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鬼の矛先は《人間》  作者: 桜
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第八話 「別れの決心」

 

 私はゆっくりと立ち上がった。

 そしてネクロの顔の方へと向かい、座る。

 まるで眠っているかのような顔でネクロは横になっている。


「ネクロ....私少しお外に行って来るね。その間寂しいかもだけど、絶対帰ってくるからね...絶対.....」


 私はネクロに顔を寄せながらそう言う。

 前は暖かかったのに今は冷たい。それはきっと私の流している涙のせいだよね。

 リーナはそう思う事にした。

 数秒かそれとも数分か。その間ずっとネクロに顔を寄せていた。

 そして復讐の意を決して私はネクロから顔を退かし、流していた涙を拭って立ち上がり、男が消えて行った方向へと歩き出す。

 その間、絶対振り返らないようにした。振り返ればまた悲しくなり行きたくなくなるような気がしたからだ。

 しばらく進んで行くと小さな小部屋ほどの穴へと辿り着いた。

 その穴の地面には大きな魔法陣が刻まれている。私はその魔法陣に触れ魔力を流す。

 すると魔法陣が光出し、視界が真っ白になる。しかし真っ白になったかと思えば再び魔法陣が視界に入ってくる。

 この魔法陣の事はネクロから聞いていた。というより注意されていた。

 この魔法陣は転送魔法陣だそうだ。これに魔力を流すと名の通り転送されるのだ。ただし上へもしくは下へしか転送出来ない。

 つまりここは私達がいた階の上の階という事。

 この魔法陣は全階層に存在し、上下へ移動する唯一の方法がこれなのだそう。

 どういう事かというとこのダンジョン正確には全ダンジョンだが、地面も天井も壁も完全に壊しきる事は出来ないように出来ているそう。

 多少は砕く事は出来るそうだが上下を貫通させて階を繋げる事は出来ない造りなのだとか。

 なのでこの転送魔法陣でしか階層を移動出来ないの。

 などとネクロから聞いた事を思い出しながら次の階へ行くためにこの階のもう一つの魔法陣を探すために歩き出す。


「...そう言えばこの階層のボスって、やっぱり....」


 そんな事を考えてからしばらく進んだ所で私の予想が当たった。

 冒険者達が下の階へ来たという事はこの階のボスとなるモンスターは殺されているという事になる。

 目の前にあるのはバラバラになった鉄柵の真ん中くらいに倒れている首と胴体が離れたモンスター。

 名前は....メイデンウィッチだったかしら?

 ウィッチという名なので魔法を得意としたモンスター、とまでしか私には分からない。

 そんな事よりも....


「んっ...」


 私は何故かメイデンウィッチの身体から流れ出ている血を見て口の中に唾液の量が増した。

 その唾を飲み込む。

 そして増したかと思うと急激な渇きを覚えた。


「....!早く離れないと」


 我に返った私はすぐにこの場を離れる。

 離れなければどうなっていたかは分からないがなんとなく危険だという事は分かった。

 早足でこの場を離れてから途中で止まり少し荒くなった息を整える。息が整うと気づけば喉の渇きも治っていた。


「何だったの?」


 訳の分からない急な渇きにちょっとした恐怖と疑問を抱いたけど、考えても分かるはずもないので頭を振って考えないようにした。

 そして歩き始めてからかなり経ってから観音開きのデカい扉が立っている。

 その扉の片方を力一杯押すと数十センチほど開いた。この扉は魔力を流せばかなり簡単に開くのだがそれをリーナは知らない。

 しかしリーナの力がそれなりであるのはこれを観てもよく分かる。

 扉を潜った先には迷路のような道が広がっている。暗くはないがかと言って明るい訳でもない。薄明るい感じかな。

 罠があるのは当然と思う事にして慎重にその迷路へ足を踏み入れた。



 しばらく進んで行くと身体が剣などでの切り傷やおそらく魔法による火傷のようなものを負った二つの頭の二メートルほどはあるモンスターが倒れている。

 血....早く行こう。

 冒険者達が倒したのであろうモンスターから流れ出ていた血にまたしても喉の渇きが起こったので急いで離れる。

 倒れていたモンスターから少し進んだ所で別れ道に差し掛かった。


「どっちに行けば....」


 出来る事なら冒険者達が通ってきた道を辿りたい。でなければモンスターと遭遇してしまうから。

 私だって自分の戦闘能力が欠けている事は分かっている。

 だからせめてここから十階層分は戦いたくはない。まず間違いなく負けてしまう。

 その理由があるのでこの別れ道をハズす訳にはいかないの。

 それぞれの別れ道に近づいて何か分かる事を探す。薄明るいとはいえ注意深く観るためにはそれなりに顔も近づけなくてはならない。

 そのおかげというかは分からないけど古びた鉄、いやこれは血の匂い!それが鼻を突いた。


「...!」


 いつもの流れだと喉が急激に渇きを覚えると思って急いで離れたが、喉の渇きが起こらない。

 何故?という疑問しか浮かんでこない。

 自分が何故血を観たりするとこうなるのかすら分からないのだ、当然である。

 ....ダメ、やっぱり考えても分からない。こっちの考えるのは諦めよう。それよりも何故地面から血の匂いがしたのか、よ。

 こっちの方が簡単に思い付いた。

『冒険者達が通って来た道だから』という事。

 冒険者の血なのかモンスターの血なのかは分からないけど、少なくとも通って来たのは確実だと思う。

 私はすぐさまその血が垂れている道を進む。


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