第三話 「目覚めの日」
突風が岩を押し続ける。
ネクロの魔法によりなかなか退こうとしないがリーナも諦めずに魔法を発動し続ける。
数秒間突風を当て続けようやく岩が動き始め、吹っ飛んだ。
「はぁ...はぁ....やっと、はぁ....動いた。はぁ...ネク、ロ...はぁ、はぁ.....」
魔法の行使でかなりの体力を消耗して立っているのもやっとの状態だが、身体に鞭を打って食事をしていた方へと歩く。
途中で何度も転びそうになったりしたが踏み止まった。
そんな感じで数分間歩き続けようやく竜状態のネクロが遠くに見える。
それを見るなりリーナはかなり遅いが駆け始めた。だが、近づくにつれ周りには大量の血が散乱しているのが分かった。
「ネクロ⁉︎」
血に気づいてすぐにネクロが倒れているのに気がつき倒れているネクロの顔の方へと向かう。
安定しない薄い呼吸で眼を閉じているネクロ。それに驚いたリーナは光属性の回復魔法を行使し始める。
「っ!がはぁっ⁉︎」
が、吐血してしまった。
先ほど魔力と体力を限界近くまで消費した所で目眩も気にせず身体に無理をさせたため身体が耐えられなくなってしまったのだ。
マラソンを全速力で疲れても諦めず走り続けた時と同じダメージ、それがリーナに与えられた。
「がはっ!がっ、がっ....何...で....?」
「.....ん、んん....リ....リーナ......」
「ネクロッ!良かった、生きてた!」
ゆっくりと目を開いたネクロに痛みを忘れて喜びの声を上げたが少しカスれている。
「.....どう、したんだい。そんなに...魔力を減らし.....て....」
魔力が減っている事に気がついたしゃべるのも辛い状態でもあるネクロがリーナに理由を聞く。
「しゃべっちゃダメだよ!こんなに血も出てるんだから」
「私は大丈....夫、よ。それより....も貴女の方が.....待ってね、今治すか、ら.....」
そう言うとネクロの下に魔法陣が浮かび上がる。
魔法陣が通過するとそこには黒い霧が漂っており、魔法陣が通過し終わると黒い霧が一気に凝縮し始め人の形になる。
そして霧が晴れるとエメラルドグリーン色の髪が腰まで伸びた美女が現れた。ただ血や傷だらけの状態で。
「何で?そんな事したら疲れちゃ...」
「ドラゴン・ライトニング!」
「あああぁぁぁぁっ⁉︎」
「⁉︎リーナ!」
リーナの身体目がけて雷の龍が駆け、直撃する。
シュウゥゥゥとリーナの身体から黒い煙が上がる。その彼女の身体は黒焦げになっていた。
驚愕していたネクロだったがすぐに我に返り魔法が放たれた方を見ると口角を上げうつ伏せから上半身を少しだけ上げ右手を上げた冒険者の男がいた。
だがその男は最期の一撃だったようで倒れてそれ以降動かなくなった。
「嘘.....ごめんね、リーナ.....すぐに治すか....らね」
ネクロはリーナに手を向け魔法陣を構築し始める。
魔法陣が完成するとリーナの身体を柔らかな光で包まれる。上位の回復魔法、『ギガヒール』をリーナに使う。
それによって黒焦げになっていたリーナの身体は元の白い肌に戻っていた。
しかしリーナは倒れたきり動かない。
「心臓...は.....」
耳を研ぎ澄ませてリーナの心音を聴く。ゆっくりだが動いている事に安堵の息を漏らす。
「なら、後は......くっ!ん、んん...くっ!.....」
ネクロはぼろぼろの身体を無理矢理動かしてリーナに近づく。動くたびに傷などがで激痛が走るが、構わずリーナに近づく。
身体を起こし、自分の腕を上げリーナの口元へ持ってくる。
片手でリーナの口を開けてもう片方の腕を口に挟ませ、頭を押して噛ませる。
徐々に押す力を強くし自分の腕噛ませていく。すると腕からより多くの血が流れ、リーナの口の中へと流れていく。
「飲んで....」
「....んっ.....」
息が出来なくなり血を飲みこんだ。
ドックンッ!
リーナの心臓が大きく鼓動した。それと同時に身体もビクッと跳ね上がった。
「これで....助かる....わ......」
ネクロはその場に静かに倒れた。
リーナの身体はネクロが倒れてからも何度か跳ね上がった。
ネクロが与えた血はリーナが口にする初めての血だった。そしてその血によりリーナのヴァンパイアとしての力が目覚めた。
ヴァンパイヤではなくヴァンパイアでした。すいません。