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最悪

「きゃっ!ちょっ、何するんですか〜!!」


とセレーナが声のボリュームを上げて、笑いながらにそう言ってきた。得意げな顔をしてたのも、つかの間、そのセレーナの声に反応して、魔獣がゾロゾロとやってきてしまった。あー、墓穴を掘った。


「セレーナ、息を殺して。俺の背後に隠れてて」


彼女を翼で少し匿いながら、俺は剣を手に取った。この剣は、カルマくんのもの。切れ味最強なのだ。野獣に囲まれた瞬間、ザバッと円を描くようにその剣を振るう。内容物が若干グロテスクだったので、触れないように、セレーナを抱え、上へと飛んで逃げた。


「……あ、ああ、足が」


え?下をのぞき込む。セレーナの足に魔獣が掴まっている。もがれる!!、グサッとその脳天に剣を深く刺しこんだ。彼女の足は無事だったが、また魔獣に囲まれてしまった。プラス、さっきの攻撃で怒り心頭って奴がちらほらいる。


「ん?……あれ?」


ガチャガチャ、ガチャガチャガチャ


「何してるの早く!!」


ガチャガチャガチャガチャ……


「剣が抜けません!!!」


まじか、終わった。って顔されてる。こっちだって、やりたくてやったわけじゃない。


「どうするのよ!?」


不安でいっぱいな彼女を強く抱き締める。威力の弱いハンドガンで弱点を狙っていく。にしても数が多すぎる。ミレとジュリも戦ってくれているが、真ん中に到達するのはまだまだって感じだ。両翼をもがれる。地獄の鱗片を味わう。カチャ、弾切れ。役立たずの銃を投げ捨てた。魔獣の額に当たった。また怒り狂うソイツ。最悪な状況というがこれ以上にあるだろうかというほど、最悪だった。


「あぁ、血が……血が足りねぇ……」


痛みと死の恐怖でパニック発作が起こって、どうしようもなく考えられなくなって、目の前にいる彼女に牙を向ける。血液さえあれば、俺は生き延びられる。


「ヴァンパイアさん……」


彼女は自分自身を簡単に差し出す。俺が首筋にかぶりつく一センチ手前。何故か、走馬灯のようにカルマくんの声が聞こえてきた。


「シノ。お前、そんなダサかったっけ?」


「はっ!!」


目が覚めた。そんな情けないことをして生き延びるくらいなら、死んだ方がマシだ。唇を噛み締める。鉄の味。


「よし、良い子だ。Gifted ──業火絢爛(ごうかけんらん)──」


パチンッ。俺達を取り囲む魔獣が一気に発火した。

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