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第23話:ゲームセンターのふたり

(なんでゲーセン?)


 困惑しつつ、派手な音楽の流れるゲームセンターにれんは入っていった。

 ゲームセンターに足を踏み入れるのは高校生以来だろうか。

 友達の対戦を見学したり、シューティングやドライビングゲームをしたり――。


(楽しかったなあ……)


 大学生になって自然と足が遠のいて10年以上になる。

 少しドキドキしながら、蓮は明日花あすかの背を追った。


(お目当てはなんだろう……?)


 かなり大きいゲームセンターで、いわゆる音ゲーや対戦格闘のゲーム機もありつつ、メダルゲームコーナーもある。

 明日花は迷いのない足取りで、ずんずんと奥へ突き進んでいく。

 ずらりと並ぶ筐体きょうたいの林に、おのずと蓮も入っていくことになった。


(おっ、ガシャポンとクレーンゲーム?)

(え、今こんなに種類があるの?)


 百台くらいはありそうなクレーンゲームとガシャポンコーナーに目を奪われる。

 同じ形の筐体が整然と並んでいるコーナーは、まるで迷路のように感じる。


(へええ……いろんなタイプのクレーンゲームがあるんだな……)

(この箱は……フィギュア! ぬいぐるみにクッションにお菓子に……すごい種類があるな)


 夢中で景品を目で追っているうちに、明日花の姿を見失ってしまった。


「しまった……」


 明日花に見咎みとがめられないよう、蓮はそろそろと足を進めた。

 そっとゲーム機の陰から顔を出し、忍者のように息を潜め辺りを見回す。


(俺は何をやってるんだ……)

(29歳の男が、通路を覗きながら歩くとか……)

(変質者だろ……)


 幸い、奥まった場所なので他に人がいない。

 ジャラジャラと硬貨が落ちる音がして、蓮はその方角に向かった。


(たぶん、両替したんだな……)


 ようやく明日花の姿を見つけ、蓮は胸をなで下ろした。

 明日花は真剣な眼差しでクレーンゲームを見つめている。


(うーん、もっと近づかないと何の景品か見えないな……)

(すっごい気合いが入っているのが遠目にもわかる)

(何がほしいんだろ)


 だが、人がいないのでさりげなく近づくのは困難だ。

 仕方なく、蓮は通路の角からそっと明日花を見守ることにした。

 明日花が硬貨を投入し、ボタンを操作するのが見えている。

 ガラス面に額が当たるほど近づき、執念を感じる。

 そして、再び明日花が硬貨を投入した。


(まあ、一回じゃ取れないよな……)


 じゃらじゃらと硬貨を投入する音が続く。


(全然とれてない……)


 10分以上たっても、明日花が景品を取り出す仕草を見せることはなかった。

 小銭がどんどん吸い込まれていく。


(えっ、もう5000円くらい使ってるよな?)

(そんなに難しいのかな)


 過去の記憶を辿ってみたが、そんなに手こずった記憶はない。

 明日花は必死の形相で筐体を覗き込み、ボタンを押し続けては肩を落とすというルーティンを繰り返している。


(ああ、可哀想に……)


 どんどん悲壮感を増す明日花の姿に胸が痛む。

 明日花がいきなりがっくりと膝から崩れ落ちた。

 どうやら小銭が尽きたようだ。

 だがすぐ立ち上がり、バッグから財布を取り出す。


(あ、両替したいのかな……)


 だが、場所を離れたくないらしい。

 他の人に取られたくないのだろう。周囲にだんだん人が増えてきている。

 あたふたしている明日花の姿はずっと鑑賞していたいほど可愛らしかったが、さすがに気の毒すぎた。


(……不審がられるかもしれないけど仕方ない)

(財布に小銭はあるし、何なら俺が両替すればいい)


 蓮は明日花に向かって足を進めた。

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