不幸中の幸い
ルナの嬉し涙で全回復した僕は、ヴァンパイアが囚われている牢獄へと足を運んだ。
「ううっ、ううう……」
ヴァンパイア達は抵抗する手段も精神力も奪われてしまったようで、ただ僕達の足音を聞いただけで震え、泣いていた。それを見たヴァンパイアは幾度となく檻を蹴り飛ばしていたが、彼自身の足を痛めつけるだけで檻は壊せなかった。
「あーーー、クソッ!!!」
「もー、どっかに鍵あるでしょ。キレないのっ!」
ジュリがヴァンパイアを慰めていた。
「カルマくん、何か地面揺れてない?」
セレーナがいきなりそんなことを言い出した。次の瞬間、後ろから猛スピードでドラゴンが走ってきた。逃げ惑う途中、セレーナがコケた。僕はそのセレーナをお姫様抱っこして抱えて、全速力で走った。
グオオオオオオン!!!!!
ドラゴンの吐く炎に包まれた。あちっ!
「flame」
魔法の炎で自分自身を取り囲んで、ドラゴンの炎を跳ね返す盾としたのだ。これで一安心かと思ったら、今度はドラゴンの大きな足に踏み潰されそうになる。
「ice」
ジュリが瞬時にトゲトゲした氷で僕達を覆ってくれたので、一難を逃れた。ドラゴンの足の裏から血液が滴る。
「待て、動くんじゃない!!」
「え?」
「そのドラゴンの血液は猛毒だ」
「えーーー!!?」
そんなこと言われたって、ドラゴンの血液の温度で、氷は解けていくし、血溜まりの上を歩かなければ、みんなの元へといけない。
「やばい!!氷が解けちゃうよ!??」
セレーナが焦っている。氷がピキピキいっている。僕はもう終わりを確信した。
バサッ!!パリーンッ!!!
あーあ、氷が割れた。
「……ん?ヴァンパイア??」
「良かったなあ、俺に羽があって。なあ、ルナ?……あははっ、まだ飛び降りの件まだ恨んでんの?……うんうん、お前ら俺に感謝しろよ?」
俺とセレーナはヴァンパイアの腕の中にいた。ヴァンパイアは羽をはためかせて宙を飛んでいた。そして、ムカつくドヤ顔だ。
「ルナあ、飛び降り自殺未遂ありがとー!!!」




