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キガン Voto




 亡くなった方々が彼方で幸せでいられるよう、わたしたち若い女が集まり祈願をしている。


 真夏の夜、轟々(ごうごう)と燃えあがる炎のまわりに輪となって、わたしたちはめぐりつづける。


 経典の一部から抜いた言葉を歌うようにそらんじて、手に持った鈴を鳴らす。


 足の下には刃を上に向けた剣が並んでいる。そこをわたしたちは歩むのだ。


 あらかじめ口にした雌獅子めじし乳酒ちちざけのせいか、怖くはない。


 廻りめぐるうちに、アア、と短く声を上げてまた一人女が倒れた。刃物の上に倒れても誰も気にせず、その女を踏みさえする。


 ぱたりぱたり、至るところで倒れる者が出る。しかし輪の人数は減らない。祈りたい女は世に溢れるほどいるのだから。


 わたしたちの祈願は夜が明けたら終るのだが、どれだけ経文を諳んじまた鈴を鳴らしても、濃密な闇の空にはまったく白む気配がない。


 いつまでも続く、死者への貢献。それは女にとり大きなよろこびだった。





 Fino







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