はちゃめちゃスローライフ
この国の共通言語は───語だ。俺は喋れない。だけど、ヴァンパイアが脳内通訳してくれるから、「いえあ」と愛嬌だけで何とか乗り切ることができている。このヴァンパイアの目的は、太陽を克服することだった。俺の精神がコイツの中に入ったことで、体質が変化し、長袖長ズボン日焼け止め日傘で昼間も何とか外出できるような身体になった。ただ、クソ暑い!!!
「ルナ、芋も買え」
コイツは俺のことをルナと呼ぶ。だから俺はコイツのことをサンって呼んでいる。サンは人間の血液でしか豊富な栄養が取れないくせに、人間と同じ食べ物を食べられるように練習しているらしい。俺的にはそれは嬉しいのだが、記憶にないとは言え、他人の血液を飲んでいると思うと気持ち悪いので、冷蔵庫に輸血パック冷凍保存しないで。
「カルマ、君のステータスは……おおっ!やはり、素晴らしいではないか……」
何か、国王陛下に見込みあるって思われてる。この言語習得レベルってのが、100ぐらいあるせいだろう。耳では違う言語って分かってんのに、意味が余裕で取れるし、何か喋れる。だからって、さっきまで普通の高校生だった僕が、何でヴァンパイア討伐なんかしないといけないんだよ。
「お言葉ですが、国王陛下。僕はこの国に愛着などございません。帰らせて頂いてもよろしいでしょうか?」
とキッパリ言い放った。周囲の家臣の顔が青ざめる。
「じゃあ、報酬として帰らせるのはどうだ?」
「は?そっちが勝手に拐ったのに、理不尽じゃないですか?」
別に惜しい命では無い。どーせ死ぬなら言いたい放題に言ってから死のう。家臣達の顔がもっと青ざめた。まさにヴァンパイアに血を吸われたみたいに。
「……わっはっはっ!やはり貴様を選んで正解だったな!!この命知らずめ。貴様は何が欲しいんだ?」
「貴方の最も大切なものが欲しいです」
と返答したら、「それなら、私の娘と結婚するのはどうだ?」と提案された。正直、弱冠17歳で結婚はしたくないのだけれど、身なりが綺麗で着せ替え人形のような美麗な娘が出てきたので、まあ、いいか。と思ってしまった。