《灰色編》17話:道を間違えてしまったような気がする今日この頃
「グルアアアァァァアアア!!!」
「グギャァァァアアア!!!」
ここは白黒高校、第一校舎屋上。月明かりに照らされた二体の化け物が雄叫びをあげ踊り狂う。
一方は銀色の毛並みをもつ半獣半人の化け物『人狼』
月明かりに照らされ輝く、それはただ単純に美しい。
それに対するは、黒い人型の化け物。その皮膚は甲殻類のような外皮で覆われ、体長は人狼を裕に上回る巨体。
その二体は月明かりに照らされ、淡く発光する夜の校舎の屋上で踊るように暴れ狂っていた。
「……なあ、隊超」
ぼそりと、それを端から見ていた後藤千亜が呟いた。
「どうした?後藤隊員」
それに答えるのは眼鏡をかけた生物研の部超であり、隊超。
「いつからこの話は異能者バトルファンタジーになったんだ?」
「副部超!説明よろしく!」
「うぅ〜んとなぁ〜。それはな、一時のテンションに身を任せた結果らしいぜぇ〜」
「まったく。その結果、俺は時と場合とその場のノリだけで、不死の細胞を持つ狂戦士っぽい生物に改造にされた訳ですね。とんだとばっちりですね」
「あっ、ワカメが人間に戻ってる。もう、終わったのか?」
俺は化け物の姿から素の人間の姿に戻った。ここらへんの変身は自由自在だ。
「夜もふけてきましたし、今日の訓練はここまでだそうです」
「もう7時過ぎたしな。それで、どうだったんだ?」
「はい、飛田先輩の指導でだいたい体の制御が出来るようになりましたよ」
「………………」
人狼から人間に戻った飛田先輩は無言で腰に手当て、上体を後ろに反らし偉そうにしている。
「もともと、飛田先輩が俺の身体で人体実験をしなければ、こんな訓練する必要もなかったんですけどね」
「………………」
皮肉を言ってみたが、それでも、やっぱり飛田先輩は偉そうだった。
――遡ること、だいたい一時間前――
只今、絶賛改造中!
若林恵の身体は飛田美空の手によって隈なくいじくりまわされていた。
「………………」
そんななか不意に飛田美空の手の動きが止まった。
「ん?急に手を停めてどうした?これで手術は終わりか?」
傍らでそれを見ていた隊超がそれを疑問に思い飛田美空に声をかける
「………………」
「飛田?」
「………………やべ」
ぼそりと一言。
「矢部?」
隊超が飛田美空に聞き返すのと同時に若林恵の身体に変化が起こった。
「た、隊超!ワカメさんの身体が――!」
「グギャァァァアアア!!!」
そこで雄叫びをあげたのは黒い化け物。そこにかつての若林恵の姿はなかった。
「な、何だこれは!?おい!飛田!いったいどうなってる!」
「………………暴走」
狼狽する隊超に飛田美空は冷静に一言呟いた。
「な、なんだと!」
「隊超!ワカメさんの身体が凄いことになってます!押さえ付けていた鎖も切られました!」
「ま、まずいッ!総員退避ッ!!!」
うわぁー(残酷な描写)
きゃー(残酷な描写)
やめてぇー(残酷な描写)
だめぇー(残酷な描写)
「うっわぁー……なぁ美空あれ、大丈夫なのか?」
遠巻きに(残酷な描写)を眺めていた後藤千亜が呟いた。
「………………」
「あっ、A君の頭と胴体が離れた」
「………………」
「B君がゴミのように!」
「………………」
「ジュリアがいいように弄ばれてる!すっげー!あれってあんなふうになるんだな!」
「………………」
「くうぅー!これが地獄絵図ってやつなんだな!」
「………………」
「くっはー!俺もまぜろー♪」
「………………」
「わふー♪」
ぐぎゃ?(ワカメが千亜の乱入に気付いた描写)
しねやー(千亜の雄叫びの描写)
ぐぎゃぁぁぁあああ(ワカメの雄叫びの描写)
わふー(残酷な描写)
「………………」
ぐぎゃぁぁぁあああ(残酷な描写)
わふー(残酷な描写)
「……………………………………………………………………ぐ……う…………ぐるぅ…………グ……グ、グ、グルアアアァァァアアア!!!」
ぐぎゃ?(警戒する描写)
わふ?(警戒する描写)
ぐるあああぁぁぁあああ(飛田美空参戦の描写)
ぐぎゃぁぁぁあああ(残酷な描写)
わふー(残酷な描写)
そんなこんながあり乱闘の末、俺は千亜と人狼化した飛田先輩に取り押さえられて正気に戻った。
「はっ!俺は今まで何を!?」
「………………」
俺の問い掛けに飛田先輩は目で語る。
「えーと、なになに…」
「………………」
「手術は失敗して突然変異を起こし暴走した俺を、千亜ちゃんと飛田先輩で取り押さえたんですね?」
「………………」
コクンと頷く飛田先輩。そして、さらに飛田先輩は語る。目で。
「………………」
「えーと…このままだとまたいつ暴走するかわからないから、制御出来るように訓練をしたほうがいいんですね?」
「………………」
ぐっと親指を上に突き出す飛田先輩。
「………………」
そのまま、その指を背後のドアに向ける。
――俺についてきな――。
飛田先輩は無言でそう語る。
ちょっと男前な飛田先輩。
「今から訓練するんですか?」
「………………」
返事はせずにそのまま部室から出ていってしまう飛田先輩。
その彼女の後ろ姿は大きく見えた。
「……なぁ、ワカメ」
それを見ていた千亜が呟いた。
「どうかしましたか、千亜ちゃん」
「美空はカッコイイな」
「当たり前です」
「俺、美空に弟子入りする!」
「頑張ってください。応援してます」
「応!」
※
「――で、現在にいたると……」
「あぁ?なんか言ったか?」
「いえ、なんにも言ってませんよ。とっとと帰りましょう」
「………………歓迎会は?」
「それは明日だ。A君とB君が再起不能。とりあえず明日まで待て」
「隊超と副部超も凄いことになってましたけど、大丈夫なんですか?」
「コメディー的超再生能力で全回復してるから問題ねぇ〜ぜ」
とことんご都合主義だった。
「A君とB君はまだまだ未熟だから明日にならないと戻らんがな」
「さいですか」
その後、俺達は帰り支度を済ませて学校を後にした。
途中まで5人で帰り、分かれ道で隊超と副部超とわかれ、現在は俺と千亜、飛田先輩の3人になった。
相変わらず無言の飛田先輩に何が楽しいのか千亜はニコニコしながら話しかけていた。心なしか飛田先輩も楽しそうだった。
俺はそれを一歩下がった位置から眺めながら、仲の良い兄弟みたいだなぁ…なんてことを考えいた。俺は微妙に仲間外れだった。
「千亜ちゃん」
ちょっと嫉妬したので無粋な真似だとわかったうえで割り込んでみた。
「あぁ?」
俺の呼び掛けに振り返る千亜。
「………………!」
その時だった――。
それをいち早く察したのは他でもない飛田先輩だった。
「避けて!」
飛田先輩らしからぬ大声。それにあわせるように耳をつんざく破裂音。
これは銃声!?
咄嗟に動いたのは飛田先輩。近くにいた俺と千亜を身体を使って押し飛ばす。
ガッ!
振り向くとさっきまで立っていたアスファルトの地面を何かがえぐった。
「なっ!?」
「………………チッ!」
状況を把握できずにいる俺達を飛田先輩は両脇に抱えて走りだす。凄く力持ち。
「み、美空!?」
「………………」
「ひ、飛田先輩!?」
「………………奴らがきましたわ」
「「奴ら?」」
俺と千亜の声が重なった瞬間――。
「フハハハハハハ!!!」
「………………チッ!」
突然、聞こえた男の笑い声と共に飛田先輩の進行方向に無数の影が空から降ってきた。
無数の影はそれぞれ黒いコートを羽織りフードを頭から被っている。夜の闇も手伝って、その表情は窺い知れない。
月夜に現れた黒いコートの集団はなんとも不気味だった。
「フハハハハハハハ!!!やっと見つけたぞ白銀!今日こそ仕留めさせて貰うぞ化け物が!」
その中の偉そうな黒いコートがそういった。さっき笑い声をあげたのはどうやらそいつらしかった。
「………………」
飛田先輩は脇に抱えた俺達をおろしながら、油断無く黒いコートの集団を見据えている。
「美空……あいつらなんなんだ?」
「………………秘密結社」
その時。
俺は今度は秘密結社かぁ…と呆れていたのは言うまでもない。
ファンタジーが濃いめになってきました。 次回予告! 飛田先輩が大暴れ!大乱闘です!血湧き肉踊るお祭りです!お楽しみに!




