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《紫色編》13話:転校生なんて言葉はこの世に存在します


昨日の朝は慌ただしかった。


見知らぬ部屋で目を醒ました私は少しだけ慌てたが、すぐにワカメの部屋に泊まりに来ていたことを思い出した。結局、なにも間違いが起こらなかったのは残念だ……。


時刻の確認をしようと思い携帯を開く。


『着信あり。32件』


待受画面に表示されたその文字の羅列を見て目を見開いた。誰からの着信か確認すると全て父からだった。慌て電話をかけ直す。2、3回のコール音の後、通話が繋がる。


「仕事だ。今すぐ帰ってきなさい」


父はそれだけ言うとさっさと電話をきった。


私はその日、学校を休んだ。よくあることだった。私は無責任だと思いつつもワカメをほったらかしにして仕事に向かった。だいたい、ワカメは部屋にいなかったのだから当然だったりもする。


そして、次の日つまり今日。昨日の仕事はかれこれ丸一日かかってしまった。今回の化け物はなかなかの強敵だった。おかげでもう朝だ。一睡もしていない。凄く眠かったがワカメには昨日のことを謝りたいこともあって、身体に鞭打ち学校に向かった。


朝はやっぱりワカメは教室にいない。今日もきっと遅刻だろう。来るまで寝て待とう。そう思い机に顔を伏せると直ぐに眠気はやってきた。


目を覚ましたらもう昼休みになっていた。まあ、たまにあることだ。委員超だからといって、いつも真面目になどしていられない。


ワカメを捜すが姿が見当たらない。今日は休みなのだろうか?


近くにいた机を並べてお弁当を食べている竹田君にワカメのことを訪ねるととんでもない答えが返ってきた。


「ワカメなら昨日転校したよ」



「始めました」


「何を!?」


「冷し中華に決まってんだろ!ということで転校生の若林恵です。残念ながら見たとおりの男だ。美少女を期待していた男子諸君には大変申し訳ないと思ってる」


ぶーぶー!


野郎は引っ込めー!


女の子呼んでこいよー!


男はいらねーんだよ!


ワカメ男なんて及びじゃねー!


教室の至る所で俺への罵声が飛び交う(主に男子)。素直に謝ったのになんで俺は文句を言われているんだ?納得がいかないな。


「うるせぇ!糞野郎どもが!美少女がきたってなぁ、てめぇらみたいな立ち絵も、挿絵も、声も、名前もないモブの脇役軍団が相手にされるわけねーだろが!身の程を知れ!身を弁えろ!現実を見ろ!」


あんだてめぇ!


ワカメ男がちょーしこいてんぞ!


頭茹だってんだよ!


味噌汁の具がナマいってんじゃねぇ!


あいつやっちまおうぜ!


曝し首だ!公開処刑だ!


ぶっ殺せ!


男子諸君から向けられるのは殺気、殺気、殺気。今にも飛び掛かってきそうだ。本当のこと言っただけなのにキレやがった。随分とカルシウムの足りない奴らだ。


「まあ、なんだ……とりあえずそれは後回しで乱闘すんなら休み時間にしとけ、んで、若林、おまえは空いてる席に勝手に座れ。とっとと授業始めんぞー」


俺は教師に急かされまま、適当に空いてる席に腰をおろした。


その間ずっと俺は回りから殺気を軽く受け流していた。教師の言葉で多少落ち着いたようだが、油断は出来ない。はっきり言っていつ飛び掛かられてもおかしくない雰囲気だった。


「……あんたもうちょっと協調性もったら?」


「んあ?」


声をかけられて後ろを振り向くとそこには見覚えのある顔。


「それにしても、昨日の今日で転校って出来るもんなの?」


「知ってるか?コメディーに常識は通じない」


「ごめん、知ってた」


そう言って赤子はニヤリと笑った。俺はそれにニヤリと返して席についた。


そんなわけで俺の転校先は赤子の通っている私立秋祝高校なわけである。


「まさか、恵と同じクラスになるとは流石に予想外ね」


「運命の悪戯以外のなにものでもないな」


「あっれー、お二人さんもしかして知り合いだったりしちゃうの?」


ふとそこで隣の席のどの角度からみてもイケメーンで見るからにちゃらちゃらした男が話に割って入ってきた。


「あっ、俺の名前は武山慎吾ってゆーのね。よろしく、転校生のワカメくん」


聞いてもいないの名を名乗るチャラ男もとい、チャラ汚。第一印象はとりあえずうざい。


「カンニング武山だな。わかった。そして死んでくれ」


「そんないくら俺がイケメーンだからってひがむなってぇ、まあ、おまえもそんなに悪くねぇーし、気にすることでもねぇって!」


ヘラヘラと笑いやがって…言動がいちいちうぜぇ。存在がうぜぇ。


「話し掛けんじゃないわよチャラ汚。耳が腐る」


「おいおい、赤子ちゃーん、そんなツンツンしちゃってぇ、恥ずかしがりやさんもそこまでくると可愛いげがなくなってくるぜ。わかってるぜ。赤子ちゃんは本当は俺のこと好きなんだろ?好きな人には素直になれないってやつ?いい加減、素直になっちゃいなよー。俺は受け入れる準備おっけーだぜ!」


ベラベラと長ったらしい台詞を語るチャラ汚。


「末期患者発見。重度の勘違い病だ。即刻、廃棄処理にうつる」


「なーにいっちゃってんだよ、ワカメぇ、俺と赤子ちゃんのラブ×2っぷりにヤキモチか?よしてくれよぉー俺と赤子ちゃんは愛し合ってんだぜ、それに茶々いれんのは野暮ってもんだろ?」


「このタイプはなに言っても聞かないタイプか…」


「そうよ。だからとっと廃棄処分するわよ」


「ま――――」


ごっ!


一瞬の隙に赤子の拳がチャラ汚の顔面に減り込む。それだけでもかなり痛そうではあるが赤子はさらに指にメリケンサックを嵌めていた。


「チャラ汚、あんたにはもう発言させる隙はあたえないわ」


「――――!?」


ごっ!


ニ撃目が容赦なく口を開きかけたチャラ汚の顔面に決まる。心なしか赤子が苛々しているように見えた。てゆうか苛々していた。


「――――?!」


ごっ!


「――――!!」


ごっ!


「…………」


ごっ!


赤子が何度も殴り続けたかいもありチャラ汚の身体からは力が抜けぐったりしている。気を失ったようだ。


それでも赤子は暫くチャラ汚を殴り続けた。


「赤子」


「どうかしたの?」


「主人公キャラより親友キャラのほうが希少価値高いと思うんだが、どう思う?」


「そうね。あんたは女運はあるけど親友運は0だからこの先、男の親友が出来ることないわよ」


初っ端からクラスの男子全てを敵にまわし、そして近くの席の奴から話し掛けられたはいいが、そいつはとんだゴミ野郎で…


「それはそれで悲しいな…」


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