第四章②
ひとり、悶々としていた俺だったが、俺のことなどどうでもよかったんだ。
今は、ギネヴィアのことだ!
「すまない!! 俺が馬鹿だった……。ギネヴィアを悲しませたかった訳じゃない……。そんな顔をさせたかった訳じゃないんだ……」
俺は、今にも泣いてしまいそうなギネヴィアの手を握り、自分のことしか考えていなかった馬鹿な俺自身を殴ってやりたかった。
「俺は! 俺はギネヴィアを愛している!! すまない! どんな思いでこんなにもつらい過去を教えてくれたのか……。本当にすまない!」
「いいえ。旦那様の驚く気持ちも十分わかるわ……。それに……。こんな年増なんて嫌でしょ?」
「えっ?」
驚く? 確かに驚くべきことはあった。だけど、ギネヴィアと会えたのだから、俺は幸せだった。
それに、としま? としまって何のことだ?
んっ!?
「確かに驚くこともあった。正直に言う。俺は、当時の記憶を詳細には覚えてはいない。だが、それよりも、君に! 君に下の世話をされていたという事実が恥ずかしかっただけだ!! それに、昔の俺の体を洗ったり服を着せてくれたりということは……。俺のあそこが豆粒の頃を知っていると思うと恥ずかしくて!! だから……。成長した俺だけを覚えていて欲しい!! 豆粒の記憶を塗りつぶして……。あっ……。ちが……違くてだな……。ああ、すまない。とても混乱している……。だけど、俺はギネヴィアの境遇を聞いて、少し感謝もしている……」
「…………」
「もし、ギネヴィアが水晶に閉じ込められなかったら、糞ジジイと結婚していた……。ギネヴィアの味わった孤独を思えばこんなこと言うべきじゃないと思う。だが! 俺は、ギネヴィアとこうして共にいられることが何よりも嬉しい」
「………………」
「愛している。この世の何をおいても、ギネヴィアだけが俺の大切な人で、愛おしい人なんだ! あの時、王宮の庭園で話したことは嘘じゃない! 俺の妖精姫がギネヴィアだって知れて俺は嬉しいんだ!」
「だめ……」
「どうしてだ。何が駄目なんだ?」
「わたしは、貴方に相応しくないわ! それに、わたしは貴方の母親と同世代なのよ! 貴方には五歳年上の二十五歳だって嘘を付いたわ! 本当は……。本当は……」
「年が離れていて何が悪い? たとえギネヴィアと二十以上年が離れていたとしても何も問題ない! むしろ興奮する!! っちが……。違う!」
「……」
俺は自分の発した言葉でギネヴィアをドン引きさせてしまったようだった……。
下を向いた彼女は肩を震わせていた。
そうだよな……。
興奮するって何だよ……。
まぁ、正直興奮はしているよ。
薄い夜着と開いた胸元……。
って、そうじゃない!
今は、ギネヴィアから嫌われないように何とか挽回しなければ!
「違う。えっと、とにかく、歳が離れていても問題ないくらい俺はギネヴィアを愛していると言いたいだけなんだ」
「…………ふっ……うっ……」
なんてことだ……。俺は、ギネヴィアを泣かせてしまった……。




