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《灰色編》14話:長髪なんて言葉はこの世に存在しません

今回はファンタジー強めです。


「この契約書にサインしろ」


千亜は自分の超髪の中に手を突っ込み、一枚の黒い紙を取り出すとそれを俺に突き付けた。


大きさは大きめのメモ帳ほどの小さな紙。それを受け取り目を通す。


――『契約書』――

《貴女に魂を捧げます》


赤字でそこには、その一文だけが記されていた。


黒い紙に赤い文字。なんとも異様な雰囲気だ。


「あと…ほれ」


千亜はまた自前の超髪に手を突っ込み、今度は一本の赤の有性ペンを差し出された。


「これでその契約書に名前を書いて、あとはてめぇの血を一滴垂らせば契約完了だ」


「えーっと……聞きたいことや疑問をあげるときりが無いんですが……取り敢えず一つだけ質問してもいいですか?」


「却下!」


「わかりました。これからは千亜ちゃんではなく千亜たん♪と呼びます」


「な、ななな……!ふ、ふふふざけんな!そ、そんな気持ち悪い呼び方で俺を呼ぶな!」


「いいじゃないですか。可愛いですよ。千亜たん♪」


「イ、イヤー!やめて、やめて!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!」


耳まで真っ赤にしながら、ごめんなさいを連呼する千亜はなんともかわいらしかった。


「おお、よしよし」


思わず頭をなでなで。超髪をわしゃわしゃしてやると真っ赤な顔はよりいっそう赤くなる。


「…っ!さ、さわんな!」


バシッと手を払われた。


「うーん♪その初々しい反応、大変かわいらしいですよ」


「なっ!?ば、ばばばばか!ふざ、ふざけんな!」


「それで、千亜たん♪一つだけでいいので質問に答えて、くださいませんか?」


「わ、わかった!わかったから!その呼び方やめろ!」


「そうですか…残念ですが、しかたないですね…それでは、あらためて質問します千亜ちゃん」


「だから名前で……ッ!――はぁ……まあ、いいか……」


「この契約書にサインしたら、俺はどうなりますか?」


「あぁ?そんなことか?それなら簡単だ。てめぇの魂は俺のものになって、てめぇは俺の下僕になる」


「あー……そんなもんなんですね……」


その程度なら迷う必要はない。何を今更な感じではあるが、まあ、いいとしよう。


キュッポ。


有性ペンのキャップがまの抜けた音ともに外れる。そのペンで黒い紙の上にスラスラと自分の名前を書く――。


――『若林恵』――


黒い紙の上に赤い文字。なんとも異様な雰囲気だ。


「お?」


書き終わって直ぐに赤字で書かれた俺の名前が紙に溶けるように消えていく。


「おお、なんか凄いですね」


「よし、名前書いたら次だ。その契約書にてめぇの血を一滴垂らせ」


「そう簡単に言いますが、血なんてそう簡単に出ませんよ。痛いですし」


「死ね!」


何を思ったから千亜は突然、超髪の中からコンバットナイフを取り出すと俺の顔面に向けて突き出す。


ヒュッと風を切る音。


「うぉぉおお!!」


無意識のうちに回避行動。俺はそれを紙一重でかわしそこねて右頬の薄皮一枚切られた。鋭い痛み。ツーっと一筋、頬を伝って血が流れる。


「血、出たぜ?」


涼しい顔してそんなこと言いやがった。


何事もなかったように千亜はコンバットナイフを超髪にしまう。


――便利な髪だな……。俺も髪伸ばそうかなあ……。


「ほら、とっとと血垂らせ」


「わかってますよ」


右頬を伝う血を掬うように左手の人差し指に絡み付ける。


結構、血が出てるな……。後で保健室行ってこよう。


その指を紙の上まで持ってくる。


ピタッ。


指を伝って一滴、紙の表面に血が堕ちる。


するとどうだろうか、その堕ちた血は、さっき消えたはずの俺の名前をなぞるように広がると、やがて完全に俺の名前を復元した。


黒い紙に血文字で『若林恵』。なんとも異様な雰囲気だ。


「おおぉ」


思わず感心の言葉が漏れる。


「よし、これで契約は終わりだな」


すっと千亜は黒い紙を取り上げると、それをふわっと空中に離す。


千亜の手を離れると黒い紙に変化が起きる。紙の端に火がついたかと思うと一気に燃え上がり灰になってしまった。そして、灰も空気に溶けていく。黒い紙は遂に跡形も無く消えた。


「これでワカメ、てめぇの魂は俺のもんだ」


そういって千亜は無邪気に笑った。


「そうですね。俺の魂は千亜ちゃんのものです」


俺もにっこり微笑んだ。


「ワカメ……てめぇ……」


千亜は少しだけ眼を見開き、驚いていた。


「どうかしましたか?」


俺は微笑んだまま、千亜に、問い掛ける。


「……いや、やっぱなんでもねぇ」


千亜はなにかを振り払うように、頭をぶんぶん振ると、また、無邪気に笑うのだった。


「……それはともかくとして、まだ暫く時間かかるんだけどな」


「ん?どういうことですか?」


「ほれ、これ」


千亜は俺の左胸を指差す。そこに目をやると、なんか生えてた。


「なんですかこれ?」


淡く光る細い紐のようなものが俺の左胸から生えておりそれを辿って見てみるとその先には千亜の左胸。


俺と千亜は晴れて結ばれました。


「名前はわかんねーけどなんか、パイプみたいなもんだ」


「パイプ?」


「そう、パイプ。このパイプを通して、てめぇの魂が俺の中に流れてきてる。まあ、契約の証みたいなもんだな」


「へぇ、そうなんですか……いまさらですけど、そもそも魂ってなんなんですか?」


「その存在そのものだ。それがそれであるためにあるもので、それがそこにそれとして存在するために必要なもんだ」



存在そのもの、か……俺はとても大切なものを渡してしまったらしい。まあ、だからといって、後悔してるわけではないんだがな。


だいたい、俺の魂はすでに千亜のものだからな。


「だから、そう簡単に誰かにやれるもんでも、盗れるもんでもねぇ。そこで、このパイプを通してゆっくりと吸い取ってんだよ」


「なるほど、通販の分割払いみたいなことを、このパイプでやってるわけですね」


「そんなとこだ」


「完全に吸い取られるまで、時間はどのくらいかかるんですか?」


「早くて一ヶ月」


「早くて?」


「このパイプ意外と役立たずなんだよ。有効範囲が半径10メートル。その範囲内でしか働かねぇうえに普通にやっても一ヶ月もかかんだよ」


「えーと、それだとこれから一ヶ月間は半径10メートル以内に居続けなくちゃいけないわけですか?」


「基本そうなるな。まあ、契約した以上、このパイプが外れることは一勝ねぇから、範囲外にいても一旦ストップするだけだから問題はねぇぞ」


「……ま、まじっすか?」


「おう!」


そしてまた無邪気に笑う千亜。


キーンコーンカーンコーン


そこで昼休みの終わりを告げる鐘の音が響いた。


鐘の音に合わせて千亜が立ち上がる。


「最後にもうひとついいですか?」


「却下!もう、時間ねーから、後で聞いてやるよ」


――そうだな、急ぐようでもないし、それでもいいか……。


「それじゃぁ、ワカメ、放課後に俺の教室までこいな」


「え?まあ、構いませんけど…千亜ちゃんは何組ですか?」


「俺は一年一組だ。それじゃ、また後でなワカメ!」


それだけ言い残して千亜はすたこらさっさと教室を出ていった。


それを俺はぼけっと見送った。


いろいろあって頭の中がごちゃごちゃしている。


そんななか、俺は千亜が後輩であったということに一番驚いていたのだった。


ぐだくだてもうしわけないです……もう少し文章力あればいいんですがね……それでも頑張っていくんでどうかよろしくお願いします!           次回予告!       放課後は学生らしく部活?第十五話:人権なんて言葉はこの世に存在しません かみんぐすーん!

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