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異世界逃亡  作者: nekorovin2501


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4/5

第4話 関所の鷹

肩を射抜かれながら関所を突破!

次回──王都目前の街道で、ガルド司祭が単身で待ち構える。

「神の目」に映る俺は、もう逃げられないのか?

第5話「銀仮面の追跡者」乞うご期待!

エリドンを抜けて三日目。

 俺は街道を外れ、森の獣道を進んでいた。

 手にしているのは、奪った神託の書原本。

 偽造の痕跡は明白。

 これを王都に届ければ、少なくとも「悪魔」の烙印は剥がせる。

 だが、街道は封鎖されている。

 教会の布告が出た。

 ──「黒崎零を目撃した者は即座に通報せよ。生け捕りは不要」

 殺してもいい、と。

 王都へ行くには、北の関所を突破するしかない。

 そこは王国最大の難所。

 城壁のような門と、鷹の群れを使った監視網。

 空を飛ぶ者を即座に発見する。

 ──だからこそ、俺は鷹の目を借りる。

 森の端、関所が見える丘に伏せる。

 空には十数羽の監視鷹が旋回している。

 どれも教会の魔法で繋がれた、生きた監視カメラだ。

 1回目。

 対象:一番高く飛ぶ老鷹。

 視界が開ける。

 高度200メートル。

 関所全体が手のひらに乗ったように見える。

 門の兵士配置、荷馬車の列、

 そして──関所長の私室。

 机の上に、俺の似顔絵と、

 「教会直轄の賞金首・死体確認で500金貨」という紙。

 生け捕りは不要、の意味がわかった。

 死体でいいらしい。

 2回目。

 対象:関所長の肩に止まる若い鷹。

 今度は室内。

 関所長は、銀の仮面の男──ガルド司祭と手紙をやり取りしている。

 手紙の内容。

 『転生者のスキルは「神の目」の盲点を突く。

  生け捕りし、王都へ護送せよ。

  ──大司教』

 ……やっぱり、俺のスキルが狙いだった。

 神の目と呼ばれる監視網を、俺は無効化できる。

 だから抹殺ではなく、捕らえて研究したいらしい。

 ガルドはまだエリドンにいる。

 だが、時間の問題だ。

 関所の門が閉まるのは日没後。

 それまでに抜ける。

 3回目。

 対象:荷馬車を待つ商人。

 商人の視界。

 彼は関所長に賄賂を渡し、

 荷台の隠しスペースを確保している。

 ──密輸用の空洞。

 大きさは、人が一人ギリギリ入れる。

 完璧だ。

 俺は丘を下り、商人列の最後尾に紛れる。

 ぼろ布を頭から被り、足を引きずるふり。

 前世の変装技術が、ここでも役に立つ。

 順番が回ってくる。

 商人「次の荷馬車は?」

 衛兵「中身は?」

 商人「薬草と布だ。いつもの通り」

 衛兵が荷台を槍で突く。

 ──俺のすぐ横を槍が通る。

 息を殺す。

 心臓がうるさい。

 「よし、通れ」

 門が開く。

 荷馬車が動き出す。

 俺は隠しスペースで体を丸め、

 関所をくぐった。

 ──突破。

 だが、

 門の外に出た瞬間。

 空から、鷹の群れが急降下してきた。

 数十羽が一斉に。

 まるで俺の位置を正確に知っているかのように。

 商人「なんだ!?」

 衛兵「転生者だ! 囲め!」

 ──バレた。

 俺は荷台から飛び降り、走る。

 街道を外れ、森へ。

 背後から矢が飛ぶ。

 一本が肩をかすめ、血が噴き出す。

 スキルは使い切った。

 今日はもう借りられない。

 森の奥へ、奥へ。

 追手の足音が近づく。

 鷹が頭上を旋回。

 逃げ場はない。

 ──と思われた、その時。

 森の奥から、低い唸り声。

 巨大な影。

 森の王・シルバーベア。

 体長4メートル。

 教会の鷹すら避ける魔獣。

 追手の衛兵が凍りつく。

 「ま、魔獣だ! 退け!」

 俺はベアの横をすり抜け、

 さらに奥へ走る。

 追手は魔獣に阻まれ、追跡を断念。

 鷹の群れも、ベアを恐れて高度を取る。

 ──逃げ切った。

 森の奥、倒木に座り、肩の傷を布で縛る。

 血は止まらないが、致命傷ではない。

 神託の書原本は無事。

 王都までは、あと三日の距離。

 空を見上げる。

 鷹はまだ旋回している。

 遠くに、銀の仮面の影が見えた気がした。

「……ガルド」

 奴は、もう俺を“獲物”として見ている。

 俺は立ち上がる。

 傷口が熱い。

 でも、歩ける。

「お前の目だけじゃない。

 この世界の全ての目を借りてでも──

 俺は、王都に辿り着く」

 ──関所を突破した冤罪の逃亡者。

 次に待つのは、王都の門と、大司教の罠。

(第4話 終)

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