きっと怒ると怖い
夜が天華と話していたら、白い羽毛みたいなものが目の端で動いた。
「……ん?」
もそもそと低木の影に隠れようとしている動きをしている物体に夜は集中してみつめている。
「夜、どうしたの?」一点集中して見つめる夜に天華は首を傾げている中、静かにと言うように人差し指を口元に寄せて夜はゆっくりと隠れてしまっていた低木に近づいて行って居る。
「……??」
天華は同じくゆっくりと近づいていく。
「……ねこのこ?」
「でも、みんなボロボロです」
夜の言葉に天華も悲しそうに見ていた。
「……この子たち鬼の気配します!!」
夜の大声にまだ動ける子猫が威嚇して居た。
「猫長が探していた子たちじゃ……?」
夜の発した“猫長”という言葉を耳にした瞬間、威嚇していた子猫は大人しくなって2人を見て居る。
「夜、月と猫長を連れてきてください」
真剣な顔で夜に天華は頼んで居たが、拒否の表情を作っている夜。
「えー……すぐ帰ってくると思う!」
天華の無言の目線に夜が折れて文句言いながらも月を追いかけて姿を消していた。
「猫長、呼びに行ったからこっちにおいで」
天華は子猫たちを手招きをして呼び寄せていた。
天華は重症の子から子猫に治癒をかけて猫長たちの帰りを待つ。
しばらくして帰ってきた夜と月たちが走ってきた。
「……お前たちは、どこほっつき歩いてたんだい! 親が心配してたよ!」
気紛れがお怒りモードに入ったようだ。
これは長く引きずるだろうなーと天華は力の行使によって疲れた身体をそのままに話を子猫と一緒に猫長の話を聞いていた。
「天華様、見つけていただき感謝いたします」
「……この子たちがここに来たから見つけた感じなので、感謝はいりません」
猫長の言葉に天華はくびを横に振る。
「私は動いてないのですし」
「……何を言います。この黒いのを呼びによこしてくれたではないですか」
猫長は夜を指差して天華に言い「感謝するに値します」と頑としてひかない。
天華は笑いながら猫長を見つめてうなづいたのを確認して、子猫を連れて姿を消していた。
「天華さま、えらく疲れてないか?」
「……今にも眠りそう……」
月と夜は天華を見つめて様子を見ていたが、限界を迎えポテッと倒れ込むように眠る天華に2人は慌てて駆け寄ってきていた。
「……寝てる」
「オレが離れた時に何をしたんだ」
夜の呑気な反応に月は呆れながら呟く。
「多分、小鬼たちの治癒をして上げたんじゃないかな? 結構、ボロボロの子いたので」
夜は天華を見つめて子猫の鬼たちの状況を思い出して呟いていた。
月は天華を抱え上げて部屋へと運び、月が連れてくるまでに夜の敷いた布団に寝かせて2人は部屋を出て行っていた。
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梅子は手に緑茶を持ち縁側に座り、夕方翁が座っていた縁側に目線を送り外を眺める。
「ばあちゃん」
「……結華かい?」
結華は梅子の隣に座り梅子の様子を見ていた。
「……体調悪い?」
「……あー……」
結華の言葉に梅子は悩むように声を上げながら、心が決まったかのように真剣な顔になる。
「お前に託しておきたいものがある」
「……何かあったの?」
結華が戸惑っている中で梅子は結華の手を取りその手の中に小さな鍵をそっと落とす。
「これ……」
「もうそろそろお主に森の館の管理を頼もうとおもってな」
結華は手の中にある鍵を見つめて梅子に目線を移す。
「……明詩ちゃんじゃいけないの?」
「あいつは今何処で何をしとるのか分からんからな」
結華の言葉に梅子はため息を付きつつ「あやつを探すよりお前に託す方が確実じゃて」と続けていた。
「普通に掃除するだけで良い」
梅子は1度だけ手を繋いだ間に鍵を挟み結華を連れて鬼灯の旧館へ連れて行っていた。
綺麗に保たれていた鬼灯の旧館を見て回ったのを結華は思い出されていた。
「梅婆ちゃん、なんで今なの?」
梅子は結華を見つめて笑う。
「……歳には勝てそうにないなっておもっての」
結華の悲しそうな表情を見て梅子は頭を撫でる。
「人はの、寿命がある。 わしはもう充分生きていつ死ぬのかわからんもうそこそこの歳じゃ」
梅子は結華に言い聞かせるように言葉を紡ぐ。
「……わしのやるべきことが終わったらようやくお迎えが来る。それまでにお前に託せるものは託すつもりじゃ」
優しい目で結華を見て言う。
「なので、明日森に行くぞ」
梅子は明るい声で結華に伝える。
「……えっ? 学校から帰ったらでいい?」
「良いとも」
梅子は結華の質問にうなづいていた。
「じゃ、伝えることは済んだし…今日は寝るか」と梅子は戸締りをしだしている。
結華も戸締りを確認して、梅子に「おやすみなさい」と声をかけて自分の部屋へと戻っていく。