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8 隠された真相

「これ以上深入りしたくない」って思ったことあるだろ?

俺も正直そうだった。

でも、一度踏み込んじまったら、もう戻れないんだよな。




翌日、俺は鷹村と接触することにした。

あいつが呪印術について何か知ってる可能性が高い。

いや、むしろ知ってるに決まってるだろう。


「鷹村、話がある。」

俺は電話でそう言い放った。

「ああ、わかってる。だが、場所を選べ。」

鷹村の声には相変わらず冷静さが滲んでいる。


待ち合わせ場所は、人気のない公園だった。

夜風が肌を刺すような寒さの中、鷹村はフードを深く被ったまま俺を待っていた。


「話って何だ。」

俺が切り出すと、鷹村は少しだけ顔を上げた。

「呪印術だろう。」


…やっぱり話が早いな。

「お前、どこまで知ってる?」

俺が問い詰めると、鷹村はため息をついて答えた。


「呪印術は、この地球を浸食しつつある。」

その一言に、俺は思わず息を呑んだ。


「浸食ってどういうことだ。」

「そのままの意味だ。」

鷹村は静かに言葉を続ける。

「異世界と地球の境界が、少しずつ崩れ始めている。」


「それが呪印術のせいだと?」

「ああ。そして、その術式を扱えるのは帰還者――お前や俺のような存在か、それに準ずる者だけだ。」


その言葉に、俺の中でピンときたものがあった。

「…じゃあ、これを仕掛けたのも帰還者だってことか。」


鷹村は少しの間黙った後、低い声で答えた。

「そうだ。そして、お前がその標的になる可能性もある。」


「標的?」

俺は思わず鷹村に詰め寄った。

「どういう意味だ。」


「お前が異世界で得た力。それを恐れる者がいる。そして、その力を利用しようとする者もな。」

鷹村は鋭い目つきで俺を見据えていた。


その言葉が、妙にリアルに感じたんだよ。

異世界で戦った経験が、俺の中にその光景を思い出させる。

力を巡る争い――それが、また始まろうとしている。


「鷹村、一つ聞いていいか。」

「何だ。」

俺は少し間を置いて、慎重に言葉を選んだ。

「お前は…これを止めるつもりでいるのか?」


鷹村は微かに笑った。

「俺はお前を見極める。それ以上でも以下でもない。」


その曖昧な答えに、俺は苛立ちを覚えた。

だが、今はそれ以上追及することはできなかった。


君ならどうする?

こんな状況で何もわからないまま動き続けるのは、正直しんどい。

でも、俺には立ち止まる選択肢なんてなかったんだ。


帰り道、ハルが小さな声で言った。

「零、また面倒なことになりそうだね。」

「そうだな。」

俺は肩の上のハルを撫でながら呟いた。

「でも、これを見逃すわけにはいかない。」


夜空を見上げると、月が薄雲に覆われていた。

日常の終わりが、もうそこまで来てる気がしてならなかった。



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