第四章①
ギネヴィアから聞かされた話に俺は、いろいろと腑に落ちるものがあった。
考えられないほどの知識量、年齢に見合わない大人の考え方。
だけど、ギネヴィアがその知識を得る代償として感じた孤独や寂しさ、苦しさを軽く見ることだけは絶対にしたくなかった。
孤独、寂しさ……。それらの感情は俺がよく知っていたから。
そして、俺との出会い……。
嬉しい! とそう強く感じていた。
あの時の少女が幻なんかじゃなく、実在していたこと。そして、その少女がギネヴィアだったという事実がどうしようもなく嬉しいと、そう思うのと同時に俺は死にたいくらいの恥ずかしさを覚えていた。
だってそうだろう?
正直に言うと、幼すぎて当時のことを詳細には覚えていない。
ただ、幼子心に思ったのだ。
薄いピンク色の柔らかそうな髪の、榛色の瞳を持つ半透明の美しい少女と過ごした時間は、王宮で過ごした中で唯一の大切だと思える思いでだと。
思い出の少女とは、話をすることは出来なかったと……。そう思っていた。
それは、俺が言葉をちゃんと理解していないからだと思っていたが、実際にはそうではなかった。
姿は見えていたが、声は聞こえなかったのだと聞いて、俺は少しだけ安心していた。
俺を救ってくれた少女の声を覚えていなかったことがずっと引っ掛かっていたのだ。
少女の優しい眼差し。眩しそうに細められた、はにかむような笑顔。
驚きに目を丸める、可愛らしい表情。困ったように眉を寄せて首を傾げる仕草。
それを俺は覚えていたのに声だけが思い出せなかった。
だが……。
信じたくなかった……。
そうだろう?
だってだな、正直覚えていないが俺はギネヴィアの前で粗相をし、排泄の仕方を習っただけではいく……。
幼いころの豆粒の様なアレを見られていたという事実に俺は立ち直れなさそうだった。
今は、どこの男にも負けないくらいの大物に育ったという自信がある。
だが……。だがな、今後ギネヴィアとそういうことをするときにだな、過去の豆粒がギネヴィアの脳裏を過ったらと思うと……。
ああああああああ!!!!
穴があったら入りたい!!
それにだ……。
ギネヴィアがあの子だとして……。
ああああああああああ!!!
なんていうことだ……。
俺は……俺は……。
知らなかったとはいえ、言ってしまった!
十七の時……。
北部が安定したため、俺は周囲の勧めで社交界に顔を出すこととなったあの時……。
俺は、ギネヴィアに言ってしまったんだ……。
幼いころに会った、妖精姫の話を……。




