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《紫色編》26話:――


「いらったいまってー」


待つの!?と、ツッコミは心の中だけに留めて、舌足らずな店員に案内されるまま、席につく。


やってきたのは馴染みのファミレス。ここにくるのも一ヶ月ぶりだ。舌足らずな店員も相変わらずだった。ここは変わらないな。


ここにきたのは勿論、ディレシアを探してだ。


「ごちゅうもんはおきまりでっとか?」


席に着いてしばらくすると、呼んでもないのに舌足らずな店員が注文を取りに来た。


決まってないからと言って追い返すのは可愛そうだったので、注文することにした。


「お子様ランチを一つ」


なんかメニューの下に小学生限定とか書いてあるが気にしない。俺はお子様ランチが食べたいんだ!


案の定、舌足らずな店員は苦笑いを浮かべて困り気味だったけど、俺の向かい側に座っている奴を見ると、なるほど納得したように注文をスルーした。


「あとはなぽりたん大盛りでチーズは多めじゃ」


注文をとりおえた店員が引っ込み、しばらくして運ばれてきたお子様ランチとなぽりたん。


店員は自然な動作でなぽりたんを俺の前、お子様ランチをディレシアの前に置くとさっさと行ってしまった。


「失礼だとは思わんのかの?」


「思わないと思うぞ」


「私はこう見えてもおぬしらの遥か年上なのじゃぞ?」


「見た目がともなってなければ年齢なんてたいした意味はない」


二人無言でなぽりたんとお子様ランチを取り替えた。


「おまえ、実はこのファミレスの精霊かなにかか?」


「急にどうしたんじゃ?わけワカメじゃな」


「期待薄できたのに、こんなあっさりエンカウントしていいのかって話しだ」


「偏に運命じゃ」


ディレシアはそう一言でまとめると話しを切り上げた。


一ヶ月ぶりにあった金髪ワカメの蒼い瞳の幼女――ディレシアは相変わらずだった。


なぽりたんにフォークを突き刺し、起用にくるくると巻き取り口に運んでいくディレシア。


俺もピラフの小さな山の上に突き刺された旗をポケットに仕舞いそのピラフを崩しにかかった。


「この一ヶ月間どうであったか?」


不意に話しを切り出すディレシア。何をしていたか?とは聞かなかった。


「めちゃくちゃ辛かった」


「ほう」


ディレシアはニヤリと笑うと、その蒼い瞳で俺をいぬく。その瞳には有無を言わせぬ力があった。


そうだな、今更、嘘ついたってしかたないな。


「実は結構楽しかった」


「それはよかったのう」


「おまえはこの一ヶ月なにしてた?」


「私か?」


「ああ」


「ふむ。とくにはなにもしてなかったのう」


「そうか」


「のう、ワカメ」


「なんだ?」


「私に聞きたいことがあるんじゃろ?」


基本的になんでもおみ通しだな。


「『紫の鏡』についてなんか知ってるだろ?」


「まあ、知っておるぞ。私の専門分野じゃからのう」


専門分野?


「おまえは『悪魔』について知っておるか?」


「悪魔?」


何故だろうか。どこかで聞いたことがあるような、ないような。


「まあ、人外の化け物の一種じゃ。奴らは人間の魂を糧に生きておる」


「それが紫の鏡と何の関係があるんだ?」


「おまえが調べた紫の鏡とは如何様なものであったか、覚えておるか?」


「それは勿論。20歳になるまでこの『紫の鏡』って言葉を覚えてると死ぬってやつだ」


「そうじゃな。それであっておる。おまえは20歳になる前にその言葉を忘れなければ死ぬことになるじゃろう」


これまたヘビーだな。そうか、なるほど、俺はこのまま時間が経てば20歳になると死ぬのか。


つまり、俺にこの言葉を植え込んだ誰かは俺を殺したいってことか?


誰が?何故?何のために?


疑問は尽きない。なんで俺を殺したいんだ?


「疑問は多々あろう。何故、自分が?誰に?なんのために?とな」


「回りくどいのは嫌いだ。さっさと教えろや」


「くくく。まあ、そう、焦っても仕方なかろうて。どうじゃ?おまえもなぽりたん食べるか?」


ぐいっとなぽりたんを絡め取ったフォークが突き出された。


「……あぐ」


無言でそれに食いついた。


「……!?こ、これは!なんたるなぽりたん!?口の中に広がるまさに無敵のなぽりたん!全身駆け巡るまさに至高のなぽりたん!こんなもの食べていたらただのなぽりたんになってしまうじゃないか!今、思ったんだがなぽりたんって実は萌えキャラなんじゃね!?語尾にたんがついてるやつは漏れなく萌えキャラだって誰か言ってなかったか!?ナンバーテンだぜ!……はい。リアクション終わり。なぽりたんはいいから話を……って」


「れろれろ」


「なにやってんすか?」


見ると、何故かディレシアはフォークをれろれろと音をたてながらなめ回していた。


「ちょっくら味見じゃ」


「いや、なんの味見だよ」


「ワカメの味見じゃ」


それはおそらく海藻を指している言葉ではないだろう。


「うむ。癖はあるが塩気が効いていて、なかなかに私好みの味じゃ。どうじゃワカメ?私に喰われてみんか?」


お決まりのニヤニヤ顔を向けるディレシア。


「まあ、そのうちな」


「楽しみにしておるよ」


「んで、話しを戻すが。流れからして俺を殺そうとしてるのはそのおまえが言う悪魔なんだろ?悪魔の人間の魂を糧にして生きてるって性質上、つまりは俺を殺して魂を補給しようとしてる」


「そこまで理解出来ておれば十分じゃ。悪魔というものは言わば抜け殻じゃ。奴らには魂が宿っておらん。じゃから他人の魂を奪い、自分のものにせねば生きていけんのじゃ」


「なあ、そもそも魂って具体的になんなんだ?抽象的すぎてイマイチよくわからない」


「その存在そのものじゃ。それがそれであるためにあるもので、それがそこにそれとして存在するために必要なもんじゃ。魂は存在の全てじゃな」


魂は源であり、血であり、記憶である――だそうだ。


「しかし、なんでこんな手口がまどろっこしいんだ?」


「まあ、奴らにもルールがあるんじゃよ。それにのう魂はそう簡単に手に入るものでもないんじゃよ。対象をただ殺してもその魂は壊れて使い物にならなくなってしまうのだ」


つまりは、回りくどい方法で確実に手にしなければいけない。


「その手段のひとつがおまえにかけられておる紫の鏡の呪いというわけじゃ」


「詳細希望」


「まさか、タダでとは言わんじゃろうな?」


「これあげる」


言って、差し出したのはお子様ランチにセットでついていたちっさい飛行機の模型。テーブルにおいて後ろに引っ張れば前に進み出すちょろきゅう仕様のものだ。


「いらん」


「そうか?なかなかイカしてると思うんだけどなぁ」


「飛行機は嫌いじゃ」


「まあいいや。で、どうしたら教えてくれるんだ?」


「そうじゃな。一ヶ月前にゆかりに邪魔されて出来なかったことがしたいのう」


諸々の事情により先に紫色編を完結させることにしました。あしからず

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