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《紫色編》番外編:漢なら力で語るフライデー!

ワカメと悪魔はコメディーです!


――金曜日、朝――。


赤子と一緒に登校中。それなりに余裕をもって家を出たので、急ぐわけでもなく、ゆるりと春のうららかな陽気に包まれた道を歩いた。さて、五月は春か、否か、なんて些細で微妙な疑問も生まれたが、気にしないことにした。


平和だなぁ。


だが、しかし、その平和は長くは続かないわけである。


異変に気づいたのはしばらく歩いて、駅に着いた頃だった。


僅かだが視線を感じた。


その視線は電車で移動している間も続き、そして、電車から降り、駅のホームから外に出たところで一気に増える。


「恵」


「なんだ?」


「私は巻き込むんじゃないわよ」


赤子はこれから起こるであろうことを予知してか、そんなことを言った。


赤子さんもどうやら、この視線に気がついていらっしゃるようです。


この殺気とか、嫉妬とか、妬み、怨み、憎しみ、他、ありとあらゆる不の念が入り混じった視線。


まぁ、勿論、その全てが、全て俺に向けられているか、どうか、なんてことはいわずもがな。


原因は当然、赤子である。


この野郎は私を巻き込むなとか言って起きながら、何故に家を出てからずっと、そして、今も俺の腕を自分の腕でがっちりとホールドして離しやがらないのでしょうか?


傍から見たら、朝っぱらからイチャついているウザったいバカップルだった。


……せめて学校に着くまでは大人しくしてくれてるといいのだが……なんて願ってはみたが、その二秒後には、その願いが届かなかったことを知った。


「死にさらせぇぇぇ!!」


遂に痺れを切らした一人の男子生徒が俺に飛び掛かってくる。


しかし、何故、俺は見ず知らずの野郎に死ねといわれなければならないのか?


無償に腹が立ってきた。こんな理不尽、納得いかない。


「てめぇが死に晒せやッ!糞野郎ぉ!」


俺は赤子の腕を振りほどいて、待ち構える。飛び掛かってくる男子生徒を前にしても避けないし、かといって受け流すこともしない。真っ正面から受け止め、男子生徒の脇下へ頭を差し込み、両腕ごと胴体を抱え込んでそり投げる――。


「おらぁぁぁ!!」


《北斗原爆/ノーザン・ライト・スープレックス》である。完璧にきまったそれで信者は白目を剥いて気絶してしまった。


とりあえず一人目、ノックアウトだ!





キーンコーンカーンコーン


一時間目始まりの鐘の音とともに俺は自分の机に突っ伏した。


朝っぱらから一汗かいた。あのあと、次々と襲い掛かってくる信者どもを片っ端から俺の一0八種類あるプロレス技でマット――もとい、アスファルトの地面に沈めてやった。


素人相手だと技がかけやすいから愉しくてしょうがない。俺はレスラーでもなければ、プロのレスラーでもないので、手加減なんかしてやらない。


加減を間違えて関節技を極めた奴の腕とか、足が変な方向に曲がったりもしたが、向かってくる野郎が悪い。だいたい、れっきとした正統防衛だ。


まあ、おそらく、一時間目、終わりの休み時間には完全回復で復活して、また俺に襲い掛かってくるだろうから、たいした問題じゃない。


やっぱり、二度と同じ真似が出来ないように首と胴体を離したほうがいいのだろうか?よし、今度試して見よう。


とりあえず、今は来たる闘いに備えて仮眠をとることにしよう。それに、考えて見れば昨日は寝てなかったしな。





「死にさらせぇぇぇ!!」


授業終了のチャイムとともにクラスの男子たちが飛び掛かってきた。


叫んだ奴をよく見れば、俺が朝、一番初めにノックアウトした信者だった。


懲りない野郎だとおもいながら、飛び掛かってくるそいつを朝と同じように受け止めようと待ち構えるが、そいつも馬鹿ではないらしく、学習能力があった。俺の動きを予想し、ピタリと動きを停める。


「今だッ!」


信者が叫ぶと同時にゾクリと悪寒が走った。


刹那、思想するより速く身体が反応して動く、身体を半回転させて右手の甲を自分の背後に振り抜いた――。


(せい)ッ!!」


ごっ!


鈍い音と確かな手応え。


後ろを見ると信者(二人目)がぶっ倒れていた。


当然だ。何を隠そう俺は後ろにも目が付いているのだ。故に、背後から飛び掛かってきた信者(二人目)の顎に裏拳を直撃させることが出来た。決して、たまたま、運が良かったわけじゃないよ?


「隙だらけだな、ワカメ野郎!」


仲間がやられても眉一つ動かさず、今度は三方向から信者(一人目)含め三人の信者が飛び掛かってくる。


「……隙?違うな、これは余裕というものだ!」


咄嗟に近くにあった椅子を右手と左手で一つづつ掴むとそれぞれ、右と左からくる信者に投げ付け、残りの信者(一人目)に狙いを定める。前に出る。


「トウッ!」


数歩の助走で信者(一人目)に向かって、すれ違うようにして大きく跳ぶ。すれ違いざま空中で相手の首に自らの片腕を巻き付け、そのまま床に倒しながら信者(一人目)を背面から床ヘ押し倒す。


《空中首折り落とし/フライング・ネックブリーカー・ドロップ》。ちなみに、ネックブリーカーと混同されがちだが別の技だ。


俺はさらに、そこから、倒れた信者(一人目)をひっくり返し俯せにすると、相手の片足を両足でロックして足首を極め、そのまま覆いかぶさると同時にフェイスロックで顔面をがっちりホールドして締め上げる。


《S・T・F/ステップオーバー・トゥホールドウィズ・フェイスロック》。原型はルー・テーズがクロスフェイスの呼称で用いた複合関節技。


「ほーれ、ほれ」


「うごぉぉぉ!?」


手加減は無し。力の限り締め上げると――。


ゴキリ


それはまるで、骨が折れてしまったかのような嫌な音ともに信者(一人目)の首がありえない方向に曲がった。


「……」


だらりと体から力が抜ける。


ふぅー、どうやらギブアップどころか意識まで奪ってしまったようだ!


すかさず残り二人に目を走らせる。


信者(三人目)は既に体勢を立て直しこちらに向かってきている、もう一方の信者(四人目)は今、調度立ち上がってきたところだ。


俺は床を蹴り信者(三人目)との距離をつめる。


「てぇえい♪」


ちょっとかわいらしく顔面にエルボーをくらわす。


よろけたところで俺は信者(三人目)を正面から抱え上げて背後に落とす、派手に机やら、なにやらを巻き込んだが気にしない。てゆーか、さっきからこんなだしな。


打ち所が悪かったみたいで信者(三人目)は頭から血を流しながら気絶してしまった。


これで三人目、ノックアウトだ!


「さとるぅぅ!!貴様よくもさとるをッ!死ねぇぇぇ!!」


振り返ると信者(四人目)が目の前に――。


ごっ!


信者(四人目)の右拳が俺の鳩尾に見事にジャステミート。


――いや、だからどうしたということでもないんだが……。


「そんな拳で俺を倒そうなんて七年早いんだよ!」


「なんだと!?」


俺に一撃きめたことは褒めてやる。まあ、俺を相手に一撃ぐらい簡単に決まるんだがな。


その健闘を称えて、とっておきでマットに沈めてやる!


ガシッ!


俺は相手の右手首を左手で掴み、素早く相手の背後に回り込む。さらに背後から右手を回して相手の左手首を掴み、相手の両手を相手の前で交差させる。


重用なのは抱え上げるタイミングとブリッジワークの角度。


そのクラッチを保ったまま、相手の股下に自分の頭を差し込み、肩車のように持ち上げる。


「くらえぁぁぁ!!」


そのまま後方にブリッジしながら倒れ込み、相手の後頭部を直に床に叩きつける。


《日本海式竜巻固め/ジャパニーズ・オーシャン・サイクロン・スープレックスホールド》。クロスアーム式の肩車式バックドロップホールドだ。


相手は両腕を取られたままで叩きつけられるため、受け身が不能な状態になる。


「うごぁぁぁ!?」


信者(四人目)の断末魔の叫び声が教室に響いた。



++++++++++++



――4時間目――。


昨晩はしっかり眠ったというのに、どうしてなのか、国語教師の桃澤の声を聞いていると、物凄い眠気に襲われた。絶対、あのジジィの声には催眠効果があるわ。


眠気って最強だ。例えるならラスボスより強い隠しダンジョンのボス並に強い。


まあ、私はそんなものに屈するほど弱くはないから問題ないのだけどね。





眠りから覚めると既に授業は終わっていて昼休みになっていた。


……一応、言っておくけど私は自ら眠りについたのであって、決して!眠気に負けたわけじゃないんだからね!


と、そんなことはどうでもいいとして……4時間が終わっているとなれば、今は昼休みなのよ!


「フフフフフ……」


昨日は邪魔が入って出来なかったけど今日こそは恵に「はい、あーん」をしてやるんだから!


「そんなわけで恵!――って、あれ?」


呼び掛けて気が付く。見れば前の席にいるはずの恵がいなかった。





「……いないわね」


恵を捜して学食まできてみたが、やっぱり恵はいなかった。


……ちっ、あいつはなんで私に断りもなくどっかいってんのよ。


まったく、どこに行ってるっていうのよ。あいつ、まだ、この学校に通うようになって二日目だし、それで、どこか行く宛てがあるとは思えないし、それなら学食か売店にいると思って来てみればいないし…あー、頭にくるわね!


「そんな怖い顔をしてどうしたのじゃ?」


「は…?」


不意に声をかけられて振り向くとそこには、金色のウェーブのかかった長い髪に、宝石のような蒼い瞳の外国産の少女が一人。


「…なによ、あんた。なんかよう?」


「私は『あんた』などといった名前ではない、ディレシアじゃ」


「あっそう、だから?」


ディレシアか、どこかで聞いたことのある名前のような気が……。


「おまえはなかなか性格が悪いのう……」


「うっさいわね。私は今、お子ちゃまに付き合ってる暇はないのよ。どっか行きなさい。」


いったいなんなのよ、このロリッ娘は……面倒ね。


「まあ、それもよかろう。ではまたの」


意外にもあっさりとロリッ娘は踵をかえすとすたすたと、どこかに行ってしまった。


いったいなんだったのかしら?


まあ、いい、今は恵を捜すのが先決だ。



++++++++++++



その日は一日中、上の空で気が付けば昼休みになっていた。


「…昼、か」


ぽつりと呟く。


今日の朝――いや、昨日の放課後のあの時から、気付けば私は彼のことを考えていた。


蘇ってくるのは、あの感触――。


「う、うわぁぁ!?」


「ゆ、ゆかりお姉様!?急にどうなさったのですか!?」


「え……?あ、ああ、いや…な、なんでもないぞ!?」


「それに顔が真っ赤です!どこかお体の調子が悪いのではありませんか!?」


「だ、大丈夫だ!どこも悪くはないぞ!?」


――いかん、落ち着け私――。


見ろ、私の奇怪な行動で、取り巻きの生徒達が不振な目を向けているじゃないか。


ここは、いつも通りに……――。


考えて、ふと気が付く。


また、『いつも通り』をするのか?


周囲の目を気にして、自分のやりたいこともできず、優等生を演じるのか?


「ゆかりお姉様、今日のお昼はどちらで召し上がりますか?」


――違うだろ、私。そうじゃないはずだ――。


「今日は天気もよろしいようですし、中庭などで召し上がってはいかがですか?」


――だって、決めたはずだ。私はこれから我が儘で自分勝手になるって――。


がたん


私は勢いよく立ち上がった。


「……ゆかりお姉様?」


「すまんな。今日は君達と昼は一緒に食べない。やはり昼食は恋人と二人きりで食べるものだろ?」


「え……!?それはどういう――」


言い終わる前に私は走り出した。


取り巻きの子達がざわめき始める。


それを背中に私は走る。


――さよならだ――。





よくよく考えてみたら私は彼のことを何も知らなかった。


「どこにいるんだろうか……」


教室を飛び出してすぐ私は途方にくれていた。


同じ学校の生徒だということはわかるが、それだけしか知らなかった。後は名前と我が儘で自分勝手な性格だということぐらいだ。


何年生の何組かも、携帯の番号もアドレスも何も知らない。どこに行けば会えるのかもわからず、かといって連絡先もわからないわけだ。


昨日、出合ったばかり相手だ。それもしかたないことかもしれない。


それでも、私はそんな出合ったばかりの相手と……――。


……流石にやり過ぎただろうか?いや、でも、恋に時間は関係ないとは言うし……。


実際、私にはよくわからなかった。


彼のことを考えると胸が高鳴った。昨日のアレを思い出せば、顔から火が出てるんじゃないかと心配になるほど熱くなった。


だが、果たしてこれは本当に恋というものなのだろうか?


今まで感じたことのない感情ではある。


だけど、やっぱりわからなかった。


「……うぅ」


思わず唸ってしまう。


「そんなに難しい顔をしてどうしたんじゃ?」


「ん……?君は、確か……ディレシア――だったか?」


そこにいたのは金色のウェーブのかかった長い髪に、宝石のような蒼い瞳の外国産の娘が一人。


「うむ、ようわかったのう、青夜ゆかり。私がディレシアじゃ」


「ああ、君はなかなかの有名人だからな」


「あまり目立つのは好まんのじゃがのう…これも私の美貌故か、難儀なものじゃ」


確かにかわいらしいのだが…美貌と言うには少しニュアンスが違うような気がした。


「それで、私になにか用事か?」


「うむ、少し助言をしてやろうかと思ってのう」


「助言?」


「人を捜しておるのだろ?」


言ってディレシアはニヤリと不適に笑った。





ディレシアに言われ学食にやって来た。案の定、少し捜しただけで目的の人を見つけた。


「末継」


「ん……?あんたは確か…青夜ゆかり?」


「ああ、よくわかったな」


意外にも末継赤子は私のことを知っているようだ。まあ、私も末継のことを知っているのだからがありえない話ではない。


「それで、なんのよう?」



++++++++++++



「実はワカメヘアーのやつを捜しているのだが、どこにいるか知っているか?」


ワカメヘアーと聞かれ真っ先に思い浮かぶのは勿論、恵だ。


だが、まさか、あの青夜ゆかりが恵のことを捜しているはずはないだろうし、となると……――。


脳裏に過ぎるのはついさっき出会った、ロリッ娘。確か名前はディレシアだったかな?


考えて見ればあのロリッ娘のヘアースタイルも恵と同じで、いい具合に茹だっていた。


つまり、この青夜ゆかりが捜してるやつはさっきのロリッ娘のことだろう。


「そいつなら、ついさっき会ったわよ」


「本当か!?」


別に隠す必要もないので教えてやろう。青夜ゆかり、感謝しなさいよ。私が人に親切にするなんて珍しいんだから。


「ええ、そっちの方に歩いてったわ」


言って、青夜ゆかりがきた反対方向である、ついさっきロリッ娘が歩いて行った方向を指差した。



++++++++++++



「それは本当か!?」


ディレシアに言われて来てみて正解だった。確かに末継赤子は彼と会ったらしい。ディレシアには今度、会った時にでも礼を言わねばならんな。


「ええ、そうよ。感謝しなさい」


「ああ、本当に助かる。ありがとう」


「それはそうと、私も行き詰まってたところだし調度いいわ。聞きたいことがあるんだけどいいわね?」


「ん、なんだ?」


「あんたが捜してるやつとは別のワカメヘアーのやつを捜してるんだけど見なかった?」


――ワカメヘアーのやつ――。


そういわれて、まず、思い浮かぶのはやはり彼だった。だが、末継が捜しているのは私の捜している相手――つまり、彼ではない誰からしい。となると、思い浮かぶのはついさっき会ったディレシア。


考えて見ればディレシアのヘアースタイルもいい具合に茹だっていた。つまり、末継の捜している相手はディレシアのことだろう。


「ああ、それならついさっき会ったぞ」


「それ、本当!?ちょ、それどこにいたのよ!?」


「え、あ、ああ、あっちだ」


そう言って、私は自分が来た方向を指差す。


「わかったわ!青夜ゆかり!あんた意外といいやつね!」


「いや、君もなかなか、良いやつだぞ」


「そう?それじゃ!機会が合ったらまたあいましょ!」


言うや否や、末継は私の指差した方向に走っていってしまった。


「ああ、またな」


なんとなくだが、彼女とは友達になれそうな気がするな。


まあ、それはいいとして、私も行くとしよう。


そうして私は末継とは反対の方向に歩きだした。


今回の番外編、ご期待にそえることは出来たでしょうか? 番外編のリクエストやら、ネタやら、要望はまだまだ募集中なので気軽によろしく、お願い申し上げます!

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