プロローグ
最近、旦那様の様子がおかしい気がする……。
わたしの顔を見て、何か言いたそうにするけれど、結局何も言わないのよ。
旦那様と結婚して十年の月日が経ったわ。
当時、十歳になったばかりの幼い旦那様と、見た目十歳くらいのわたし。
荒れ果てた北部を治めることとなった旦那様を支える為、結婚と同時に北部へと住処を移したの。
それから十年。
今では、王国内でも裕福な部類に入るほど北部は発展を遂げていたわ。
そうね。
旦那様の様子がおかしい原因を察したわたしは今までのことを思い出していた。
お小さかった旦那様が立派な紳士に成長された今。
わたしのような名目上の妻の存在は邪魔でしょう。
優しい旦那様が言い出せないでいるなら、妻として最後の仕事を果たさなければならないわね。
大丈夫。
旦那様を素敵な男性に育てたわたしには、何も言われなくても分かるのよ。
だから、旦那様の負担にならないように話を進めなければならないわね。
「アルトラーディ。大丈夫よ。貴方の言いたいことはちゃんと分かっているわ」
わたしがそう言うと、わたしの可愛い旦那様。アルトラーディは、ルビーのような瞳を宝石のようにキラキラと輝かせたわ。
うん。旦那様の嬉しそうな笑顔は、とても尊いわ。
「そう……なんだね。ギネヴィア。ありがとう」
「いいのよ」
さあ、旦那様が心置きなく離婚できるように準備をしなくてはね。




