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《灰色編》18話:結局はコメディなんだと実感した今日この頃


「夜の闇には正義が足りない!」


「蔓延る悪を滅っするのが我らの指名!」


「ここであったが100年目!」


「覚悟してもらうぞ白銀!」


黒コートの集団がわけのわからないことを叫びながら、各々コートの中から武器を取り出していく。


剣や斧等の野蛮なものから始まりサブマシンガンやロケットランチャー等の近代兵器までさまざまだ。


それらを俺達に向けて構える。


そう、こいつらはあろうことか『俺達』に切っ先兼銃口を向けている。


『俺達』つまり、その中には勿論千亜も含まれてるわけで――。


「……飛田先輩、あのゴミクズどもはバラしちゃって問題ありませんよね?」


「………………キレてません?」


「そんなことはありません。俺は断じて!キレてなどいませんよ。えぇえ!キレてるはずがないじゃないですか!キレる要素なんてありませんでしたよ!えぇえ!ありませんでしたとも!まして、その理由が千亜ちゃんに切っ先兼銃口を向けてることがだなんてあるはずがありませんよ!」


「……てめぇ、やっぱりキレてんだろ?」


「あぁん!?だからキレてねぇつってんだろぉがッ!ごちゃごちゃうるせぇんだよ!それで先輩!あそこにいるゴミクズカスどもはバラしちまっていいんだろ!?」


「………………」


俺の勢いにのけ反りつつもコクりと頷く飛田先輩。


飛田先輩の許可を貰い、俺は前に出る。


「なんだ貴様は?」


「一般人か?ならば悪いことは言わん今すぐ、そこの銀髪の女から離れることだな!」


「その女は人間ではない!狼と人間のハーフ『人狼』だ!」


「我々人間とはまったく別の生物、化け物なんだよ!」


「そして、我らはその化け物を滅ぼすもの!」


「秘密結社ッ!」


「『撲殺エンジェルズ』とは我らのことだ!」


ごだごだと五月蝿い奴らだ。貴様等のことなど知ったこっちゃ無い。それに飛田先輩のことだってどうだっていい。


俺の千亜に刃物、及び、銃火機を向けた罪!死んで償ってもらうことにしよう。このゴミクズカスどもは、この世に必要のない奴らだ。


「弁解は聞かん。反省しても許さない。謝ったからといってすむ問題じゃない。てめぇらはそれほどのことをした!」


「は?何言ってんだこの男?」


「髪だけじゃなくて、脳みそのほうも茹だっておかしくなってるんじゃないか?」


「えぇい!かまわん!その男共々やっちまいな!こいつはきっと白銀の仲間だ!」


「後ろにもう一人女の子がいますが?」


「かまわん!みんなやっちまいな!」


プチン


俺をかろうじて抑えていた最後の理性が音を立てて決壊した。


そうか、やっぱり、千亜に手を出すと言うんだな……。


沸々と沸き上がってくるのは怒り。心が、体が、怒りに支配されていく。


「………………ォオオオェオ……ゴギ、ギギ……ギャア、ゴギャァアアアアアアアアアアア!!!!!!」


月夜に雄叫びをあげたのは黒い化け物『狂戦士』


戦いの喜びに酔い、死を振り撒く者……どれほどの矢を突き立てられようとも、何度剣で切り付けられようとも戦うことをやめない不死の兵士。


「くっ、やっぱり、あいつ、白銀の仲間だ!」


「化け物になりやがった!」


「とっととかたずけるぞ!くたばりやがれ!」


ロケットランチャーを構えていた黒コートが叫ぶ。


撃ってくるか?


流石にアレをまともに喰らえばきつそうだ。


おそらく、簡単にかわせる。だが、かわすわけにはいかない。俺の後ろには千亜と、ついでに飛田先輩がいる。


俺はアスファルトの地面に爪をたてる。ぐっと力を込めると爪は簡単にアスファルトに食い込んでいく。指先に力を込めて、アスファルトを掴み取った。


手の中にはアスファルトの塊。


その塊をロケットランチャーを構えている黒コートに向けて投げ付けた。


タイミングがよかった。


一瞬遅れて黒コートがは引き金を引いた。


打ち出されたロケットランチャーの弾がちょうど飛んでくるアスファルトの塊に空中で命中した。


「伏せろぉおお!」


黒コートの誰かが叫んだ。


派手な爆発音と熱風が体を通り過ぎていく。


極限にまで高められた俺の身体能力とコメディー的ご都合主義パワーが可能にした荒業だった。


身体は大丈夫のようだ。ちゃんと動く。俺は確かめるように手を握り拳をつくる。


この姿になるのは三度目だ。


一度目は部室で。記憶はない。自分がそうなった自覚もなかった。気が付いたら、千亜と飛田先輩に組み伏せられていた。妙に身体か怠かった。


二度目は屋上で。飛田先輩に身体の制御する方法を教えてもらった。その時の記憶はあるにはあるが、どこか曖昧だ。自分の体なのに自分で動かしている自覚がなかった。自分自身を客観的に動かしているような、そんな感覚。意識と身体が別々で馴染んでいないような感じだった。


そして、三度目は今だ。

意識ははっきりとしている。

身体も思うように動かせる。

意識は身体に馴染んでいる。


この身体は俺の体だ。


この身体になったことに不満はない。寧ろ望むところだ。俺は明確な力を手に入れたのだからそれでいい。


俺はもう人間じゃない。


だから、なんだ?


あの娘だって人間ではないだろ?


「ゴギャァアアアアアアアアアアッ……!!!!!」


雄叫び。黒いコートの集団に突っ込む。


さっきの爆発で散り散りになっている黒コート達。


ここで一気に固唾ける!


「うぐぅ……あの黒いのが来るぞ!」


「銃撃部隊は牽制!残りは一度下がって隊列を組み直せ!」


マズルフラッシュと銃声。黒コートの何人かがサブマシンガンの引き金に指をかけ、残りが後ろに下がっていく。


立て直しが早い。流石に一筋縄ではいかないようだ。


ダダダダダダダダダダダダ。


狙いがまったく定まっていない銃弾とはいえ的がでかいからか命中率はそこそこだ。


俺の外皮に無数の銃弾が直撃するが何の問題もなかった。


今の俺の外皮はあの飛田先輩の爪ですら傷一つ生わせることの出来ないほどに硬い。銃弾ごとき、かすり傷にもなりはしなかった。


「ゴギャァアアアアアアアアアアッ……!!!!!」


銃撃などあってもなくても同じこと全て弾いた。


体制を立て直す暇など与えはしない。


「な、なんだあいつ!?まったく聞いてないのかッ!?」


「そんなはずはない!多少なりともダメージはあるはずだ!撃ち続けろ!」


「くっそぉおおッ!化け物めぇええ!」


次第にうろたえ始める黒いコートの集団。


疾走。残りの間合いを一気に詰めた俺は腕を振り上げ薙ぎ払った。


「うわぁあああ!!!」


俺に散々銃弾を浴びせていた奴らが二、三人纏めて吹き飛んでいく。


所詮は人間。たいしたことはなかった。


「ゴギャァアアアアアアアアアアアッ………!!!」


それからは戦闘にはならなかった。ただの作業だ。向かってくる黒コートどもを片っ端から吹き飛ばしていくだけ。技術も、経験も、関係ない。圧倒的な力の差で捩伏せてやった。


「………………」


「あーあ……これじゃぁみんな死んじまってるんじゃねーか?」


戦い終わって辺りを見回しながら千亜が呟く。


「全身の骨を粉々にして、意識飛ばしただけだ。多分死んでは……ない?」


「………………」


すっと飛田先輩が地面に転がっている黒コートの一人を指差した。


「あれ、中身出てるな」


「コメディだから死人は出ない!」


「………………明日はゴミの日」


「とりあえず、その辺に転がってるのはビニール袋に積めて出しておくか」


「………………」


「『身ぐるみ剥ぎ取って、縛って、女性専用車両に放り込んだほうがよろしいのでは?』って、美空が目で語ってるぞ」


「それも悪くはないけど…めんどくさいから、袋詰めにして東京湾にチンでいいだろ」


「………………」


満面の笑みで拳を突き出し親指を立てる飛田先輩。


流石は先輩わかっていらっしゃる。とってもいい笑顔だった。


「な、なぁ……!」


「あぁ?どうかしたか千亜?」


「………………?」


突然の呼び掛けに首を傾げる俺と飛田先輩。


「え、えーと、その……なんだ……そこまでする必要はあるのか?流石に可哀相じゃねーか?」


「はぁ…………千亜は優しいな……」


「………………天使のようですわ」


「な、なっ…!ババババ、バカ言ってんじゃねーよ!」


「だからな千亜よ。俺はそんなおまえに手を出そうとしたこいつらには、それ相応の罰が必要なんだよ」


「………………」


腕を組んでコクンと頷く飛田先輩。どうやら俺と同じ考えのようだ。


「本当はこいつら全員の首を飛ばして、しかるべきところだが…まぁ、今回は一応未遂だったからな。命まではとらなかったわけだ」


「………………」


ウン、ウンと頷く飛田先輩。


「ちなみに傷一つでもつけてたら本当に殺してたな、きっと」


「………………」


ウン、ウンと頷く飛田先輩。


「…………えーと……その……なんか、あ、ありがとな……!」


千亜は少しだけ頬を赤く染めて、はにかんだ笑顔でそういった。


それは確かにあの娘の表情で――俺はおもわず千亜に抱き着いてしまった。


「かーわーいーいー!」


「う、うわぁ!ききき、急になにしやがんだてめぇーは!」


「…………………♪」


続いて飛田先輩も抱き着いてくる。


「や、やめろ!ばっ!ちょっ!てめぇ!どこ触ってやがる!離しやがれッ!」


ゴッ!


そして、おもいっきりぶん殴られた。


「はぁ……はぁ……急に抱き着くな馬鹿……!」


「五月蝿い!黙れ!おまえが可愛いのがいけないんだ!俺はなんにも悪くなんかねーぞ!」


「う、うるせぇ!」


千亜は耳まで真っ赤にしていた。


「くっはー!あぁ、たまんねぇ!やっぱり我慢できねぇ!千亜!俺と今すぐ結婚しよう!」


「馬鹿言えッ!誰がてめぇーなんかと結婚するかッ!」


「うぁあ!駄目だ!千亜が可愛すぎる!死ぬ!萌え死にする!」


「だぁーもぉ!うるせぇ!黙れつったら、黙れ馬鹿!」


「飛田先輩!やっぱりこいつら殺しちまいましょう!こんな可愛すぎる千亜に刃物やらなにやら向けたんだ!当然の報いを受けてもらいましょう!」


「だーかーらー!やめろっつってんだろ!ワカメ!それにだいたいなぁ!てめぇは俺のことおもいっきりぶん殴ったことあるだろ!」


瞬間。ひやりと空気が冷えた。


「………………?」


どうゆうこと?と飛田先輩が目で俺に訴えてきた。


「美空ぁ!聞いてくれよ!ワカメのやつな昨日、俺の鳩尾におもいっきりパンチしてきたんだぜ!」


「……………………………………グルァアアアアアアアアアアッ……!!!!」


瞬時に飛田先輩が人狼化。


「いや!ちょ、ま、まって!飛田先輩!落ち着いて俺のはなギャー!痛い!痛いぃいッ!イヤー!中身が!中身がぁあああ!!!出るぅ!でちゃうううぅううううう!!?!!!!」


「アハハハハハハハハハ」


飛田先輩にケチョンケチョンにされる俺を見ながら千亜は笑い転げていた。


ここまで私の駄文を読んでくださった皆様! ありがとうございます! 『ワカメと悪魔』がここまで続いたのは読者の皆様がいたからだとおもいます! なんだかよくわからない展開になってきましたが、これからもよろしくお願いします!

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