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マクラ La kapkuseno
毎晩のことではないのだ。だが気になってしかたがない。
わたしが眠っていると、この頭をどけて枕を引き出す者がある。
薄目を開けて観察すると、闇のなかに手が見える。
その手はわたしの枕をぎゅっと押す。すると中からペースト状の物がにゅるりと出てくる。
手は枕の隅々まで圧力を加え、念入りに中身を取り出す。それを以前銭湯で見かけたようなプラスチックの洗面器に受ける。
もう出てくる物がなくなると、枕を再びわたしの頭の下に入れ、静かに去っていく。わたしは眠り、朝を迎える……。
一人暮らしのこの部屋に出現する、わたし以外のあの手はいったい何者なのだろう。そして枕の中に溜まっていた物は何だったのか。
喪失感はとくにない。
だからよけいに気になるのである。
Fino