SCENE 09 * RENA * Go Back To 2 Years Ago
「ローア・ゲートのひいおばあちゃん。やっぱりまた入院したらしいのよ」
「ほんとに? このあいだは元気そうだったのに」
「年だからね。見た目じゃわかんないけど、身体のあちこちがきてるみたい」
「じゃあ、お見舞い行っていい?」
「あ、俺も行く!」
「いいけど、レナ。受験勉強はどうするの?」
「大丈夫。お見舞いだけ行って、すぐに帰ってくるわ。道もちゃんとわかるし」
「俺が見張ってるから大丈夫」
「心配なのはあんたよ。すぐにあっちこっち行きたがるんだから」
「それは姉ちゃんだし。俺はちゃんとできるし」
「はいはい、わかったから。迷ったらすぐに電話してよ」
「はーい」
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「ひいおばあちゃん」
「──あら、まあ。レナにレオじゃないの。どうしたの?」
「また入院したって聞いたから。お見舞い」
「ひいばあちゃん、これ、花。買ってきた」
「あらあら、ありがとう。すごく綺麗ね」
「花瓶ある?」
「ああ、そこの棚の扉を開けて。そこに入ってるわ」
「──あった。レオ、できる?」
「できる。ヨユー」
「葉っぱとか落ちたら、ちゃんと捨てるのよ。水、入れすぎないで。新聞紙もちゃんと捨てるの。わかった?」
「わかってるよ、うるさいな。行ってくる」
「迷わないでよ!」
「まあまあ。レナもすっかり、いいお姉さんね」
「そりゃそうよ。もうすぐ高校生になるんだもの」
「そうね。試験はいつ?」
「二月十八日から」
「そう。がんばって。」
「うん。でもひいおばあちゃん、思ったより元気そうでよかった」
「──そうね。──でもね──病院と家を、行ったり来たり。本当に、もう──。──も、───たりしないで、早く──に──くれれば──」
「──そん、なの──」
「もう、──たいの。──のよ」
「──今、なんて、言ったの?」
「──レナ。よく、聞いて。わたしはもう、長くはないわ。あなたの晴れ姿を、見られないかもしれない。もしかしたら、あなたの大事な試験が、終わるまえかもしれない。だけど、もし私になにかあっても、あなたは、試験が終わるまで、ここに来ちゃだめ。お通夜にも、お葬式にも、来ちゃだめ。わたしのせいで、あなたの大切な日を、台無しになんてしたくないの。せめて試験が終わるまで、あなたはちゃんと、勉強、して」
「──いやよ、そんなこと──言わないで──」
「──私の、可愛いひ孫。愛してるわ、レナ。わたしのわがままだと思って、聞いてちょうだい。約束して。わたしとあなたとの、最初で最後の約束よ」