託したいもの
第1章 託したいもの
目を閉じると古いフィルムの映画が始まる。
平和すぎる日常の夢である。
隣に、苛烈な火の気配を纏う存在が座るのをかんじている。
画面には少年が和傘の骨組みを組み立てている姿が映し出されたがこちらの方へと目線を移し笑いかけてくる。
誰かの視線が映像化されたようなそんな映画である。
少年の和傘を見ながら頑張って組み立てようとしている様子が見て取れるが、組み立てていた何本か骨を降るその手を見ていると滑らかな綺麗な手をしていた。
ふっと、隣から息を吐く気配に目を向けると恥ずかしそうな笑みを浮かべる桜色の美人が座っていた。
続いている映像に再び目を向けると、不器用ながら完成させたふたつの作品は商品にはならないまでも使える代物ではあるようで少年は笑いながら開いて見せていた。
‘’幸福‘’だったのかなと思うこの映像。
「また、……会えるのかな」と声が聞こえてきた。
はっと、結華は女性に目線を戻したが、既に姿を消してしまっていた。
ガバッと布団から身を起こして周りを見た。
眠る前に見た、自分の部屋である。
「……彼に会いたいのかな」
結華は夢の中であう女性のことを考えて呟く。
「どうやって探せばいいのか、わかんないよ」
女性の感情に引きずられているように泣きそうな感情を含めて足を抱えて座り顔を伏せた。
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梅子は結華が学校終わりで帰宅まで鍵を目の前にして、迷い悩んでいた。
「何を悩んでいるのだか、あの子を引き取った時から決めていたこと……」
梅子は1人呟き笑う。
「……体力も落ちてきているしなぁ」
「また来たのか鬼城の……」
梅子はため息を吐きつつ睨むように見た。
「……え――っ、あの鬼畜軍団と一緒にしないでくれよ」
両手をあげて金色の髪と翠緑の目を持つ青年が梅子を見ている。
「……白月宮か。いつも言うておるじゃろうが、玄関から来いと」
「久しぶりにおばばの顔を見に来ようかと思って、あと長居もしないし」
笑いながら中庭から声をかけてきた青年を見て呟く。
「……気まぐれな猫みたいなやつじゃな」
梅子は白月宮を眺めて呟く。
「ちょっと仕事でまた開けるからさ」
「……なにかあったのか?」
「うーん、よく分からない事件の調査かな」
白月宮は梅子の反応を見つつ呟く。
「……初代から何代か後も入る話なんだけど……普通の人とかが鬼狩りとかしてたじゃん」
白月宮は話し出していた。
「切り倒して霧散して気配が消えたのを倒したと勘違いしてたものもあると思うんだよね……最近になって目覚めて力を取り戻すために悪さを始めるとか」
「……まさか……」
梅子は白月宮の言葉に止まる。
「人が闇に落ちて魔になったのを倒した時、あれはもう実体から脱却しているケースも多いんよね。だから後処理してないってやつ」
「……旧いモノが力を取り戻しているということか?」
梅子の真剣なトーンの言葉に白月宮は明るく手を挙げて「だから、観光ついでに調査してくる」と言っていた。
「おばばは、結華を見てなきゃだろ? お土産持ってくるから戻るまでくたばるなよー」
笑いながら中庭から出ていく白月宮に梅子は長い溜め息まじりに「……教育を間違えたかもしれん」と呟いていた。
机の上にある鍵を見つめて「……まぁ、元気なうちに引き継がねばなるまいて……」と梅子は腹を決めたのであった。
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結華が学校から戻り、鬼灯の旧家がある森へと梅子と向かう。
「……ばあちゃん」
森に入る時に手を繋いでいる梅子の後ろ姿をみて結華は声をかける。
「……小さい頃、行ったことあるお屋敷にいくの?」
「覚えておったか」
梅子は立ち止まり結華を見た。
「……あの屋敷はわしらが護り残さなければならない場所でのぅ」
真剣な目で結華は梅子を見つめていた。
「……昔、話してくれたおとぎ話の事もふくまれてたりする?」
「まあ、関わる場所じゃからな」
結華はそっか、と小さく呟き頷づいていた。
「燈月宮、白月宮の後継者にはこの場所のことは伝えておる」
「……大事にしなきゃいけない場所っていう認識でいいのかな?」
梅子はうなづいて「さあ、行こう」と結華に先を促して歩き出していた。
結華もゆっくりと歩く梅子の歩調に合わせて懐かしく感じる風景を眺めながら歩き出した。




