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第7話 ガチャのワクワク感は異常

 慌てて瞼を開けると、視界は青一色。

 気がつけば、オトギは再び最初の空間に立っていた。


「……はぁ、なんだそういう事かよ、チクショウ」


 その光景を見て、彼は今までの展開が茶番であり、かつ予定調和だった事にため息を漏らす。

 先程までと違い、ファトゥムの声は聞こえない。代わりに、1度斬ったはずであろう鎖が再度浮かんでいる。それも1つだけではなく、何個も何個もその場には浮かび上がっていた。


 これは所謂、ガチャ画面だ。

 ソシャゲにおいて最もドス黒い闇。プレイヤーの財布を喰らい尽くす悪魔。低い低い確率のキャラを求め、すり抜けに泣き、二枚抜きに狂喜乱舞し、一部の人間にとって本当に戦争の火種にまでなりえる、恐るべき沼。


 そんなオトギもまた例外ではなく、何度ガチャ天井を踏んだことだろう。課金額はとうに数えるのを辞めている。断じて後悔はない……後悔は……ない。多分、いや、ちょっとは……あるかも……しれない。


 そんなガチャも最近は演出が凝ってきていて、その画面を見ただけでどのゲームか分かる、なんて事もしばしばある。

 某宇宙を旅する開拓者のゲームなんかは列車からキャラ武器問わずに排出されるし、某馬のゲームではターフ画面で女の子が走ってきたりと、わりかし何でもありだ。


『フォーチュン・アルカディア』は比較的シンプル。鎖を斬ればモヤが具現化していき、キャラかアクセサリーとして姿を現す。たったそれだけであり、派手さはないが、どこか神秘的な雰囲気があって、最初の頃はちょっと好きだった。……最初の頃は。


「いやまぁ、何百回も見れば流石に飽きるんだけど」


 元々、チュートリアル時点での引くタイミングはあった。

 ユディと共闘したあと、更に先へ進んだところで、今と同じようなピンチに陥り、仲間を増やして立て直す――そんな流れだった。


 普通ならゲーム内通貨である『記憶の欠片』が必要だ。欠片自体は課金でも買うことが出来ず、それの大元となる「追憶の宝石」を購入して、そこから更に変換して……とややこしい限りだが、販売レートは他のゲームと遜色ないと思ってもらっていい。

 今回は初回なので、ゲーム通りならおそらく免除。まぁどこをどう見ても持ってないし、ありがたく無料10連……じゃなくて無料単発を楽しませていただこう。次からどうなるのかは全く見当もつかないが。


「……待てよ、そもそもガチャキャラって、どういう扱いになるんだ……?」


 頭を掻きながらオトギは、ふよふよと浮かぶ鎖を睨みつける。ゲームの時であれば「はい新キャラ加入おめでとう」で済む話だが、仮にも現実化している今は一体どうなる?


 こういうソシャゲあるある……後から始めたプレイヤーが、ボスとして対峙するはずのキャラを引いてしまい、ストーリーで同キャラ対戦が始まって、なんとも言えない雰囲気になるアレ。

 こういった事に突っ込むのはナンセンスだが、現実において同じ人物が2人存在してしまうのは流石に致命的だろう。

 いくら異世界という設定が万能と言えど、辻褄合わせでこの後のストーリーがバグったりしないだろうな……?


「……ま、気にしても仕方ないか」


 結局のところ引かなきゃ物語は進まない。

 どうせ無料だし、ここから出られそうもないし、他の選択肢なんて存在しない。


 大量に浮かぶ鎖を一通り眺め、どれも同じに見えることに気づき、結局適当に一つを選んで前に立つ。


 オトギは深呼吸して、ゆっくりと剣を構えた。

 鎖はひときわ軋み、まるで「さあ斬れ」と言わんばかりに誘ってくる。


「よし……行くぞ……どうせなら推し来い! 推しィィィィっ!!!」


 叫びと同時に剣を振り下ろす。ガキィィン! と金属が砕ける音が空間に響くと、鎖は再び粉々に弾け飛んだ。


 直後、散っていった破片が光り出し、渦を巻きながら中央へと集まっていく。白いモヤが膨らみ、混ざり合い、やがて人影のような輪郭を形作り始めた。


「お……おおお……? 待ってこれ確定演出じゃね? 確定演出だよなぁ!?」


 光は白から黄色へ、そして虹色へと段階的に変わっていく。

 虹色の確定演出と言えば最高レアリティ確定だ。

 このゲームの最高レアリティは☆5。SとかSSRとかではなく、分かりやすい5段階式になっている。☆3以下にキャラクターはいないが、アイテムなどで腐るほど出てくるので当然嫌いだ。


 そしてこの最初のガチャは、基本的に恒常キャラと呼ばれる、何時でも出てくるキャラしか出ないものの、具体的に何が出るかは決まっておらず、星4キャラなんかも平気で排出されるので、これは非常に運がいいと言えるだろう。

 オトギは現実で降りかかっている危機も忘れ、スマホを握りしめるような感覚で両手を合わせつつ、祈るようにその光景を見つめる。


 どんどんとモヤが晴れていき、そこに立っていたのは――




「妾の力を求めるか、傲慢なヤツめ。どーしてもと言うのであれば貸してやろう、手を取るがよい!!」


 そこに現れたのは、黄色の瞳をキラキラと輝かせながら高らかに笑う褐色の少女。堂々と胸を張り、これから仲間、いや下僕としてよろしくな、なんて言わんばかりの態度だった。


 彼女の名は"シプリン"。

 可愛らしい小さな見た目に、部族のような肩出しへそ出しの上等な服装。非常に目立つ薄紫色の三つ編みツイン、そして一際目立つ女王? 口調から、根強い人気を誇っている。


 肝心の性能も、この時点であれば十二分に戦っていける。昔であればリセマラサイトのSランクに君臨するのも珍しくないほどであった。


 今でこそ上位互換なりが現れ、使用頻度も激減してしまったものの、まぁ普通に"当たり枠"と言って差し支えない。けれども、オトギは素直に喜べなかった。

 彼の頭に浮かぶのはいくつかの不安分子、その中でも1番気になるのは――


「こいつ、この章の最終ボスなんだよなぁ……」


 一体それが何を意味するのか。

 彼が恐れていた同キャラ対戦……どう転んでも盛り上がりに欠ける。ただただ幸先不安なスタートダッシュだ。






 Tips【確定演出】

 特定のレアリティが保証された演出の事を指す。フォーチュン・アルカディアでは、これ以外にも、やけに鎖が豪勢だったり、一撃で斬れなかったり、全部で6種類存在する。

 

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