わかっていたことだ。なのでダメージはない。諦めのほうが強かったし、やはりかと思うだけだった。ただ、少しでも期待した自分に苛立った。
ジェニーとジャックからの誕生日プレゼントの中には、なぜか片方しかないゴールドのピアスが入っていた。少し幅のある小さなリングタイプで、表側にはなにか文字のようなものが、裏側には“R”の文字が刻まれている。そして添えられていた白く小さな封筒の中には、“今日、これをつけてきて”というメッセージ。
よくわからなかった。
だがレナは、左耳にみっつあるうちの上から二番目のピアスをはずし、それをつけた。彼女はピアスをつけてはいるものの、普段は髪でほとんど見えないということ、ジェニーはわかっているはずなのに。
学校の、一時限目が終わった教室。レナは教室ひとつうしろの席にいるジェニーに訊いた。
「なぜひとつなの?」
「ああ、ごめんね。買った時にはちゃんとふたつ、あったの。なのに贈る時には、なぜかひとつ失くなってて。どこで落としたかわからないから、とりあえず入れちゃったの。でもほら」ジェニーは髪を右耳にかけ、そこについた黒のピアスを見せた。「私とおそろいなの。色違いだけど」
「本当ね。あなたもひとつ?」
「ううん、私はふたつ、ちゃんとあるの。でもレナのは、なぜか失くなっちゃった。ごめんね。今日家に帰ったら、もう一度よく探してみる」
「ああ、いいわよ。おそろいっていうのが嬉しいから、気にしないことにする。しかも“R”入りだし。ありがと」
レナにとっての“R”は、自分の名前のイニシャルであり、曾祖母の名前のイニシャルであり、レオの、そしてライアンのイニシャルでもある。
ジェニーはほっとしたように笑顔を見せた。「うん。つけてきてくれて嬉しい。今日ライアンとデートなんだよね」
話が突然切り替わったので少々驚いた。「デートなんてのじゃないと思う。ただ一緒に帰って、どうせまた、うちかボードウォークかで時間潰すのよ」
「あら、じゅうぶんデートよ」曲げた両腕を机に乗せ、彼女は微笑んだ。「センター街を手をつないで歩くだけがデートじゃないわ。一緒にいるのがデート。私たちだって、図書館でただ静かに本を読んでるだけの時もある。だけど、それだってデート」
レナは笑った。「あなたのそういう考えかた、好きよ。そうね、いくら私たちに“デート”なんて可愛らしい言葉が似合わなくても、デートだと思っておくわ。あと、約束。今日こそ、がんばってみる。ちゃんと気持ち、確かめる」
「うん。大丈夫よ。私が言うことじゃないけど、それでもちゃんと、気持ちはあると思う」
心強い言葉だ。「そうね。あったらいいな」




