第一話 「少女の日常」
少女はごつごつした地面に仰向けになり石の天井を眺めながら考え込んでいた。
今日の晩御飯を何にしようか、と。
「うーん、昨日は焼肉だったし今日はミンチにしてハンバーグでも作ろうかな?でもそれは一昨日作ったような・・・じゃあミートボール・・・も食べたなぁー・・・」
「リーナ、まだ迷っているのかい?」
「あ、ネクロ」
少女、リーナと呼ばれた少女の下へ歩いてきてネクロと呼ばれたのはリーナが寝転んでいる階に住むエメラルドグリーンの竜である。
「うん、ネクロが教えてくれた外の料理はもう全部作れるようになっちゃったしね」
「そうかい、もうそんなに経つのかい。なら今日はペシキガラを使ったピリ辛ミートローフというのを作りましょうか。これも美味しかったわよ」
「うん!作ろ、作ろ!」
少女は勢いよく起き上がりネクロの下へ駆ける。
「ちょっと待ってね」
そう言ってネクロの足元によく分からない文様が現れ、魔法陣が描かれていく。
完成した魔法陣が上へ上がって行く。魔法陣が通り過ぎた後には黒い霧が漂っていた。
そして魔法陣がネクロを通過し終わると黒い霧が一気に凝縮し始め人の形になる。
そして霧が晴れるとそこにはさっきまでの鱗の色をしたエメラルドグリーン色の髪が腰まで伸びた美女が現れた。
「お待たせ、さ作りましょ」
「うん!」
2人はネクロが外の世界で知ったキッチンを模範として作った調理台へと向かう。
リーナとネクロがいるのは世界に幾つも存在するダンジョンの中でも最上位の難易度のダンジョン。ネクロはそのダンジョンの最下層に住む竜。
ゲームでいうラスボスである。と言ってもネクロの下までやってこれた冒険者などはここ数百年現れていない。
1人を除いて。
ただ1人の女だけがネクロの下までたどり着いたのだ。
彼女はネクロと古い知り合いであった。だがその女は竜ではなく、ヴァンパイアだ。
ネクロの下へ訪れた彼女の手には赤子が抱かれていた。それがリーナだ。
リーナはそのヴァンパイアの娘だった。彼女はネクロに娘を預けにやってきたのだ。ネクロを預けるとヴァンパイアの女は去って行った。
リーナの容姿は母親似であり、銀色の長い髪に赤眼。鋭い耳に細身の白い肌の手足。
ネクロがリーナに話したのはここまでだった。
リーナはなぜ母親が自分をネクロに預けたのかは知らない。だがそれを聞く気はない。
彼女にとっては顔も声も知らない本当の母親よりも、いつも自分と一緒にいてくれるネクロの事を親だと思って慕っている。
しかし心のどこかではやはり母親に会いたいという気持ちもある。
ネクロは時々だが外の世界、ダンジョンの外へ出て人間の街を回っている。ちゃんと人間の姿になって。
街を回って美味しい料理やお菓子を食べて回り今はそのレシピを思い出しながらリーナと料理を楽しんでいる。
リーナはまだ一度もダンジョンから出た事はない。ネクロが過保護なため出させてくれないのだ。
なので毎晩寝る前にネクロから外の世界の面白かった話や楽しかった話、珍しかった物の話などを聞くのがリーナにとって一番の楽しみでもある。
そんな日々が15年間続いている。
調理台に着いた2人。2人はエプロンを着け料理を始める。
ネクロは外の世界で知った料理の作り方をリーナに教えながら作る。その間リーナは助手として仕事をする。
楽しそうに料理をしている2人の姿は側から見れば親娘に見えるだろう。
「ここでペシキガラをお肉と混ぜても良いんだけど、好みもあるから今回はソースに混ぜましょうか」
「私は辛いの平気だよ?」
「でもペシキガラはとっても辛いのよ?」
「大丈夫!大丈夫!」
そう言ってひき肉に粉状にしたペシキガラを半分ほど入れ、混ぜ始めた。
ネクロはあっと声を漏らしたが柔らかな微笑みを浮かべた。
「もう、どうなっても知らないわよ」
「へへへ」
そんな会話を交ぜながらも楽しく料理は進み、ピリ辛のミートローフ(肉とソースだけの)が完成した。
そして完成した料理をこれまたネクロが外の世界で知った机の上に並べる。
「さ、いただきましょうか」
「うん!」
手を合わせて合掌する。
「「いただきます」」
合掌をしてからリーナはネクロに教わったナイフとフォークを使ってミートローフを一口サイズに切り、頬張る。
「⁉︎辛っ!」
そう叫んでコップの水を一気に飲む。
「.....ぷはぁー」
「だから言ったでしょ、責任持って全部食べなさい。分かりましたか?」
「ううぅ...ふぁい」
「....ふふ、後でアイスも食べましょうか」
「やっふぁー!ネフゥロ、らいしゅき!」
「ふふふ....あーん。うん、美味しい」
このように毎日ネクロに甘やかされ続けるリーナであった。
話の流れを少し変えさせていただきました。すいませんでした。