2話:ただ単純に説明がめんどくさいわけじゃないわけがない
「後藤さん。意味がわかりま――」
「ちょ、まった!」
「……あ、えーと……どうしたんですか?」
「んあ、ワカメ、てめぇーは黙ってろ。なんか色々と説明しなくちゃならなくなる気がする」
そりゃあ、いきなり悪魔ですだとか魂くれとかいわれたら一般人としては色々聞きたいことが出て来るのは必然だろ。でも、後藤に話す気がないなら仕方がない。いろいろ話してもらいたかったのだが。残念だ。
――なんて素直に納得する俺はいません。
「そういわずに教えてくれませんか?」
普通にお願い。
「やーだー。めんどくさい」
駄目か……。
「ゴダゴダ言ってねぇーでとっとと説明しろや!」
強気で押してみる。
「あぁん!?喧嘩売ってんのかてめぇ!!!」
何となく予想通り。
「後藤さーん。そんなこといわずに説明してくださいよー」
下手に出てみる。
「……ッ!?……キモッ!」
そこまで引かれると少し傷付く。
「俺とチアちゃんの仲だろ。水臭いこと言わずに説明してくれよ」
フレンドリーに接してみる。
「……!?な、ななな、なま、なま、なまなまなま、な、まえで呼ぶんじゃねぇ!!!」
微妙に地雷だったようだ。面白いのでこれから名前で呼んでやるとしよう。
「つべこべ言ってないでとっとと説明しろ。拒否することは許さん」
命令してみる。
「な――」
「黙れ!誰が話していいと言った!貴様は俺の許しがない限り言葉を発することは許されていない!」
「は――」
「黙れと言っている!貴様は人間の言葉も理解できないほど退化してしまったのか!?猿以下のゴミクズが!この薄汚い雌豚が!」
「ぐぅ…………」
「何を黙っている!俺は説明しろと言ったんだ!この雌豚が!とっと説明しろ!それともなにか?やっぱり人間の言葉がわからんか!?まぁ、雌豚には理解できないのは当然だな雌豚にはなあ!雌豚には理解することは不可能だとは思うが一応言ってやる。説明しろ!」
「て――」
「誰が話していいと言ったぁ!!!」
あー、すっきりした。普段生意気なアンポンタンを虐めるのは本当に楽しいね。いや、まったく。
もう、説明とかどうでもよくなってきた。
「う、ううぅ……」
「ん?どうかしましたかチアちゃん?」
「う、うあわああああああ!!!!」
何を思ったか突然立ち上がり走りだす後藤。
一体どうしたんだろう?
そのまま教室を飛び出す直前。
「ワカメ!てめぇ覚えてれよ!今夜てめぇの家に行くきゃらな!」
なんて、捨て台詞を噛みまくってどこかに走り去っていった。
『覚えてれよ』に『行くきゃらな』か……案外可愛いところもあるんだな。
そして、そんな可愛い後藤を俺がそのまま行かせるはずがない。
追いかけようと立ち上がった時ちょうどキーンコーンカーンコーンと昼休みの終わりを告げる鐘がなった。
でもそんなの関係ねぇ!
小島さんあんたすげぇよ。こんな名言遺すなんて本当にすげぇよ。
そんな感じでよしおさんを崇めつつ教室を飛び出した。
「ちょっと、ワカメどこいくの!?授業始まるわよ!?」
やっほー、捕まっちまったよー。
「えーと……どうしたんですか?2年6組委員超の肱岡鏡花さん。今日もチャームポイントの短いツインテールがかわいいですよ」
「何でそんな説明口調なの?」
「黙れ!初登場が!」
「それに委員長の長は超じゃなくて長よ」
「黙ってろ!委員超が!」
「後、私のチャームポイントはツインテールじゃなくて眼鏡よ」
「淡々と受け答えしてますが、顔真っ赤ですよ。どうしたんですか?眼鏡が可愛い肱岡さん」
「別になんでもないわよ」
「また赤くなってきましたよ。熱でもあるんじゃないですか?」
肱岡の顔を両側から手で挟んでグイッと顔を近づける。そのまま額と額をくっつけた。
「うーん。やっぱり少し熱いですねえ」
「ワカメのが冷たいだけよ」
「まあ、後二時間で学校も終わりですし今日のところは大丈夫でしょう」
額を離して距離をとる。
「少し心配ですし今日は早めに休むことですね」
「大丈夫よ。私は生まれてこのかた病気になったことなんてないもの」
「そういわずに。早く寝れば楽しい夢でも見られるかも知れませんよ。憧れの誰かとの甘い一時とか」
「………………確信犯め」
「なんのことやら」
「おい、おまえら」
唐突に後ろから声をかけられて振り返る。
そこにいたのは担任の田中姫子。
「いつまでも廊下でくっちゃべってないで教室入れ。授業始めるぞ」
そういって田中は俺らの返事も聞かず教室に入っていく。
「だそうよ。もし先生のいってる意味が理解できているとしたら素直に聞いたほうがいいよ」
言うや否や返事も聞かず肱岡は教室に入っていくと思われたのだが――
「ああ、そうそう」
肱岡は立ち止まって振り返った。
「放課後に話があるから帰っちゃ駄目だからね」
そういって肱岡は教室に入った。
残された俺は、いまいち後藤を追い掛ける気にも慣れなかった。
それに――
額に手をあてる。
お互いの額がくっついて唇が触れてしまいそうな至近距離。
あの時、もし、誰かが背中を押していたら間違いなく接触していただろう。
頭にフラッシュバックするのは真っ赤に染まった肱岡の綺麗な顔。
自分でやっときながら実はドキドキしてたのは秘密だ。
しかし、なんでまたこんな恋愛小説のような話しになっているのでしょうか?
それは誰にもわからない。
ええ、わからないともさ!
まったくもってわかりませんね!
誤字、脱字、文章の間違い、言葉の使い方がおかしいなどなど……ありましたらフリーダイヤル△△△−○○○○−□□□まで!……スイマセン。調子乗りました……冗談は置いといて――そういうの見つけましたらご指摘のほうお願いします!