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異世界逃亡  作者: nekorovin2501


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~冤罪のハッカーは目を借りて真実を追う~【第1部 街の鼠編】第1話 冤罪の目撃者

 ──俺は、殺していない。

 国家機密をハックしたのは事実。

 だが**「漏洩」**はしていない。

 真犯人は、政府の闇。

 俺はスケープゴート。

 追跡ヘリのサーチライトが、最後に見た光景だった。

 次に目覚めたのは、異世界の牢獄。

「悪魔の転生者、黒崎零! 神託により、火炙りの刑!」

 教会の審問官が叫ぶ。

 周囲は剣と魔法。

 首には「鑑定済み」の札。

 ──スキル【目を借りる(Eye Borrow)】

 ──1日3回、対象の視界を1秒間だけ借りられる。

 ──代償:頭痛。

 牢の外、群衆が石を投げる。

 「悪魔め!」「神の敵!」

 でも、俺は知っている。

 神託は偽物だ。

 誰かが「俺を悪魔」と仕立て上げた。

「動くな」

 衛兵が牢を開ける。

 鎖が外れ、俺は引きずり出された。

 その瞬間、最初の1回。

 ──対象:牢の隅にいたネズミ。

 視界が重なる。

 ネズミの低い視点。

 牢の床に、小さな排水溝。

 俺は走った。

 衛兵が叫ぶ前に、排水溝に飛び込む。

 狭い。臭い。

 でも、ネズミの視界が道を示す。

 排水溝の先は、市場の裏路。

 そこからさらに──

 2回目。

 対象:屋根のカラス。

 空からの視点。

 教会の広場に、審問官のリーダーが立っている。

 彼の手には、「神託の書」。

 ──インクが新しく、文字が揺れている。

 偽造の証拠。

 3回目。

 対象:審問官の副官。

 副官の視界。

 彼が見ているのは、懐に隠した金貨と、

 「王都からの密書」。

 ──**「悪魔の転生者をでっち上げろ」**。

 俺は笑った。

 冤罪の黒幕は、王都にいる。

 市場の荷馬車の下に滑り込み、

 布をかぶって息を殺す。

 審問官の怒声が遠ざかる。

 荷馬車が動き出す。

 ──逃げ切った。

 でも、これは始まりだ。

 頭がズキズキ痛む。

 1日3回の制限。

 使い切った。

 でも、

 視界は、借りられる。

 次は誰の目を借りようか。

 審問官の、

 王都の、

 あるいは──神託を偽造した黒幕の。

「お前の目、ちょっと借りる。

 冤罪を、証明するために」

 ──こうして、

 **「冤罪の逃亡者」**の戦いが始まった。

(第1話 終)

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