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第1話 魔法少女は隠し事

(???)「これより君たちを国家機密事項である魔法少女プロジェクトの魔法少女に任命する!!」



 そこに居たつるっぱげのスーツを着た年老いた男性がそう声を上げる。ここは大きな会議室、というわけでもなく、少しこじんまりとした壁が白く塗られた部屋。ただその男性の姿勢は凛としていると呼称するしかないほどに真っ直ぐで、位の高い人だということが分かるほどだ。


 その目の前には2人の少女。彼女たちは2人とも『大事な話がある』と聞かされてここにいる。


 つまりは彼女達は何も知らなかった。



(???)「は……?え……?」





―――――



(???)「はいというわけで、緑葉華鐘(ろくばかがね)くん!初音真宵(はつねまよい)くん!君たちには魔法少女をやっていただきます!はい拍手!パチパチパチ!ちなみに私は保護監督者の如月です!では早速今日やる事なんですけれども」



 小さめの教室のような部屋に教卓が1つ、机と椅子のセットが2つある場所に、スーツを着てサングラスをかけた怪しげな人物:如月と魔法少女に選ばれた茶髪ショートヘアかつ吊り目の少女:緑葉華鐘、そして黒髪ロングかつタレ目の少女:初音真宵がいた。



(華鐘)「ちょー待てぇ!!!」



 華鐘が勢いよく立ち上がりそう叫ぶ。そう叫ばずにはいられない、そんな状況だった。だって、彼女たちは何も聞かされていないのだから。



(如月)「お?何かな?華鐘くん」



 にも関わらず、如月は『何事?』と言わんばかりの無垢な表情で華鐘と視線を交わす。



(華鐘)「『何かな?』、やないやろ!!なんも!なんもかんもわからん!!1から説明してもろてもいいですか?!」


(如月)「全くもう、何が聞きたいの?私が何故カッコいいのかってこと?」


(華鐘)「どつきまわしたろか」



 もう予想も確定に変わった頃だろう。そう、緑葉華鐘は関西人だ。



(如月)「……、ははは。冗談だよ」


(華鐘)「なんやその間は」


(如月)「でも確かに急な話で混乱する事もあるだろう。そう思った先生、何故このような状況になったのか、スケッチブックにフローチャート、まとめてきました!はいジャン!」


 

 如月は待ってましたと言わんばかりに教卓の中からスケッチブックを取り出し、そのスケッチブックに文字が細く小さく書かれたフローチャートを見せつけた。



(華鐘)「フローチャート手書き!?この時代に!?ていうかちっさ!!」


(如月)「えー、先ずはここ。ことの発端は遡ること約20年前」


(華鐘)「え?!そのまま進めんの?読まれへんって!!」


(如月)「もう、華鐘くん。真宵くんを見習って少し落ち着きなさい。見て、静かに眠ってるでしょ?」


(華鐘)「起こしーや!!なんで放置?!というか!『まーちゃん』もなんでこの状況で寝てんの?!」



 華鐘は真宵を揺さぶる。今までのやりとりの様子を見て、華鐘は少し距離感の近い子なのかと思うだろうが、このやりとりはそれだけが理由ではない。華鐘と真宵との出会いは幼少期まで遡る。とどのつまりが、幼馴染だ。



(真宵)「んが……、……、お肉食べ放題が……」


(華鐘)「お肉……食べ放題……?」


(如月)「はい。2人とも起きたという事でね、話の続きをするんですけれども」


(華鐘)「私は寝てなかったけどな」


(如月)「事の発端は約20年前、の話をする前に聞きたい。君たちはニュースを見ていたりするか?」


(華鐘)「スマホとかで少しくらいなら」


(真宵)「……、私は……、ネット廃人」


(如月)「それなら、最近行方不明者が増えてきている事は知っているね?」


(華鐘)「あ、知ってます。ここ数年の比ではないくらいに増えてるって聞きました」


(真宵)「うん。宇宙人誘拐説とか出てたね」


(如月)「……、その宇宙人誘拐説も強ち間違いではないんだ。それを分かってもらう為に順を追って話そう」



 如月がポケットから出したリモコンをピッって押すとプロジェクターが降りてきた。そこに映し出されるパソコンで作成した見やすいフローチャート。全体図と細かく分かれたものが左端の場所に映し出されていた。1番上にある全体図をすっ飛ばして次の細かく分かれた所まで、何も言わずに如月は進める。



(華鐘)「いや!あるやん!!見やすいの!!」



 間髪入れずにツッコミを入れる華鐘。



(如月)「まぁまぁ。でもここからは真剣な話だ。心して聞いてくれ。真宵くんも眠るの禁止だからね」



(華鐘)「は、はい」


(真宵)「うん」



 如月の真剣な物言いに華鐘は気圧されしまったが、真宵の方はそうでもないようだ。だからなのか、真宵の左手が華鐘の右手を握る。それほどまでに近い机も、何故かピッタリくっついているわけでもなく少し離れた距離。

 彼女たちの手の仕草もその空いた机の隙間から如月には見えていたのだが、あえて何も言わなかった。



(如月)「……遡る事約20年前、ある場所で行方不明者が出た。当然当時の警察も捜査したが手がかりは得られず。そのまま約20年ずっと行方不明のままだ。しかし、その行方不明者を最後に目撃した人が奇妙なことを言っていた。曰く『影に引っ張られていった』と。君たちはこの言葉に何を思う?」


(華鐘)「うーん……、黒い服を着てたとかかな?」


(真宵)「理由付けに1番合うのはそれだと思うけど……でも、それだったら『全身黒の服』とか『黒ずくめ』って言いそう」


(華鐘)「あぁ、なるほど?という事は……、私には分かんないかな。でもまーちゃんは他にあるやろ?」


(真宵)「んー、1番可能性が高いのはその人を視認出来てなかったからだと思う。目の前で誘拐されたとして……、そんなの単純に怖いし。怖いから目を瞑ったとか、怖いから記憶に蓋してる可能性とかもあるし……」


(華鐘)「へぇ、なるへそ。だそうです!」


(如月)「……、こちらの見解は概ね君たちと同じような結論だったと言っておこう。各方面でその見解をもとに調査したんだが、結果は先に言った通り、手がかりは得られていない。特に真宵くんの言った通り、目撃者の記憶の蓋もカウンセリングで外そうした事もあったそうだが……やはり『影に引っ張られていった』とか言わなかったそうだ」



 如月はリモコンを動かして次のページへ進めた。



(如月)「極失礼な話だが当時は『世迷言』として片付けられた。ところが最近、増え続ける行方不明者を捜索する過程で『影に引っ張られた』、『影に連れ去られた』という目撃者の声が増えてきたという。しかも局所的ではなく全国各地でだ。そこで我々はの行方不明者の目撃者情報を虱潰しに調べたところ、記録として最初に『影』に関する証言が出た行方不明者、それがこの約20年前の行方不明者だ。ここまで聞くと君たちはどう思う?」


(華鐘)「……、同一人物って事ですか?」


(真宵)「うん、私もパッと浮かぶのそれだけ。でも1人なら全国多発的なのはちょっと不可解」


(如月)「そう思うのが当然だろうな。華鐘くんの答えも尤もで、真宵くんの疑問も尤もだ。だが、結論から言わしてもらうけれど。華鐘くんの答えもそれに付随する真宵くんの疑問も、何方ともこの一連の事象に関係はない」


(華鐘)「え?じゃあ一体……誰が?」


(如月)「連れ去った者たちは、異次元の世界の住人、平たく言ってしまえば、【異世界人たち】だ」


(華鐘)「異世界?!!」


(真宵)「異世界……!!」



 華鐘と真宵は両方とも目を大きく見開いた。同じように目を開いた2人でも、華鐘は驚きと困惑を、真宵はワクワクを詰め込んだ目をしている。



(華鐘)「え?!冗談ですよね!?異世界なんて……異世界って言ったら……アニメとかのアレやんな?なぁ、まーちゃん」


(真宵)「異世界……!ほぁ……!!」


(華鐘)「あかん……まーちゃんキラキラモードや……」


 

 華鐘は手で顔を塞いだ。



(如月)「話を進めるぞ」


(華鐘)「ちょ!ちょっと待ってください!!え?!それで話進めるんですか?!もうちょっと説明とか!?」


(如月)「……そうだな。少し寄り道だが……仕方ない」



 如月はリモコンをピッピッと動かして資料を最後の方まで持ってきた。そして異世界の事が書かれた資料を大きく映す。



(華鐘)「いや!資料あるんかい!!」


(真宵)「異世界……!!」


(華鐘)「こっちは異世界に取り憑かれてもうた……」


(如月)「どうやら異世界には2人とも理解があるみたいだね。ラノベとかアニメとかで見たのかな?」


(華鐘)「私はあんまり見ーひんけど、まーちゃんはそういうの好きやしよく見てるから……その……」


(如月)「??、ふーん。なら真宵くんは詳しいんだ?」


(真宵)「異世界に憧れありますですます!」


(如月)「はは!なんだいその語尾は。……、でも2人とも少しは異世界の作品には触れているようだ。その異世界と同じ意味だと思ってくれて構わない」


(華鐘)「!なら……、ホントにあるんですか?異世界が?現実に?」


(如月)「華鐘くんの質問はの答えはイエスだ。はっきり言おう!異世界は現実に存在している!!」



 如月の声と共にピリってした空気が流れる。しかし、その空気を作り出した張本人がそれを壊した。



(如月)「今のさ……、ちょっとカッコよくなかった?カッコいいよね?へへ……」


(華鐘)「……、いやそんなに」


(真宵)「今ので台無しだね」


(如月)「真宵くんまで?!」


(華鐘)「なんか私の反応は驚きなかったみたいな感じなんですけど……」


(如月)「華鐘くんの反応は予想どおりだよ」


(華鐘)「うぁああ!!悔しいぃ!!!」


(如月)「さて、話を戻して先に進めよう。異世界は現実に存在する。これが言えるのはその存在が実際に確認されたからだ。今では大小含め30程の世界が有ると記録されている」


(華鐘)「へぇ!結構有るんですね」


(如月)「あぁ。確定していない世界も含めるとそのさらに3倍は有ると考えている」


(華鐘)「そんなに!すごいなまーちゃん!」


(真宵)「うん。私も見たいし行きたい」


(如月)「……すまない真宵くん。見せることは出来ても行くことは出来ないんだ。今は未だその技術が確立されていなくてね。仮に成功して彼方に行けたとしても、今度は此方に戻って来られる保証が無い。まぁ、その内行けるようになるよ」


(華鐘)「……?なんで見えるのに行けないんですか?」


(如月)「……、真宵くんは分かるかい?」


(真宵)「……、望遠鏡……みたいなこと?」


(如月)「!、そうだね!感覚的にはそれがしっくり来そうだ」


(華鐘)「どういうこと?」


(真宵)「華鐘、土星って分かる?」


(華鐘)「?うん、あの輪っかの惑星」



 華鐘は左右両方の人差し指と親指で輪っかを作り、真宵に見せた。



(真宵)「その輪っかの惑星って、行けると思う?」


(華鐘)「行かれへん……よね?」


(真宵)「うん、行けない。でも華鐘も知ってるように土星は教科書にも乗ってるほどに形が有名。別にそこへ行けなくたって望遠鏡を使えばその姿を綺麗に見る事は出来る。見ると行くとでは全く異なる技術なんだよ。多分、異世界を見る何か凄い技術があって見ることだけは出来るって事だと思う。異世界に行く技術はまだ模索している段階なんじゃないかな?」


(如月)「素晴らしい!真宵くんの言う通りだ!!実のところ、開発された技術としては異世界の映像化と魔法少女システムしか確立していない。その他はまだ未知の領域でね、開発途中の段階なんだ」


(華鐘)「あ、出てきた魔法少女。魔法少女って何なんですか?」


(真宵)「私も気になる」


(如月)「君たちのことだ」


(華鐘)「いやそうやなくて……もっとほらこう、あるやん!」


(如月)「はは」


(華鐘)「笑うとこか?」


(如月)「いや失礼。少しシリアスっぽいのはちょっとね。明るくしてくれてありがとう」


(華鐘)「え?あ、あ、ど、どうも?」


(如月)「話したかった順序は逆だが……まぁ、問題はないだろう。魔法少女の事について話そうか。今先、真宵くんが話してくれたね。望遠鏡を使えば土星が見えると。実のところ、土星は肉眼でも見えるんだが……、真宵くん、言いたい事は分かるかい?」


(真宵)「……?んー、望遠鏡はより良く見える……もの?」


(如月)「お!ずばりと迄はいかないが、その方向性で合っているよ。真宵くんは賢いね!」


(華鐘)「まーちゃんにあまない?」


(如月)「華鐘くん、嫉妬は見苦しいよ」


(華鐘)「そんなんちゃいます!!」


(如月)「……、うん。ところで華鐘くん、魔法少女ってなんで魔法少女と称するのだと思う?」


(華鐘)「え、何急に……」


(如月)「いいから」


(華鐘)「魔法使う……少女やから?」


(如月)「はい正解!!素晴らしいね!!パチパチパチ!!」


(華鐘)「ほんまいっぺん、しばいてもいい?」


(如月)「あはは、ごめんごめん。別に全部がふざけていたわけじゃないんだ」


(華鐘)「ちょっとはふざけてんのか!?」


(真宵)「華鐘」


(如月)「はは、でも華鐘くんの答えが重要でね。【魔法】、これを実際に使って我々は異世界を映像化している。当然魔法少女システムもこれで構築されているんだ」



 華鐘、真宵は両方とも目を見開く。しかし前の異世界があると聞いた時とは違い、両方が楽しそうに目を輝かせていた。




(華鐘)「え!!ほんま?!アバダラケタブラみたいなやつ!?」


(真宵)「大賢者……!」


(如月)「え〜、大変に触れにくいワードが出てきたので一言、そういうのとは違いますと、先生言っておきます」


(華鐘)「えー、違うんやって」


(真宵)「残念」


(如月)「……、まぁその魔法なんだけれど、んー、まだ仮名だが未確認生命体エネルギー粒子:unknown vital energy particle、と称されているエネルギーがあるんだ。だが普通に長いし面倒なので我々は魔法エネルギーと呼んでいる。そして魔法エネルギーを使用する事を魔法としているんだ。そんな魔法エネルギーだが、生命体エネルギーと冠せされているくらいだから、当然に生命体に存在するエネルギーになる」


(華鐘)「へぇ!私たちにもあるんかな?!まーちゃん!」


(真宵)「私たちにもじゃなくて……私たちにしか……じゃない?」


(如月)「その通りだ。この魔法エネルギーは現状、この国プロの発起人である佐々木恋雅音(ささきこがね)氏、そして君たち2人しか確認されていない。魔法エネルギーを持つ少女、略して魔法少女は君たち2人だけになる」


(華鐘)「そうなんや」


(真宵)「なるほど」


(如月)「……、……、なので君たち2人をこのプロジェクトに組み込んだ。勝手にね。この国の行方不明者の為に力を貸してほしい。勿論タダとは言わない。世界征服とかはちょっと無理だけど……、お金で解決できる事ならなんでも望みを叶えよう。君たちを危険な目に合わせるんだ。それくらいは当然する。君たちが頼りなんだ。どうか頼む!!!」



 ここにきて如月が真剣な目に移る。サングラスをかけているにもかかわらず、そう思わせるような迫力が如月にはあった。



(真宵)「なんでも……、食費永年負担……とか?」


(華鐘)「まーちゃん……!」


(如月)「勿論受け入れよう」


(華鐘)「ほんまですか……!?」



 華鐘は真剣な目で如月を見つめる。



(如月)「え?なに?」


(華鐘)「まーちゃんは、自宅から半径10キロメートル圏内の食べ放題は全て1回で出禁やし、1回だけ好きに食べさせてみようってなった時、質より量派のまーちゃんが1食だけで10万は軽く超えたんですよ?しかも朝に!!それほどまでの大食漢、その胃袋はもはやモンスターです!!食に関してまーちゃんはモンスターですよ?!」


(真宵)「失礼じゃない?モンスターは」


(如月)「たしかにそれはモンスターかもしれない……!だが要求は呑む!!それほど迄に力を貸してほしいんだ!!!」


(真宵)「え?なぜにモンスターを受け入れた?」


(華鐘)「その心意気、感動しました!力を貸します!!一緒にまーちゃんのモンスター胃袋を支えましょう!!」


(如月)「協力してくれるか!!ありがとう!!!モンスター胃袋のお金は任せてくれ!!!」


(真宵)「2人してモンスターで認識するのやめてね。私も一応女の子だからね」


(華鐘)「まーちゃん!!良かったなぁ……!!これでお腹いっぱい食べれるなぁ……!!」



 真宵はここで華鐘のニコニコ笑顔の頬っぺたを思いっきりつねった。真宵の顔は顰めっ面で、もはや睨みだけで人を倒せるのではないかと思うほど。



(華鐘)「いた!!いたたたた!!!!!」


(如月)「えー、はい。2人に魔法少女を承諾してもらったんで次に話を進めるんですけれども」


(華鐘)「え!このじょうきょうで?!」


(真宵)「……」


(華鐘)「まーちゃん!!ごめんって!!」


(真宵)「……」


(華鐘)「まーちゃん!!モンスターなんておもってへんよ!!かわいいおんなのこっておもってるよ!!まーちゃん!!」


(真宵)「……」


(華鐘)「しょくよくはモンスターやっておもってる!!!」


(真宵)「よし」


(如月)「え……?よし、なの?」


(真宵)「嘘つくのは良くない」


(如月)「あぁ、そうか」


(華鐘)「いたぁ……」


(如月)「えー、話を進めようと思うのですけれど。先に説明したようにこの魔法エネルギーを用いて異世界を映像化したり、魔法少女システムを構築している。魔法少女システムは実際に扱う時に説明しよう。一先ずはこちら、異世界映像を見てもらう」


(華鐘)「おぉ!!」


(真宵)「異世界……!!!」



 如月がリモコンでピッピっと操作してある映像が映し出される。そこには黒く影に包まれた世界が映されていた。ただただ真っ黒で、何かの形かは分かるものの、その何かは分からない。ただ1つだけわかる事、それはその世界いる人間も黒く染まっているという事だけだ。



(華鐘)「え?なにこれ?」


(真宵)「暗いね」


(如月)「影に連れ去られたと言っていたという話は覚えているかい?」


(華鐘)「はい」


(真宵)「うん」


(如月)「それが此れだ。この影に包まれた世界の住人が仲間を求めて此方の人々を連れ去っている事が判明した」


(華鐘)「え?でも行き来出来ひんって……」


(如月)「そうだ。我々はその術を持たない。しかし彼らは持っている。悔しい限りだが我々の技術力は彼等に劣っている。これは紛れもない事実だ」


(真宵)「そうなんだ」


(如月)「あぁ。そしてこの影の住人、我々は影の世界から来る全ての住人を総じて『影』と分類している。君たち魔法少女には、全てとは言わないが出来る限りで構わないから、1人でも多くその『影』たちに連れ去られそうになっている人を救ってもらう」


(真宵)「……、そういえばその影って何者??拳銃を撃っても防げないの?」


(華鐘)「あ、たしかに。鉄砲パンパンパンってしたら逃げそう」


(如月)「出来ればそうしたいのだけれど……そういうわけにもいかないんだ。まぁ普通に撃っちゃダメってのもあるけど。1番の理由は、なぜかは不明だが影に此方の物理的な攻撃は全て効かない。素手や拳銃はおろかライフルでもすり抜けてしまう。実体ではなく意識を飛ばしてきているのではないかという説を唱える者も居るくらいに。だから……、情け無い限りだが……、目の前で救えなかった人たちは何人もいる。そんな影たちに対抗し得るのが唯一魔法エネルギーと魔法だ。君たちも覚えているだろう。影に掴まれた感覚、覆われた感覚は。影がその後すぐに消えてしまったのは君たちには魔法エネルギーがあったからだ。あの時は助けてやれなくてすまなかった……本当は魔法少女を依頼する資格がないのも分かっているんだ……だが……」


(華鐘)「……?あ、思い出した。たしかになんか掴まれた?みたいな感覚あったことあります」


(真宵)「……、覚えてない」


(華鐘)「ほら、だからそんな気にせんといてください。ちゃんと魔法少女はやりますから。な、まーちゃん」


(真宵)「うん、食費永年負担は大きい」


(如月)「華鐘くん……!真宵くん……!ありがとう!!」


 

 如月は深々と頭を下げた。



(如月)「話を進めよう!!影の事を少し話したがこの影関係には後2つ、分かっている事がある。心して聞いてくれ」


(真宵)「うん」


(如月)「1つ目、影に包まれた世界は今見せた世界だけじゃない。此方の世界に干渉して来ている影の世界は映像で見せた世界を合わせて確認出来ているだけでも5つ。理由は其々異なるが影に染められた世界だ」


(華鐘)「理由が違う?」


(如月)「あぁ。細々説明するよりも我々が呼んでいるその世界の名を聞いてもらえた方が理解も早いだろう。先に見せた世界は【主役が消えた世界:ロストシンデレラ】、その他4つは其々【闇を祀る世界:ダークワールド】、【月が支配した世界:ツクヨミ】、【約束がなかった世界:トードロード】、【花の枯れた世界:ウィザーダイアンサス】だ」


(華鐘)「……めっちゃ厨二」


(真宵)「痛い」


(如月)「君たち異世界好きじゃなかった?」


(華鐘)「好きだけど……」


(真宵)「横文字並べれば良いってもんでもない」


(如月)「ツクヨミは日本語だよ?!」


(華鐘)「それ以外横文字の認識なんだやっぱり」


(如月)「うぐっ!……でもだって……ルビがカタカナってカッコよくない?」


(華鐘)「え?!考えたの如月さんなんですか!?えぇ……ダサ」


(真宵)「如月、ドンマイ。私は痛いのも好き」


(如月)「ありがとう……真宵くん……、華鐘くんは宿題2倍にするから」


(華鐘)「え?!どういう事!?宿題ってなに!?」


(如月)「ところで2つ目なんだが」


(華鐘)「スルー?!」


(如月)「影が攫っていく人たちにはある共通点がある。それが心に闇を抱えていたという事だ。影の仲間が欲しいからなのか、何なのかはよく分からないが連れ去られた人はその時1人では抱えきれないくらいの不安や不満を感じていたとその人たちの友人や家族から聞き込みで分かった。だが身近な家族や友人ですら、その内容は分からないらしくただ『苦しい』や『辛い』、『消えたい』といった言葉を口にしているだけのようだ。君たちにはこの心の闇も照らしてもらいたい」


(真宵)「どうやって?」


(如月)「すばりアイドル活動だ!!」


(華鐘)「は?」


(真宵)「え?」


(如月)「アイドルは光になれるだろう?心を照らす光に。君たちはそんなアイドルになってもらいたいんだ」


(華鐘)「えぇ……アイドル……アイドルかぁ……いやぁ……」



 イヤイヤそうな言葉を発するものの華鐘は何処か嬉しそうな顔をしていて、真宵はそれをただぼーっと見ていた。



(如月)「存外嬉しそうだね」


(華鐘)「いや!!でもそりゃアイドルは好きやし……やってみたいなって思ったことも……」


(如月)「まぁ、君たちのルックスなら万人受けするだろう。難しい事は此方でやるから、君たちにはアイドルをがむしゃらにやってもらいたい。人を笑顔に出来るように、人々の生活を照らせるように、心の闇を取り払えるように、そんなアイドルを目指してくれ。それがきっと影に連れ去られる人を減らす助けになる。そうなれば君たちはスターアイドルだ!」


(真宵)「分かった」


(華鐘)「でもあれですね、魔法少女系アイドルって珍しいですよね」


(如月)「あ、ごめん勘違いさせちゃったね。説明下手でごめん。魔法少女は機密プロジェクトだから表には出さないよ。異世界の事すら世間には公表してないからね」


(華鐘)「???」


(如月)「つまり君たちには、昼間はキラキラアイドル活動、夜は魔法少女エージェントの二足の草鞋を履いてもらう」


(華鐘)「つまり別々の2つの事をやらなあかんと?」


(如月)「そういう事になる。魔法少女はあくまで国家機密だから隠さないといけない。だから魔法少女の力は使わずに君たち自身でスターアイドルを目指してもらう。大丈夫、我々が支えるから」


(華鐘)「つまり、私らの魔法エネルギー?関係なくスタラなあかんという事ですか?」


(如月)「そうだね。それに加えて君たちはまだ学生だ。今後の人生の為にも高校のカリキュラムだけでも終えてもらいたい。でもそうするとかなり時間が厳しい。そんなわけではいジャン!先生大雑把に予定組んできました」



 プロジェクターに出された簡素なスケジュール。それはこう書かれていた。

 朝―授業

 昼〜夕―アイドル活動および練習

 夕〜夜―魔法少女活動および訓練



(華鐘)「大雑把すぎるやろ!!!」


(如月)「そして授業は全てここでやります。アイドル活動は1階下の部屋、魔法少女活動は5階上の部屋で行います」


(華鐘)「え?!ここで!?」


(如月)「うん。因みに私が先生です」


(真宵)「あぁ、だから時折自分のこと先生って言ってたんだ」


(華鐘)「まーちゃん冷静すぎん?」


(如月)「まぁそもそも、午前だけ授業とか普通の学校じゃ無理だからね。仕方ないところもある」


(華鐘)「……、まぁ、別に良いけど」


(真宵)「私も異論ないよ」


(如月)「よし決まりだ!!スターアイドルプロジェクトおよび魔法少女プロジェクト!!本日より開始する!!華鐘くん!!真宵くん!!よろしくお願いします!!!」


(華鐘)「よ、よろしくお願いします」


(真宵)「お願いします」


(華鐘)「……あの1つ良いですか?」


(如月)「何かな?」


(華鐘)「ドッキリとかじゃないですよね?」


(如月)「華鐘くん、今君のいるところが何処かわかるかい?」


(華鐘)「えーとたしか、警察庁に連れてこられたような」


(如月)「そう。ここは警察庁。だけど警察庁は少女2人を引っかける為にこんな事はしない。QED」


(華鐘)「あ、そっか。なら!よろしくお願いします!」


(如月)「うん!此方こそだ!よろしくお願いします!」




お疲れ様です。

あまり続ける気がありません。

なんか設定思いついたので書いてみただけです。

気が向いたら書きます。

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