中段『始まり告げる、太陽の国の段』前編
《お知らせ》
毎週日曜日の午後3時、毎週木曜日の午後7時に一話ずつ投稿していきます。
出来るだけ忘れないように頑張ります。
宜しくお願いします。
太陽が殆ど地平線に沈んだ頃、漸く到着した。
「わぁ……!きれーい!」
国の門である鳥居を潜ると、眩しい光が降り注いだ。
その国は、光に包まれていた。
例えるならば、『太陽』。
提灯が道に沿って、店や家の屋根からぶら下がっており、ぼうっと照る炎は優しさに溢れている。
屋台から漂う肉のジューシーな匂いや、魚の香ばしい香りが食欲を唆る。
人間様達は団子を片手に談笑しており、皆幸せそうだ。
「此処は『ヒノン』。『太陽の国』とも呼ばれている。なかなかに美しいだろう?」
「うん!めっちゃ綺麗!カッコいいっ!」
「うっ……おえ……。主、マジで首握るなっ……しかも酔ったし……おえっ……」
キラスは空嘔を何度か繰り返し、雰囲気をぶち壊しにしている。
「人形のくせに酔うんだな」
「原材料以外は人間と構造変わんねーからな」
キラスが自らの前腕を反対の手で押すと、普通の人間様なら有り得ない向きにぐにゃんと曲がった。
「へぇ、痛みはないんだな。羨ましい。」
「だろ?」
すると、肉と魚の匂いに誘われた私のお腹の虫が、ご飯を催促し始めた。
「ねね、お腹空いた。」
「そうだな。晩飯は宿屋に向かう道中の屋台で食べよう。」
「やったー!ばんごはーん!」
「うまーっ!!」
イカ焼き!美味しい!こんな美味しい料理を食べるのは初めてだ!
今まで食べてきたドッグフードなんて比べ物にならないぐらい!
噛みごたえが程良く、海の香りが口一杯に広がる……!
「いーなー。俺も飯食いてー。」
人形であるキラスは飲食が出来ないようだ。
臓器が無いとか。
「流石島国。海鮮は美味だな。」
同じくイカ焼きを食すサヤ。
「島国?服も着物だし……日本みたい」
「そうだな。私がこの国に来た時も同じこと思った。食べ物に神社に服、ほぼ全てが日本の文化そのものなんだよ。」
目の前に広がっている、活気に満ちた大通りを改めて眺めた。
漂う香ばしい匂いの元は大体焼き魚。湯気が出ている店では味噌汁やお雑煮を作っている。
道行く人間様達は着物を着ており、建築物は殆どが木で造られていた。
「まあ、私達にとっては居やすいから楽なんだけどな。」
「うん。懐かしい感じがする。」
「俺からしたら眩しくて落ち着かないんだがな。」
「黙れ」
「……サヤさん、俺への扱い雑過ぎません?」
サヤに冷ややかな目で睨まれているからか、ブルブル震えている。
キラスが命の危機を感じている中、隣で黙々とイカ焼きを食べる私。何ともよく分からない絵面が出来ていた。
「美味しかったー!」
イカ焼きを4本も平らげた。満腹満腹。
「アヤメ、よくそんなに食べられたな……。」
「コイツの食費だけでえげつない額になりそう……。」
おっと、サヤもキラスも引き気味だ。
まあ良いだろう。満足したし。
「そろそろ宿に向かうか。」
「はーいっ!」
「ういー」
サヤに連れられて、私達は商店街から少し外れた道を歩いていった。