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真っ赤な海に溺れる

急遽、冒険に出ることにした。理由は、セレーナの心を奪ったヴァンパイアを殺すためである。悠長に勉強している場合ではない、そう思ったのだ。僕のパーティは、勇者な僕、武闘家のミレ、魔術師のジュリ、お嬢様のセレーナの四人だ。何故、セレーナが冒険に出かけるのか、だって?そんなの、道中でヴァンパイアとのエンカに胸を躍らせて、「私も行く!!」と聞かないのである。最終的に僕が殺すことになるヴァンパイア。冒険前に僕は国王陛下からこう告げられた。


「娘を貴様に惚れさせろ」


とんだ無茶ぶりである。が、僕も


「望むところです」


と意気高らかに宣言した。ヴァンパイアに謎のジェラシーを抱いているんだ。僕のもののはずだったものを、他人に奪われることほど不愉快なことはない。他人に僕の所有物の命を奪われるのはこれで二度目だ。うんざりする。



隣りの国にやっと到着した。食糧も水も血液もほとんど枯渇していたが、魔獣の毛皮や角などは高く売れたので、財布だけは潤った。その金で何をするのかって?そんなの、真面目なサンは放っておいて、ギャンブルでガッポリ稼ぐに決まってんじゃん。この血塗れな服と、ボロッボロのナイフに、弾を失った銃じゃあ、どーせ旅なんかできねぇ。そんなちっぽけな金額を賭ける勇気もないなら、今頃はドラゴンの腹ん中だろ?俺は違う。


─────清々しい程の「惨敗」だったな。


カジノの黒服に蹴り飛ばされて、星空を仰ぐ。ああ、このまま死んでもいいや。折れた物差ししか所持していない俺は短絡的かつ楽観的に死を望んだ。


「ああもう!!!ルナ馬鹿っ!!結局、破滅的な思考に依存して、イキがってるだけじゃん。まあ、最初からこうなることは分かってたけどさあ……」


「じゃあ、何で止めてくんなかったの!??」


「散々、嫌って程、止めただろ」


「ああああ、もうっ!!!!……自己嫌悪しかない。この空虚感を自己嫌悪で満たすことしかできない」


ルナはボロッボロのナイフで自分の腕を傷付けた。それで切れ味が悪すぎるのにまた腹を立てて、何度も何度も何度も何度も、無我夢中で俺の身体を刻んでいく。滴る血液に蟻が溺れている。


「はあ……ルナ、寝た方がいい」


「ごめんなさい、サンの身体なのに。ごめんなさい、ごめんなさい……」


涙ぐんでそう言われたが、その常同行動は止まらない。やめたいのにやめられない。ルナは依存症だ。

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