1話:提案
ここは人里離れたところにポツンと点在する谷間の村。
春は菜の花が谷一面に咲き誇って、それは奇麗なところだけども。
冬は雪が降る土地柄で、時々雪崩が発生することもある少し危険な場所でした。
それでも村の人々は呑気なもので、「冬眠期間」などと嘯きながら家で巣籠りをします。
そんな中子供たちは、というと村の集会所に集まってだべっていました。
彼らは、トランプ、オセロ、チェスと色々な玩具を持っていましたが、1ヶ月も経つと飽きてしまいました。
「なあ、なんか面白いことはないかな?」
白豹の子供は退屈そうにあくびをしながら言いました。
「そうはいっても、外は雪だから遊びに行けないよ」
熊はのんびりした口調で答えます。
「壁のぼりゲームしない?壁を伝って天井裏に最初に辿りついた奴が勝ちだ」
「それじゃあ、サルが有利過ぎるでしょ。それに熊が梁とか掴んだら壊れちゃうよ」
人が呆れたように答えました。
これらのやり取りは既に何度か繰り返したものだったからです。
雪狐は穏やかな性格なので、困った顔でサルと人を見つめます。「喧嘩はダメだよ!」と目で訴えることも忘れていません。
「じゃあさ、人が何かいい案だせよ。俺はもう、退屈で死にそうなんだ、、、。」
サルは情けない顔で訴えます。サルのいうことももっともです。
人は暫く、いかにも考えています、といった風に顎に手を当てて俯きました。
何も思いつかなかった時のための、きちんと考えている風アピールです。人は少しあざといところがあるのです。
考え込むこと暫く。漸く人は顔を上げました。
「じゃあさ、みんなで宝探しゲームなんてどう?」