中段 『小鳥囀る、神秘の森の段』後編2
「ーーーで、怪我はないか?」
「ない訳ないだろ!爪が首元に食い込んでクソ痛かったわこんちくしょう!!」
超小人族さんはご立腹の様子。柔らかいもちもちした足で可愛い地団駄を踏んでいる。
「くっそぉ……主は見つからんわ魔物に襲われるわ首絞められるわ……。はぁ、めちゃんこ疲れた。眠い。」
大あくびをして寝っ転がる超小人族。
木や草の間から吹く風が丁字色の髪を揺らしている。
「主?人探しでもしてるの?」
超小人族の隣に移動し、座り込む。
風が心地良い。
「嗚呼。養成所……要するに育った場所だ。其処で父から言われたんだよ。『お前は、これからお前の主の元へ向かってもらう。』ってな。」
「養成所……?嗚呼、里か。ここら辺じゃそんなもんないな。お前はこんな小さな身体で遠くから来たのか?」
へー!超小人族って里のことを“養成所”って呼ぶのか!
「遠く……まあ、遠いな。ふわふわ浮いてたから然程辛くなかったが。」
「ふわふわ浮いてる……?確か、超小人族は空を飛ばないと聞いたぞ……嗚呼、もしかして亜種なのか。」
へー!超小人族って空を飛ぶのか!
「亜種?何が?俺はれっきとした“人形”様だぜ。」
へー!超小人族って人形なのか!
……ん?人形??
「……は?人形?」
サヤと恐らく私、は目を丸くしていた。
そりゃそうだ。ついさっきまで超小人族どころか生き物ですらない人形だったのだから。
「ん?二人ともどしたん?硬直してるぞ?バグか?あ、もしかしてローディングなう?」
最後の方は何を言っているのかよく分からないが、目の前の人形は困惑しているようだ。
「え?は?お前、人形……だったのか?」
「嗚呼、そうだが?」
さも当然かのように頷いている。
「凄いだろ?そこら辺の普通の人形とは違うんだぜ?」
「あ、嗚呼。そうだな、うん。で、お前の主とやらは何処にいるんだ?」
「知らねーよ。大まかな特徴しか聞いてねぇ。確か、傀儡師で異世界から来たピンク頭のちんちくりん。」
それって私のこと?
もしかして……コレがコルリ様が言ってた“人形”だったり?
「あの、人形さん。私、傀儡師でピンク色の髪なんだけど……貴方が私の人形さん?」
私の隣に居るサヤは、そんな職業があるのか……と呟き目を丸くしている。
寝っ転がっていた人形は立ち上がり、数歩後図去った。そして、私の姿を眺めてはふむふむと頷いては、
「お前が主だったのか。ふーん」
私とは対照的に、興味がなさそうに返事をした。
「じゃ、命名宜しく」
「……?なんで?」
首を傾げてみる。
「主に名前を付けてもらうっつーしきたりがあるらしい。そこそこにかっこいい名前付けてくれ」
「そーなのか!うん、分かった!」
折角だから、私と共通点のある名前にしよう。
私の名前、“アヤメ”は花だから……。