明日、天気になぁれ
「お父様お父様、カルマくんが元の世界へと戻ってしまったわ。私、彼のことが、その……好きなの。だから、私も彼のいる世界へと……」
「ダメだダメだ!奴は国家反逆罪で死刑だぞ!?セレーナ」
「もう、お父様ったら……」
うんざりするほど頭が固い。
「奴は西のヴァンパイア達を逃がした」
「でも戦力は削いだわ!研究所を壊した!それで十分じゃないかしら?」
「ヴァンパイアを我が国に服従させなくてどうするんだ?」
「何のために?」
「戦争だ」
「戦争なんて馬鹿馬鹿しいわ。思考回路が薄っぺらい老人が杖で殴りあってればいいじゃない」
彼女は不貞腐れて国王からふいっと目を逸らした。
「セレーナ!お前はいつから私にそのような口を……」
「はいはーい!俺のせいですよ、国王陛下」
「貴様は……ヴァンパイア逃がしのヴァンパイア!??」
俺の異名ダッサ。え、何しにきたって?死ににきたんだよ。
「俺、彼女に言ったんですよ。人間はいつ死ぬかわからないって。これが彼女の答えだ」
父親に言いたいことを言う。
「Damage ──狐狼盗何──」
ん?セレーナが特級魔術を使った!??そんなことしたら、彼女の身体は、
「セレーナ!!」
「ヴァンパイア、さん、異世界、ごほっ……転移、魔法、盗めたよ……」
ボロボロだ。父親の禁忌魔術を盗んだんだ。ただでは済まない。
「セレーナ、馬鹿なことするな!すぐに術式を解け!!」
「ふふっ、カルマくんと、シノくんに、よろし、く……」
辺りが濃霧に包まれていく。セレーナが見えなくなっていった。目の前が真っ暗になった。
「おーい、転校生!大丈夫か?」
「え……何!??」
目の前にはカルマがいた。
「何って……君、覚えてないの?」
「……カルマ、お前、カルマだろ!」
「!?、ああ、まあ、そうだけど……え、呼び捨て?」
なんか、違和感だ。
「カルマくーん、保健委員の仕事もう終わったよね?何サボってんの〜?」
この声は、
「シノ!」「ルナ!」
「え?転校生、何か言った??」
ルナが俺の顔を覗き込む。転校生、俺のこと!??
「ルナ、覚えてないのか?」
「は?」
最初に口を開いたのはカルマだった。その後で、
「……サン?」
とルナが恐る恐る聞いてきた。
「そうだよ、吃驚した?」
ぎゅっと、抱きしめられた。
「サン、会いたかったあ……」
「シノ、離れろ。赤の他人だぞ?」
「でも、中身はサンだ。他人じゃない」
鏡の前に立つと、鏡の中には黒髪ストレートのおかっぱ頭で眼鏡をかけている地味めな男の子が立っていた。




