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重愛

どんどんと火が魔獣を包み込み、肉が焼ける匂いが立ち込める。黒煙を抜け出すと、カルマくんが地面に倒れていた。馬車からここまで歩いてきたのだろう。


「……っ、カルマくん!カルマくん!!」


俺はカルマくんを抱き抱えて、彼の肩を揺すった。


「うるさい、シノ。聞こえてる」


ウザったいといった様子で強がっている、でも、その脆弱さは隠しきれてなくて、それを感じてしまって、どうしようもない無力感で、俺は彼を優しく撫でた。


「カルマくん、このまま一緒に死んじゃおうよ。俺も直射日光を浴びて、死ぬ」


ああ、神様。どうか、この長い夜がいつまでも続きますように。


「本当にそれが良いと、思ってんの?」


正直、ドキッとした。俺の内心を見透かされているようで。俺を救ってくれた君を救えないまま、俺は死ぬのか。


「カルマくんが俺の存在価値を認めてくれてたんじゃん。君が死んじゃったら、俺は無価値だ」


「シノは無価値じゃないよ。僕がいなくとも、無価値じゃない」


涙が突如、ボロボロと流れ出てきた。カルマくんがいなくなってしまうような気がした。最後の言葉なんかいらないから、生きて。


「生きて、生きて生きて生きて!!……死なないでよ」


無茶ぶりを言って、彼を困らせてしまっている。


「シノ、もっと近くで顔を見せて?」


頬をそっと撫でられた。彼の指が俺の涙をすくう。彼に誘われるように顔を近づけると、唇同士を重ねた。愛されていると実感させられるキスだった。


「カルマくん、」


唇を離した後で、彼がニコッといつも通りの笑顔を見せてくれた。ああ、好きだ。より一層、その気持ちが強くなって、歯止めが効かなくなる。彼を、失いたくない。


「あの、盛り上がってるところ悪いんですけど、蛇ってこれですか?」


そこには脳内で見せられた通りのイミューンヘビが、セレーナの手元にいた。


「何故それを……?」


「ヴァンパイアさんが魔獣のお腹を切ったとき、胃袋から蛇らしきものが出てくるのが見えたんです」


「セレーナ!本っ当に、君がいてくれて良かった……」


俺はその蛇を歯で噛みちぎって、血液を口に含んで、カルマくんに飲ませた。カルマくんが苦しんでいる。それでも、俺は飲ませ続けた。

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