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《紫色編》28話:――


「なにはともあれ、その悪魔を探し出さないことには話しが進まないな。よし。その悪魔を確保するぞ」


ぶっちゃけ、それで総て解決するような気がするし。


「時にディレシアに質問だ」


「なんじゃ?」


「その悪魔は女の子なのか?それとも男なのか?」


「……質問の意図が見えんのじゃが?」


「だ・い・じ・な・こ・と・だ!」


「……おそらくメスだと思うが」


「マジか!?テンションあがる!よし!頑張って探すぞ!」


相手は俺を殺そうとしている不届き者で、おまけに悪魔だ。人間じゃない。


もしこれが男だったとしたら俺は悪魔を見つけ次第ぶっ殺していたところだろう。


が、しかし!相手が女の子!しかも美少女(未確認だが、流れ的に確定事項)って言うなら話しは別だ。


見つけ次第、拉致監禁調教肉便k(ry。


「ククククク」


何度も言うが相手は肉便――じゃなくて悪魔であって人間でない。ならば、そんな相手に人間の法が適用されないのは言わずもがな。

やりたい放題なわけである!


俺の魂を狙ったツケはきっちり払ってもらわなければなるまい。


なんか、当初の目的を忘れているような気がしないでもないが、まあ、いいだろう。


目先の欲に目が眩んだのさ!


小難しい問題なんかしるかっつーの!


俺は刹那的に生きてるんだ!


俺はガッと立ち上がる。


「俺はこれから悪魔――じゃなくて肉便器を探しに行く!ディレシア、情報ありがとな。正直、凄く助かった。おまえがいなかったら今頃、俺は途方にくれてるところだった。全部、終わったら必ず約束果たしにいく。じゃ――」


またな、と言いかけたところでディレシアの声が割って入った。


「またんか。その悪魔捜し私も付き合うぞ」


「え?いいのか?」


「むしろ、おまえは一人で探すつもりじゃったのか?あてはあるのか?どうせ、おまえのことじゃ、行き当たりばったりなことを考えておるのだろ?」


図星だった。


「毒を喰らはば皿までと言うしのう。私も最後まで付き合うぞ」


「その申し出は嬉しい。でも、えーっと、なんて言うか……ディレシア、おまえはなんでそこまで俺に力を貸してくれるんだ?」


当然の疑問だった。ディレシアに会うのは今回で2回目なのにも関わらず、ディレシアは俺に進んで力を貸してくれているように見えた。


それが俺には理解できない。そこまで仲がいいわけでもないだろうに。


「私はおまえが好きじゃ。して、好きな奴に力を貸したいと思うのは当然じゃろ?」


驚きはしなかった。それは態度でなんとなくわかっていたことだった。


「俺が好き――それがよくわかんないな。それはなんで?一目惚れかなんかか?」


記憶にあるかぎりディレシアと過去になにかあったということはない。まあ、俺の記憶なんて宛てに出来たもんじゃないが。だったら、一目惚れってのが妥当な所だと思った。


「野暮な質問じゃのう。その答えは否じゃ。そんな安っぽいものではない」


一目惚れとは違うらしい。


「だったら、なんなんだ」


「べつにどうでもよかろう。人が人を好きになるのに理由が必要か?」


「なるほど、理由なく好きになったのか」


人が人を好きになるのは、それこそ人それぞれだ。それは理屈じゃなくて感情論ならば、上手く人に説明するのは難しい。衝動的なものである。


「いや、違うぞ?」


「ちがうのかよッ!?」


納得仕掛けたのにあっさりと手の平を反された。


「ワカメ、おまえは残留思念というものを知っておるか?」


「残留思念?まあ、言葉のニュアンスとしてはなんとなく」


「話せば長くなるからのう。要点だけ絞って説明しよう。つまりはあの女の残留思念で未練なのじゃ」


「要点を絞りすぎててわかんないから。あの女って誰のことだよ」


「まあ、いずれ語ることもあろう。今は語るべき時ではない」


意味深なことを言って会話を終わらせようとするディレシア。正直、凄く気になった。


「それはなにか、伏線か!?伏線なんだな!?すっごい気になるわ!なにが、いずれ語ることもあろう、だ!一体何があったか教えろや!むしろ、教えてください!いいじゃーん!おーしーえーてーよー!」


駄々っ子のようにディレシアの身体をがくがくと前後に揺さ振った。


「お、あぁああぁあ……や、やめぇい、揺さ振るでない。そう揺さぶられては、さっき食べたものが――……おぷっ、げろげろげろげろ」


「ぎゃああああ!女の子が口からナポリタン戻してんじゃねー!」


「これが噂のゲボリタンじゃ」


「べつに噂になってないし!上手いことも言えてないから!してやったりな顔してんじゃねぇよ!」





なんとかゲボリタンの後始末を終えてファミレスの外へ。若干、疲れた。それにしても騒ぎを聞き付けてやってきた舌ったらずな店員が、まさか貰いゲロしやがるとは……流石に焦ったのは内緒だ。


「で、その悪魔はどこにいるんだ?」


「まあ、そう慌てるでない。ちょちょいと探ってみる」


すっと目を閉じてディレシアは黙り込む。


精神統一しているのか、なんなのか。それで居場所がわかるのか?なんて普通な疑問を口にしそうになったが、それはぐっと飲み込む。


相手は一般常識が当て嵌まる奴ではない。はっきり言われたわけではないけれど、ディレシアは非常識が常識の世界の住人であることは何とは無しに理解していた。


「ふむ」


ディレシアはゆっくりと目を開ける。


「居場所がわかったぞ」


「もう?随分と早いな」


「こんなことにわざわざ長く時間をかける必要もあるまい。さっさと終わらせて、さっさとデートじゃ」


「ははは、まあ、それもそうだな」


少し呆れ気味に笑っていた。


俺とディレシアは悪魔の元へと歩きだす。





正直な話し。万事滞りなく上手く行き過ぎていた。


どこかで詰まる事なく、とんとん拍子で物事がここまで進んでいた。


俺自身も上手く行き過ぎている事に一抹の不安を感じていた。


だから、だろうか。


――最後の最後で……。




「しゃーねーから、てめぇの魂は還してやるよ。だけどな、てめぇの記憶は――」


"悪魔"は端から見たら蓑虫にしか見えないような超髪の中に右手を突っ込んだかと思うと、さっと、その超髪の中から刃渡り30?程のコンバットナイフを取り出し構えた。


「還してやらねぇ」


あからさまな凶器に反射的に身構える。


とはいえ、ディレシアの言葉通りなら奴は今、人間以下の非力な存在に成り下がっているという。


刃物一本でどこまで出来るというのか。でも、まあ痛いのは嫌だ。

どうでる?どうくる?"悪魔"が次にどんな行動にでようとも対処できるように油断なく身構え、神経を尖らせる。



だが、俺のそんな考えとは裏腹に事態はまったくの斜め上へと動いた。


"悪魔"が動く。


右手に構えたコンバットナイフをくるりと回して逆手に構える。



……そして、そのナイフを――。






グサリと






「さよなら」






"自身"の"心臓へ"と"突き刺した"。





「……は?」


まったく予想外の展開に俺の口からは間の抜けた言葉がポロリと漏れる。




ぐらりと"悪魔"の身体が揺らぐ。


それはまるで糸の切れた操り人形のように


がくりと


地面に倒れた。


あまりの事に言葉がでない。


なんだこれ?どうゆうことだ?なにがどうなって?


――し、死んだのか……?


頭の中をぐるぐると無意味な思考が巡って行く。


そうこうしている間に


悪魔の身体が黒く澱んだ闇に包まれ、そのまま地面に染み込むように消えていく。


カランと


悪魔のいた場所に一本のコンバットナイフだけが無造作に転がっていた。


「お、おい……ッ!ディレシア…」


隣にいたディレシアに振り返る。


「……してやられた」


ディレシアは苦虫をかみつぶしたような表情で呻く。


「まさか、自殺しようものとは……流石に私も反応が遅れてしもうた……すまん」


――すまん……。


ディレシアは何について謝ったのか?


「……俺はどうなるんだ?」


「まあ、安心せい。あれが消えたことで奪われた魂は本来、有るべき所――つまりはワカメ、おまえの元へと戻る。これでおまえはもう二十歳で死ぬことはなくなった」


「そうじゃない!そんなことはどうだっていい!俺が……ッ!俺が聞きたいのはそのことじゃない!」


俺が何故、今、ここにいるのか。


俺のことを好きだと言ってくれた、あいつの気持ちに正面から答えたかった。


だけど、それは心の中に漠然と存在する取っ掛かりに邪魔された。


俺はその取っ掛かりを思い出すために今こうして、ここにいる。


それなのに


「記憶はッ!?あの悪魔に関する記憶はどうなるんだ!?」


「……記憶に関しては残念じゃが――」


「……ッ!?」


――もう、もとには戻らん……。



ただ厳しい現実だけがそこにはあった。


長らくサボっていましたが、やっとまとまったので再開です

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