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フカ La sxarkego




 障子戸(しょうじど)のむこう側を、ふかの影が泳ぐ。


 なにごとか自分に罪があると思いこんでいるらしく、おなじところを回りながらひとりごとをつぶやいている。


 先日占い師に家相かそうを見てもらい、物の配置など変えたばかりなのだが、むしろ奇妙を招き寄せているではないか。


 ぶつぶつ、ぶつぶつ……、小さく低い声が障子を通して座敷のなかまで入り、響いている。


 それに呼応こおうして、わたしの目の前の湯呑み茶碗に入った番茶に、細かい泡がぷつぷつ浮かぶ。見ていると泡は小魚に変じ、空中を泳いで障子のむこうに消えた。


 鱶はますます大きくなるようだ。やつのつぶやく言葉が少しわかるようになった。どうもわたしが過去についたうそをくり返し口に出し、罪をいているらしい。


 また茶碗から小魚が生まれて泳いでいった。鱶も大きく育つ。嘘が嘘を呼んでいるのだ。


 ああ、なんと恐ろしい……などとわたしはおびえただろうか? いや、そうはならなかった。


 わたしは茶碗の番茶をぐいと呑みほし、ふてぶてしく大の字に寝ころんでみせた。


 わたしが自分のことを好きであるという嘘は、一生つき続けるつもりだったから。




 Fino






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