ぐわんぐわん
頭痛で意識を取り戻す。浮ついた頭の中、俺は家の床に這いつくばっていた。硬い感触なのにぐわんぐわん揺れる。俺は酔いに酔いすぎて吐いた。
「おえええ……」
胃液しか出なかった。あの後、どうなったのだろう。まあ、記憶が無いのなら意味ないな。俺の初仕事は無事に大失敗して、終わった。
「お前のせいで、弁解に一時間。お前の体質、酒に弱すぎ。まだ二日酔いしてんの?」
サンの声が脳内で響く。うるせぇ、うるせぇ。こっちは今、デリケートで吐きそうなんだよ!!黙ってろ!!!……あ、やっぱ黙んないで。
「あぁ……、あのお姉さんとは、ヤッた?」
「俺は生身の人間からは奪わない主義だ」
堅苦しいヴァンパイア。見た目だって、優等生そのもの。謎の気品すらある。
「ちぇっ、ヴァンパイアってなーんかエロそうなのにぃ……」
「ルナ、よくそんなことが言えたね」
あ、地雷踏んだ。ちょーっと考えれば、分かりそうなものだった。人間に手を出して、迫害されてきたヴァンパイアの歴史。捕らわれている家族。サンの孤独。
「サン、出発しよう。西へ」
ガチャリ。と入ってきたのはケモ耳と、金髪ボブの女性二人組だ。
「今日からこのお二人が、カルマ様の家庭教師を……」
「嫌です!いかにも何か、……何かありそうで嫌です!!」
可愛い系とギャル系、そこに清楚系のセレーナがぶつかったら、僕は虻蜂取らずどころか、蝶も取れない。そんな三者択一を迫られて、勉強すら頭に入らなくなりそうだ。
「え〜、何でよぉ?お姉さんと一緒に、お勉強しよ?」
って、いきなりケモ耳の彼女、ミレに腕を抱きしめられた。腕に当たる柔らかな感触。紐、見えてるし……。
「……いっ、いや、」
目のやり場にものすごく困って、キョロキョロと上下左右へと泳がせてる。あー、顔が火照る。
「カルマくん、できたらご褒美あるのになあ♡」
と金髪ギャルの彼女、ジュリにはもったいぶった言い方をされながら、真っ赤になった耳を撫でられた。これは、無理。快感で顔の輪郭がぼやけていく。お勉強って、今のところそーゆーことのお勉強しか想像つかないけど。
「ああもう、分かった。やるよ……」
僕はたちまち絆されてしまった。