中段 『始まり告げる、太陽の国の段』中編5
既に日は傾いている。
サヤの高速移動で30分も掛かったのだから、徒歩で…しかもサヤを支えながらの状態だと数時間は掛かってしまうだろう。
しかし……
「キラス、どうしよう…」
「なんだ、腹減ったか」
「その通り」
流石キラス、一発で当てやがった。
「ここまで掛かると思ってなくて、夕食の分を買ってなかったんだよね」
「あほか……?」
「うるさいなぁ」
仕方ない。朝早くに出発したんだからそう考えてしまうのも無理はない。多分。
「やっぱり野宿するしかないのかな」
「っすね」
「うう…」
サバイバル術とか知らないのだけども。
犬の頃は夜行性だったから、寝てる間に敵に襲撃される事はなかった。
だが、人間は違う。
この世界に人喰い魔物が居ないとは限らない。
見張りがいないと、食い殺されてしまうかもしれないのだ。
だが、サヤは気絶してしまっている。
「夜の間、魔物が来ないか俺が見張っとくから、主はサヤを見といてくれー」
「分かった。けど…キラスは起きてても大丈夫なの?」
「まぁ…1日ぐらいなら……。主の命令であれば起きるぞ」
「おや、意外と忠実」
「逆らえないからな」
なるほど。
「じゃあ、お願いしまーす」
「おう」
その後は、コルリ様が見ていてくれていたからなのか、魔物が現れることはなかった。
お蔭で何事もなくヒノン国に辿り着くことが出来た。
ありがたや……。
それで、サヤを治療してもらう為に病院を探している。が。
「病院は何処ですか」
「病院?なんじゃそりゃ」
こんな返答ばかり。
これが4回も続いてしまった。
「主、病院って何だ?」
キラスにも言われる始末。
もしかしたらこの世界には“病院”という存在が無いのかもしれない。
「怪我とか病気を治す所なんだけど……」
「そーか……養成所には人形しか居なかったから、裁縫室で治療してたわ」
裁縫室で治療というパワーワードよ。
「治療は教会で出来るわ。」
背後から、美しくて柔らかい声。
フワッとフローラルな香りが漂う。
しかし、サヤをおぶっているので振り返れない。重たい。
キラスがオドオドしているから、恐らく美人なお姉さんだろう。
「ありがとう…教会はどこ?」
「案内するわね」