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ハレモノ/クダ/カザグルマ




La sxvelajxo




 知らぬ間に蚊に刺されたようだ。


 赤くなっているあと始終しじゅういていたら大きくれ、ついにわたしの大きさをえた。


 腫物はれものはわたしのふりをしてわたしを掻く。家族はみる薬をわたしの顔にりつける。――ちがうってば!


 そんな日々の、ある暑い夜。腫物はわたしをつけたまま、公園に来た。


 ――今日はわたしの顔を掻かれなかったな。


 ふと、そう思ったとたん、わたしの姿をしたものが、暗闇くらやみで体を丸めた。


 ぱん、と服ごと背が割れた。割れめから、たよりない白さの、しわだらけの布に似たものが、ゆっくり出てくる。


 それは長く伸びた。だんだん力が通いだす。やがて、風をうけたのようにぴんと張った。なんと美しい、きとおったはねだろう!


 そして腫物は、決然けつぜんとした表情で夜空を見あげる。


 翅を振り、はばたかせ、飛び立つ。はるか彼方かなたの自由な世界へと。――


 ただの腫物となったわたしを残して。





 *  *  *





Tuboj




 近くの学校に入学したら、全員がくだ一本ずつのなかに入らされた。


 一年這ってはしから出ると、次の管が準備ずみ。


 いやだけれども、ぼくだけ入らないと格好かっこうが悪い。


 ――みんなやっているんだよ、ね、きみもがんばってみよう? 


 なんて言われて、また管にもぐり、這い進む。


 ふしぎなことに、何年這いつづけようと、その苦しさの記憶は、不自然に減る。


 かってに色違いの管に振り分けられれば、それもなんとなく受け入れて、また管のなかへ。


 ああ、見かけなくなった子がいるな、と思いついても、すぐに忘れて、また管のなかヘ。


 うわさによれば、管の前方は炎のなかだそうだ。


 それでもぼくらは這い進む。


 だってみんなそうしているから。






 *  *  *






Ventradeto




 神殿とよばれるが、平坦へいたんな荒野である。


 夜、巫覡ふげきたちがそこを歩み、おのおの好む場所で立ちどまる。


 地表には、生きものをかたどった数多あまたの星座が、えがかれている。


 巫覡は空想する、自分たちはいま天蓋てんがいにいると。


 そして天蓋を回し、時を回し、命を回す、たっといおかたに呼びかける。


 国の未来にかかわる預言を得られたら、それを国に納め、報酬をもらうことになっている。


 だが巫覡はみな知っている――


 この世は夜風よかぜにただ回るひとつの風ぐるまに等しいと。


 寒さに足踏みをしながら、彼らが夜のあいだにすることは、作文である。


 国の未来は明るく豊かなものであると、神がお告げになったことにして、なるべくりっぱな預言をつくる。


 先人たちもずっとこのようにしてきたし、なによりいまの王は、もと巫覡なのである。


 前例こそが神であると、かしこい王は知っていた。


 だからこの夜、巫覡の一人が預言をつくらずに夜空の星のどれかひとつになったらしいことは、ゆるすつもりがなかった。


 空のなかから問題の巫覡をさがしだすため、あらゆる国民を動員どういんした。


 そしてみつからないことに腹をたてて処刑をくりかえした。


 いまでも動員はつづいている。私もこれから夜空へ行くのだ。






Fino







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