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鬼の矛先は《人間》  作者: 桜
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第五話 「圧倒的な差」

 

 リーナは気を失っている。

 男が放った中級レベルの魔法の威力はリーナが無意識のうちに発動していた『魔力障壁』によって威力が減り、致命傷にはならなかった。

 さらに男から受けた威力の滅った魔法をさらに『自動HP回復』により回復していきほぼ全回復したくらいで意識が回復した。

 リーナの意識がはっきりとしだしたのは男が仲間たちから装備を奪っている所くらいでだ。


「フレイム」


 男は死体の仲間たちからアイテムを回収するとそれを一箇所に集め炎を放った。


「さて、とっととのずらかるか.....このガキどうすっかなぁー。放っといても問題ねえとは思うけど、どうせ死んだし。服も別に売れそうにないな。止めと、がっ⁉︎」


 そう男は言って大荷物を抱えてどこかへと消えて行こうとしてリーナに背中を向けたその時、リーナは魔法陣を構築し、魔法を放った。

 それにより苦痛の声を上げた男がこちらへと視線を向ける。


「っち、死んでなかったのか」


 男は面倒くさそうな顔でリーナを睨んできた。


「全く。さっきので死んでれば痛い目に遭わずにも済んだだろうに。運のない嬢ちゃんだよ」


 そう言いながら荷物を置き鞘に納めていた剣を抜く。

 そしてその切っ先をリーナに向ける。


「悪いがこれで行かせて貰うぞ。もうMPが底をつきそうなんで、なっ!」


 自分が絶対に勝てると思った男は地面を蹴って一気にリーナの懐に入る。


「ふっ!」


 男はリーナの首を狙った。

 苦しませないようにするためという彼なりのプライドでだ。

 しかし剣は見えない壁によって鈍い音を立てて弾かれた。


「マジか。その見た目でなかなか()い障壁を造るじゃん。褒めてやるよ」


 少し驚いた表情を表に出したが、すぐに引っ込めリーナを嘲笑うように微笑む。

 そんな言葉を無視してリーナは魔法陣を構築し始める。

 六つの魔法陣が空中に出来上がると、そこから黒い稲妻が男めがけて駆けた。


「っと....魔法の才能に長けた嬢ちゃんだ。まさか複合魔法が使えるなんてよ。それも中級レベルの」


 リーナの攻撃を容易に避けた男は再び驚いた表情を浮かべる。

 男の言った複合魔法とは二つ以上の属性を合わせて、新たな魔法にする魔法。今リーナが複合したのは光と闇の属性だった。

 そして、その複合魔法のやり方をネクロは教えていなかった。


「そんだけの腕なら新しい仲間として歓迎してやっても良いぜ?」

「....」


 リーナは終始無言のまま男を無視し、再び魔法陣を構築し始める。


「ちぇっ、つれねえ嬢ちゃんだな。なら、少し本気で行ってやるよっ!」


 リーナが魔法陣を組み上げるよりも先に男は再び剣の間合いにリーナを入れる。


「ふんっ!」

「...⁉︎がっ!」


 さっきよりも力を強めて斬りつけてきた剣はリーナの障壁を破りリーナの左肩やや前から胸の上くらいを切った。

 幸い障壁で威力が落ちた事で大きなダメージは受けなかった。


「ホント硬えな。どんだけのMP持ってんだよ」


 男は嘆きながらも追撃を仕掛けてきた。


「ふっ!」

「があっ⁉︎」


 男の突きがリーナの心臓を穿(うが)つ。

 剣を抜くとリーナは膝をついてから倒れた。


「惜しい子を失くしちまったな。俺にもう少しMPが残ってりゃあもっと楽に殺してやれたんだがな」


 そう後味が悪そうな顔をして男は荷物を取りに戻ろうと背を向けた。


「うっ....うぅぅぅぅ....」

「⁉︎」


 しかし背後からの呻き声に再び視線を戻すと、確かに心臓を貫いたはずのリーナが立ち上がろうとしていた。


「嘘だろ....何で....もう大人しく死んどけよ!」

「ううぅぅぅっうぅぅううう....」


 男が何を言おうともリーナには訊こえていない。

 なぜなら、理性がなくなりかけているからだ。つまり本能で戦っているのだ。

 それはモンスターと変わらない。


「うぅぅうううぅぅ...」


 リーナは魔法陣を構築し始める。

 しかしその魔法陣から魔法が放たれるよりも先に男が地面を蹴り、リーナに斬り込んでいた。


「あああぁぁぁっぁぁぁあああ‼︎‼︎」


 深めに右脇腹から左肩やや右よりで胴を斬られ、苦痛の声を叫ぶ。

 いくらリーナが強い魔法を行使しようが男は怪我を負い、MPやHPがかなり減っていてもこのダンジョンの最下層まで来るほどの腕だ。

 リーナがその男の動きに反応して戦えるほどの戦闘経験が彼女にはない。


「ぐっ....」


 しかしリーナはそんな事を考える事なく次の魔法を行使し始めた。

 だが今回の魔法陣の数は一六。それを自分の周りに展開し、横全方位に放てるようにした。


「成るほど、それなら俺に当たると思ったのね」


 リーナの本能が避けさせないっと思い行ったのがこのやり方だった。

 しかしそのまま魔法を放てば魔法は四方八方へと放たれ、奥で死んでいるネクロにも当たってしまうのだ。

 だがリーナはそこまで頭が回っていない。


「でも、それでは俺には勝てない」

「がっ‼︎⁉︎」


 そう呟いてリーナの腹に剣を根元まで突き刺す。

 そして剣が刺さったままリーナは仰向けに倒れる。すでに意識は飛んでいるため、痛みは感じなかった。


「はぁ...はぁ....結構長引いたな。はぁ....念のため残りの魔力で押さえておくか」


 そう言ってリーナに手のひらを向け、そこに魔法陣を構築し始める。


「バインド」


 詠唱すると魔法陣はリーナの方へと向かい、まるでリーナに合体するかのように消えっていった。

 これは闇属性の呪い、呪術。魔法なのだが術なのだ。

 男が行使したその呪術は初級レベル。しかしこれは簡単に弾ける。

 相手がそれなりのレベルか弾くアイテムを持っていれば簡単に弾ける。

 反対に自分の方が上だったり、より強い呪術を使えばそう簡単には弾かれない。

 今回は男とリーナにはかなりの差があり、なおかつリーナの精神や体力が弱いため弾かれなかった。


「数分で効果は切れるけど、回復が出来なくなったからこれで死ぬだろ...くっ!MPを使い過ぎた。頭いてぇー」


 そう言って頭を抑えながら男は荷物を持ってどこかへと消えて行った。


今は何がなんだか分からないと思いますが、後々にちゃんと分かります。多分....

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