中段『小鳥囀る、神秘の森の段』後編1
「い、今の悲鳴は……?」
恐る恐る尋ねてみる。
まさかとは思うが、人間様がさっきの私のように襲われているのか……?
「嗚呼。誰かが襲われているんだろう。声音からして子供ぐらい。
そもそもこの森は危険だから立ち入り禁止だってのに、何で人が入ってんだよ。しかもよりによって子供……。」
そんな立ち入り禁止区域に何でサヤはいるのか訊きたくなったが、それよりもその子供の方が大切なので後回しにしておく。私、偉い。
「アヤメ。その……私の背中に乗って。」
「え?うん、良いけど……」
何をするんだ?まさか、私を背負って子供の元に行くのか!?
……私がいない方が手っ取り早く助けられるのでは?
「ちゃんと捕まってろ。……【高速移動】!」
うん、と答える前にはもう10メートル程先にある木の上に乗っていた。
「速っ!」
「アヤメって意外と軽いんだな。よし、もっと飛ばすから気を付けろ。」
「わ、分かった!」
日の光によって、衣服の間から靡くサヤの白い髪が更に映える。
そういえば、私は鴇色だったな。サラサラなロブに、腰まで伸びるサイドテール。
地球に居た頃はこんな髪型してる人間様は見たことなかった気がする。
そんなことを考えている内に、目的地に辿り着いたようだ。
先程と同じような悲鳴が聞こえる。
「彼処か。」
サヤは私をおぶったまま、木の影から様子を窺っている。
すると、サヤは目を見開いて、
「悲鳴の元は……っ超小人族か!?初めて見た……。異様に小さいな。」
と言った。
確かに、かなり小さい。30cmぐらいか?
「えるだーどわーふ?えるだーどわーふって何?」
「すまん、後で説明するからちょっと黙ってろ。」
「あ、はい」
サヤは一息吐いて、超小人族を襲っている魔物を見据える。
「相手は鳥女か。羽凍らせりゃ殺せるかな。」
相変わらず物騒な。
「何で!?何なんこの仕打ちぃ!!俺養成所でエ◯ゲやってただけだぞ!?」
「よし、彼奴は放置しよう」
帰ろうとするサヤに体重をかけ、何とか止めた。
「え、えろげって何!?てか助けたげて!!!」
「こらこら、身体を揺するな!落ちる!」
すると、私達の声で気付いたのか、
「おい!上に誰か居るだろ!助けてくれーっ!!」
「うっわ、めんど………ごほん。へいへい、助けますよー」
おい、今面倒くさいって言おうとしなかったか?
サヤは嫌そうな表情でひらりと地面に降りた。
「アヤメ。其処の木の下で座ってろ。」
「ん、分かった!」
ぽすっと降ろされ、大人しく木の幹に寄りかかって座る。
「ピューーーーッッッ!!!!!」
鳥女は、突然木の上から現れたサヤにロックオンし、攻撃体制に入った。
勿論、サヤはそれを見逃さない。
「此処がお前の墓場だ、鳥女ッ!」
一気に鳥女の目の前まで近付きーーー
「【凍結】ッ!!」
鳥女の羽が一瞬にして凍りついた!
「す……すげぇ……」
「サヤー!カッコいいよー!」
これには隣にいる超小人族さんもびっくり。
勿論、私も。
「うっ…うううるさい!外野は黙ってろ!」
と言いながら、羽が凍ってしまい動けなくなった鳥女に、ナイフでトドメを刺す。
そして爆散。血と紅に染まった羽根も飛び散る。
しかし、そんな殺伐とした空気に削ぐわないはしゃぎ声が。
「おお!冷静に敵を殺し、時には照れを見せる……これは俗に言うギャップ萌え!生で見るのは初めてだ!!」
「うっせえ殺すぞ」
凍てつく瞳で超小人族を睨む。
しかし、当の本人は気付いていない模様。
「うぇへへギャップ萌えさいうぎゃあああすいませんでしたすいませんでした首絞めないでぇぇぇ!!!!!」
「サヤー!やめたげてー!!」