後宮にいるハーレムを寝取りに行ったら、僕が美味しく頂かれました
感想欄にてご指摘いただいた部分の修正版を、あとがきに比較して記載しようかと思ったのですが、プレビュー画面を見たらすごいことになったので、そのまま修正します(2017/9/23)
葛城遊歩 様、ご指摘ありがとうございます。
僕、キャロル・スターシアは現在とても機嫌が良かった。
「くくく、愚かなるアベル王子め。この僕、キャロルが後宮にいる全ての女性を寝取ってやるぞ!」
そう僕は案内された部屋で一人叫んだ。
やけに綺麗というか、高級でそれこそ王妃が住まわれそうな部屋である。
調度品もきらびやかで丁寧な細工が施されて、僕の元いた部屋よりもいい物が取りそろえられている気がする。
「変だな。後宮に入れと言われたから、てっきり後宮の女達の護衛でもさせてくるのかと思ったけれど……いや、やっぱり僕が、公爵家、それもこの国の国王よりも力が強いと言われている家だから特別待遇なのかな?」
僕は首をかしげながら周りを見る。
どれも素晴らしい品ばかりだ。
明らかに僕にあてがわれるのは妙に思える。
でもやっぱり親の威光という物があるのだろうか? その力を取り込みたいから傍に置くのかな、と僕は僕のライバルでもあるいけすかないイケメンであるアベル王子……次の王を頭の中で思い浮かべる。
この国の王が後宮に何人もの女性を囲い、女同士、そして王子同士の熾烈な戦いがあったのだけれど、それは唐突に終わりを告げた。
その王子達の中で一番身分の低い女から生まれた王子、そう、僕のライバルでもあるアベル……彼だけが、王族に課される試練の迷宮から生きて帰還したのである。
一番初めに、その迷宮の奥から水を汲み、戻ってこれた者が王太子であるのがこの国の決まりだ。
ちなみに迷宮が王太子の選定を選定をするのだそうだ。
ただ選定でも持っている道具によってぎりぎりクリアできたという事例もあるらしい。
そしてアベルは……母方からの援助がなにもなかった。
他の三人の王太子は母方から剣以外に一つだけ持っていっていいと言われている強力な道具を携え迷宮に向かっていったと聞いた僕は、好敵手としてのアベルを多分失いたくなかったのだと思う。
事前にその迷宮の魔力波長やら何やらを調べ、事前情報や文献等を洗い出し、他にも必要な材料を集めて……特殊な道具を作った。
そう、あるいている道を記録し同時に空間座標まで全て見る事が出来る特殊装置“アリアドネの糸・ベータ版”である。
ガラス玉状のコンバクトさもさることながら映し出される映像の正確さ、それも魔法の干渉を受けない優れ物である。
だからどうにかそのその試練があるらしい前日に、アベルに僕は渡せたのだ。
「俺に、これを?」
驚いた様なアベルの様子は、昔と変わらないと僕は思った。
昔のアベルは女の子の様に可愛くて、この子なら生涯の伴侶になってもいいと僕は思って、もし次の王になれなかったらお嫁さんにしようと決めていたのだ。
ただ一度それを言ったらとてもアベルは怒って、僕がお嫁さんにするんだといいやがったのである。
それでもあの頃はまだアベルが弱くて、可愛くて、あの金髪碧眼の僕の天使状態で守ってあげたくて堪らなかったのに……。
「何であんな風に男らしくて格好いい感じで僕よりも背が高くなっちゃったんだろうな」
そういえば背が同じくらいになった頃に力やら知力も好敵手というようになって、よく競い合うようになった。
そしてアベルは女の子にきゃあきゃあ言われるようになって。
それなのに僕は公爵家のアホ息子とか言われるし。
勉強だって出来たし。アイツには負けたけれど
剣術も魔法も出来た。あいつには負けたけれど。
いや、あいつ……アベルに負けたからそんな事を言われてしまったのだろうか?
でもアベルは、確かに見かけでもててはいたけれど何時も一人だった気がする。
報復を恐れて、誰も手を差し伸べない中僕があの道具を渡すと、
「俺を心配してくれるのは、キャロルだけか」
「ふん、僕の家はすっごく強いからな」
「……そんな事を言っているから、親の七光って言われるぞ」
「僕の実力を知らない奴がなにを言っているんだって、何時も思っているからべつにいい」
「……キャロルの実力は好敵手である俺が一番知っている。それに……一番一緒にいるのがキャロルなんだから、キャロルの事は俺が一番よく知っている」
そう珍しく憎まれ口もいわずに、あの時アベルは微笑んだのだ。
あの時の微笑も昔を彷彿とさせて僕は食い入るように見つめてしまった。
それに、僕の事が分かっていると、親の七光ではないといいきってくれたアベルの言葉が僕には嬉しかった。
そして迷宮に入り、みごと勝利をもぎ取ったアベル。
その後、あの頃は学園に通っていたのでアベルの周りに人が増えたものの、僕との関係はそんなに変わらなかった。
他に変わったのは、アベルの周りに“女”が増えた事である。
だが女の子大好きな僕でも彼女達は、苦手を通り越して恐怖を感じていた。
何でもアベルは優秀な女性達も捕まえておこうと思ったらしく声をかけていたのだが……彼女達は僕を、“獲物”であるかのように見るのだ。
とはいえ女の子を怖がっていては手に入らないと思い、一度僕は彼女達に近づいた事があった。
そして僕は彼女達に“捕らえられた”。
暗い部屋に引きずり込まれ、あれよあれよという間に服を着替えさせられて、気付けば可愛らしい女の子の様に着飾られてアベルの前に差し出されてしまったのである。
羞恥心も相まって凍りついた僕を、女の子と間違えたのだと思うアベルがキスしてきて、それに僕は……嫌では無くて、けれどそれが信じられなくてその場から逃げ出したのだ。
しばらくあいつの顔を見れなかったのは、アレな思い出である。
「でもこの後宮は、お嫁さん候補がいる場所だからあの子達はいないよね? 文官になるらしいし」
ライバルなので事前情報は全て僕は手に入れていたのだ。
そもそもここの後宮に来る事になったのも僕が、
「ハーレム作りたい、女の子にモテモテになりたい、後宮欲しいっ!」
と叫んでいじけていたところそれをアベルに聞かれて、
「キャロルは後宮に入るか? それを仕事にするか?」
「! いいの! というか、アベルのハーレム全部寝取ってやる!」
アベルにいわれて僕はそう答えたのだが、その後、何故か僕は後宮に入る事になったらしい。
僕の親にも話を付けたそうだ。
あれからやけに親もアベルもその周りにいる女性も僕を生温かい眼差しで見ていた気がする。
理由をアベルに問いただしても絶対に答えやがらなかったし。
そもそもハーレムを寝取るのは冗談のつもりだったのに、そんな僕が本当に後宮に行く事になるとは思わなかった。
たぶん、力仕事や護衛で後宮に入ってほしかったのだろう。
ライバルとはいえアベルは僕を信頼してくれているのかもしれない。
男同士もあるにはあるけれど、王様という立場のアベルがわざわざ男を選ぶはずはないだろうと僕は思うのだ。
そして今に至るわけだけれど、
「よし、ハーレム全員奪ったろ、ということで、頑張るぞ~」
僕は意気揚々とその部屋を出て、他の女性の部屋らしき場所に向かったのだけれど……そこにいる女性を見た瞬間、僕は全力で逃走した。
だがすぐに縄が僕に絡まり、
「キャロル様、折角お待ちしておりましたのに、いきなり逃げるとは思いませんでした」
「は、放せぇえええ」
僕は悲鳴を上げて彼女達から逃げようとした。
そこにいたのは文官である、アベルの周りにいた女性である。
何故ここに彼女達が!
可愛いふわふわの令嬢であるアベルのお嫁さん候補は何処にと僕は悲鳴を上げた。
そして捕らえられた僕は彼女達に着飾らされていき、その最中衝撃の事実を知る。つまり、
「予算削減で後宮に、文官の宿舎を設ける事になりまして」
「じゃ、じゃあここにはアベルのお嫁さんはこないのかな?」
「いえ、一人います」
そう答えた彼女に僕は、
「じゃあその子を寝取りに行ってハーレムに……」
「無理ですね」
「ど、どうして?」
「アベル様はその方にとても執着しておりますから」
「そんな相手がいたんだ」
「ええ、正妃ですからね」
僕を着飾らせる彼女達が笑いを押し殺すように僕に告げる。
一方僕は、何となくその女性が気に入らないというか、寝とってやるというか、そんな執着する様な可愛い女の子がいたなんて知らなかったと僕は思った。
もう少し情報が欲しかったけれど、彼女達ははぐらかすばかりで、僕には一言も教えてくれなかった。
そんな僕が、僕自身が“正妃”にされたと知らされたのは、もう少し後……僕がアベルにベッドに押し倒された時のことだった。
着飾らされた僕は現在、アベルにベッドに押し倒されていた。
「な、なんで?」
「キャロルが俺の正妃だからな。言っただろう? 後宮に入らないかって。それに頷いたのはお前だろう?」
「ち、力仕事とか護衛とかではなく?」
「後宮のハーレムを寝取ってやるという奴をそんな理由で雇うと思うのか? そもそもこの部屋は、正妃用の部屋だし」
そういえば結構上等な部屋だと思ったんだと僕は思った。
そこでアベルが僕にとてもすがすがしいと言える笑みを浮かべて、
「ちなみに、今なら正妃以外を選ばせてやってもいいぞ」
「! ど、どんな? 近衛騎士とかそんな感じかな?」
「性奴隷だ」
「……」
「そちらを選んだら、ありとあらゆる恥辱を与えるからな。そして一生後宮のこの部屋で囲ってやる。他の男と結ばれないようにな」
「! ほ、他の男……どうして女の子じゃないんだ!」
「……自分がどれだけ男を惑わしているか自覚がないのか」
「な、何を言って……」
そこで涙目になって睨みつける僕にアベルは唇を重ねる。
温かい唇が重なって、頭がぼんやりしてくる。
と、唇が離されてアベルが、
「俺は、キャロルじゃないと無理だ。キャロル以外に愛せない。だから……俺を愛して欲しい」
切なそうに呟くそれを聞きながら、ずるいと僕は思ってしまう。
これでは僕は、頷く事しかできない。
でもそのまま頷くのは悔しくて、だから、
「どうして僕なのかな」
「ずっと一緒にいて、優しくて、好きだった。そして一番の特別だと、思っていたけれど……もう絶対に放したくないと思ったのはあの日、俺を心配して魔道具をくれた時だ」
「あの日?」
「そう、心配してくれたのは母とキャロルだけだったから。俺は絶対に一番に戻ってきて手に入れると決めた。だから、ありとあらゆる手を使って、戻ってきた俺はキャロルを手に入れる算段をした。特にキャロルの家の力を手に入れるのは王族にとっても重要だったから事は上手く運んだ」
「……道理で僕の両親がやけに生温かい感じで見ていたわけだ。皆知っていたんだ」
今更ながら理由を知って僕は悔しくなる。
全部、アベルが僕を欲しくてした事であるのなら、別にもういい。
「僕はまだ、アベルがどのくらいそういった意味で好きか分からないけれど、でも、好きな事は多分本当だと思う」
「いや、キャロルは俺の事を好きなはずだ」
「! どうして!」
「だっていつも、俺を見ていたじゃないか」
「!」
それに僕は言い返せず、今更ながら僕は僕の本当の気持ちに気付かされた。
今までそわそわしていたのは全部、アベルへの気持ちの裏返しで。
僕も本当はアベルが好きで。だから、
「……優しくしてほしいな。僕もアベルが好き……だから」
そうとだけ返すと同時にアベルが頷き
それからアベルは容赦なく僕に襲いかかる。
これでは仕事に支障をきたしそうだと気付いた僕は、体が持たないのもあって、この後宮に住む文官の彼女達の力を借りて何とか頑張ったのだけれど……むりでした。
そんな僕が実家に逃げ帰ろうとして失敗したり、他にも色々あったり。
それでも結局アベルの元には自分の意思で戻ってしまう。
だって僕はアベルが、好きだから。
そんなこんなで、僕達の平穏で刺激的な日々は、続いていくようだった。
「おしまい」




