タマ/ネムリ/ネゴト
La bulo
毎年、誕生日になると、一匹の小さな白蛇がわたしのもとを訪れる。
――約束の日だな。
――約束の日ね。
恒例の言葉を交わし、わたしは自分の胸から玉を取り出す。
鶏卵くらいの大きさで、真っ黒なものだ。
蛇は大口を開けて静かに玉を呑む。
しばらく物思いに耽るように黙りこんだあと、
――どの者も去年より小さいではないか……。
と不満をもらし、去っていく。
あの蛇は、わたしを含めたなんにんかの命そのものだ。
そしてわたしたちは、蛇の食べる玉をつくるために姿を得た、なにかである。
* * *
Dormo
眠らないことが流行だ。
学校のクラスで一人だけ眠る習慣を守ると孤立するので、わたしも睡眠をやめる。
ファッション誌で医学博士が安全を保証している薬をとりよせ、のんだ。
オレンジ味とともに眠気が消えたので、友だちとメッセージを送りあい、アプリでコミックスを朝まで読む。
そう言えば今夜は夢のなかでお話ができなかったな、と気づく。
――だれとのお話だっけ?
ちょっと首をかしげ、ひとつぶだけ涙を流した。
* * *
Parolo dum dormado
星が空を泳いでいると言ったら君は笑うだろう。
なにも池の魚のように泳ぐわけじゃない。1万年をかけて目の前1センチを進むやりかたなのさ。
ほんとうだよ、ぼくは前に星だったことがあるからね……
そんな寝言をつぶやきながら、曽祖父がまた眠りに沈んでいく。
ええ、ほんとうでしょうね。
ぼくも以前は星でしたから、よく知っていますよ。
Fino