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《灰色編》25話:しばしの間このままで…。よろしくお願いします?


「さて、いつまでも遊んでないで話しを進めますわよ」


美羽子姉様が言う。珍しくちょっと真面目、


「目的は大きく分けて二つ。まず、めーちゃんの首輪を外すこと、次に灰星を潰す――それだけですわ」


纏めると意外と簡単なもんだな。


「なあ」


そこで、不意に千亜が口を挟んだ。


「眼鏡はその灰星ってやつの幹部なんだろ?だったらなんで、こんなとこで自分の組織を潰す算段に加わってんだ?」


千亜の言うことは今更だが、最もだ。だいたい、ついさっき「てめぇら全員ここで血祭りだぜ!ヒャッハー!」って言ってたのに、どんな風の吹きまわしなんだろうか?


「後藤さん。今更です。そんな細かいことばかり気にしてるから背が伸びないんですよ。ヒャッハー」


「うるせぇ!背が伸びねぇのは関係ねーだろ!」


「声が大きいですよ。ちょっとしたジョークなんですから、そういきり立たないで下さい幼女――じゃなくて後藤さん。ヒャッハー」


「てめぇ!幼女って言うんじゃねぇ!喧嘩売ってんのか!?あぁん!」


ぎゃーぎゃーと喧嘩をおっぱじめるツルペタが二名。この二人、相性はよくないみたいだな。まあ、委員超と相性のいいやつなんて滅多にいるもんじゃないけど。


「ほらほら、ごっちゃんにきょーちゃん。喧嘩はそこまでですわよ」


仲裁に入ったのは意外なことにいつも場を掻き回す美羽子姉様。


予想外。まさか、これは……!?


俺に場を掻き回せという美羽子姉様からの独特の合図なのでは!?


そうだ!そうに違いない!俺の明晰過ぎる脳みそがそう判断している!


ならやってやるぜ!


「ヒャッハー!」


勢いよく千亜に向かって飛び掛かる。


「なっ……!?ワカメ、てめぇ!?」


「千亜ちゃーん!俺の胸に納まって!」


目標の千亜はもはや俺の間合いの中!いける!貰ったぜ!


ガシッ!


「あらあら、めーちゃんったらどうしたんですの?急にワタクシの胸に飛び込んでくるなんて、そんなにワタクシが恋しいんですの?」


「美羽子姉様!?」


目の前にはやたらとやわらかーな感触。これは、まさか!?


「おうああああああああいあああああああいあああお!!?!やめええええええぇぇぇぇぇ!!!むねはいやあああああああああ!!!」





「とにもかくにもめーちゃんの首輪を外さないことには、どうしようもありませんわ。そこで、きょーちゃん、現在の灰星はどんな感じになってますこと?」


「貴女を始末するために討伐隊を編成しています。各地に伝令を出して幹部の収拾。灰星はその全勢力で貴女と全面戦争の構えです。その先発隊がさっきのゴミ共で、私は本隊が到着するまでの足止めとして貴女に対峙しました」


「めーちゃんの首輪のことを引き合いにだして、交渉する気はないんですの?」


「わかりません。そんな話は出ませんでしたが、早瀬それに父は何を考えているかわかりません。何かしらの動きがないとも限らないですね」


「そうですわね……奴らにとって首輪は切り札だと考えて間違いないですわ。戦闘中、いきなりめーちゃんの首に刃物を突き付けられて脅されてはワタクシは戦いをやめる他なくなりますからね」



「あ、それとですね。多分、後、一時間も経たない間に灰星の本隊がここの場所を割り出して押しかけてくると思いますよ」


なんて重要っぽいことを委員超はしれっと言った。


「それって結構やばくね?」


「ヤバめですね」


言って委員超は立ち上がる。


「宛てはありませんが私はさっそくワカメの鍵捜しに行くとします」


「期待してますわよ、きょーちゃん」


美羽子姉様は立ち上がった委員超に笑顔を向けた。


「任せてください、美空さん」


そう短く返して、委員超はさっさと部屋を出て行ってしまった。


人が一人減っただけで何と無く静かになった気がする。


「では、ワタクシ達もきょーちゃんが鍵を持ってくるまで逃げ回りますわよ」


「美羽子姉様、聞くかぎり狙われてるのは美羽子姉様一人だけのようですし、一人で逃げたほうがいいのではありませんか?美羽子姉様なら複数人で逃げるより単独で逃げたほうが効率がいいと思うんですが?」


俺それに千亜の力なんて美羽子姉様に比べれば微々たるものだ。


正直、美羽子姉様と一緒に行動するとなれば足手まといにはなっても、役に立つことはあまりない。


ならば、美羽子姉様に単独行動してもらったほうが効率がいい。


幸に狙われてるのは美羽子姉様一人のようだし。


まあ、ぶっちゃけ美羽子姉様と一緒にいたくないだけなんだけどな。


「めーちゃん」


「はい?」


その時、不意をついて、美羽子姉様が俺に抱き着いてきた。


「うぇあ!?え、ちょ!?み、美羽子姉様ッ!?」


「……もう、ワタクシはめーちゃんと離れたくないんですわ」


俺の胸の中で美羽子姉様が静かに呟いた。


「……大きく、なりましたわね」


背中に回った美羽子姉様の手にぎゅっと力が篭る。


「…………」


じんわりと俺の身体に美羽子姉様の温もりが染み込む。


美羽子姉様なのに凄くドキドキする。


――急にこんな態度は卑怯だと思う……。


ついでに千亜の刺すような視線が凄く痛かった。


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