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キキ La demona fantomo
鬼気というものに喉を絞められている。
強く巻きついたものを、まったく振りほどけない。じわじわ苦しさが増すばかり。
いったい自分がなんの恨みを買ったのかわからない。恨みの深いものにとりそれを霽らすための相手は誰でもよいのだ、とは聞いたことがあるけれど、なぜわたしがその相手に選ばれたのだろう。
周囲に人の影はたくさん見えるのに、誰も救けてくれない。滑稽だなと誰かがつぶやいた。鼻で嗤う音も聞こえた。彼らには、他人の命の危機も一枚の戯画に見えるらしい。
わたしは鬼気に奇妙な共感を覚えた。どこまでも続く闇のなかに、小さな泡が浮くように鬼気を生じさせたのも、きっと彼らだと思ったからだ。
さっきまで彼らであったわたしは、いまは鬼気に変じていく。
Fino