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旦那様の様子がおかしいのでそろそろ離婚を切り出されるみたいです。  作者: バナナマヨネーズ


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第三章⑤

 睡眠が必要ないわたしは、王子殿下が眠っている間に、再び禁書庫に訪れていたの。

 理由は、王子殿下のために何か出来ることはないのかと、少しでもいい考えが浮かぶようにと、そんな考えからだったわ。

 でも、一通り読み終わっている内容を読み返しても、これと言ったことは何も思い浮かばなかったのよね。

 そろそろ陽が昇る時刻だと気が付いたわたしは、厨房で王子殿下の朝食を頂戴してからあの小屋に戻ったの。

 

 王子殿下が目覚めるのを待っていたその時だった。

 ベッドの中の王子殿下がもぞりと動いて、小さく呻き声をあげたの。

 心配になったわたしは、すぐに王子殿下の元に向かったわ。

 そして……。

 起き上がった王子殿下の作り上げた世界地図を見て、目を丸くさせてしまったのよね。

 昨日、トイレの仕方を教えてあげるのを忘れていたことを、それを見て思い出したの。

 だけど……。

 

「あああああ!!! うううううぅうぅ!!」


 王子殿下が、突然泣き出してしまったの。

 どうして泣いているのか分からないわたしは、王子殿下を慰めるようにその小さな体を抱きしめられない代わりに、寄り添う様に近づいたの。

 そうすると、王子殿下はシーツを引き寄せてお尻の下の世界地図を隠したの。

 それを見たわたしは、王子殿下がどうして泣いてしまったのかを理解したわ。

 そうよね……。わたしが無神経だったわね。

 わたしの声は聞こえない。だから、大丈夫だと、そう伝えられるように出来るだけ優しい笑みを浮かべて王子殿下に寄り添うことにしたの。

 すると、顔を赤らめた王子殿下は、小さくすすり泣きながらもわたしのことを見てくれたの。

 触れられないけれど、頭を撫でる仕草をしてから、魔力で王子殿下を浮かせて、何もなかったかのようにベッドを整える。

 そして、魔術でお湯を出して、王子殿下を綺麗にしてあげた後、新しい下着とシャツを身に付けさせた。

 その後、身振り手振りでトイレの仕方を教えたのだけど、わたしの声が聞こえないからとても大変だったわ。

 それから王子殿下は、わたしが魔術を施した用足し用の壺でトイレが出来るようになったのよ。

 わたしの施した魔術は、壺の中の排泄物を分解し塵に変えるものだった。

 だから、仕切りのない室内で用を足しても匂いもしない優れものよ。

 

 そして、会話をすることは叶わなかったけれど、一緒に過ごすうちにわたしたちはお互いの言いたいことをなんとなく理解するようになっていたわ。

 

 それは、今まで生きていた中で信じられないくらい穏やかな時間だったと思うの。

 だけど、王宮側の王子殿下への扱いはとても酷いものだったわ。

 というよりも、存在自体が抹消でもされたかのように、いつからか誰も小屋を訪れる者が居なくなっていたの。

 初めてあった時は、数日おきに小屋の前に置かれていた食事さえ、今は届かなくなっていたわ。

 

 わたしは一緒に過ごすと決めたけれど、このままでは駄目だと、強く思う様になっていた。

 食事や衣類はわたしがいくらでも調達できた。

 でも、誰とも触れ合えず、声を交わすことも出来ない、そんな孤独をこれからも王子殿下に強いることなど出来そうになかった。

 せめてわたしの声が聞こえれば、触れることが出来れば、どんなに良かっただろう……。

 

 だからわたしは決めたの。

 元の体に戻って、王子殿下をこの孤独から外の暖かい場所に連れて行くのだと。

 

 それからは、王子殿下が眠っている間に、魔術に関する本を読み漁り、この状況を何とかできないかと考えるようになったの。



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