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《灰色編》12話:常識なんて言葉はこの世に存在しません


末継の部屋は明かりはついていない。カーテンも閉まっていて室内は薄暗かった。

どうやら、まだ寝ているようだ。


ベットに横たわる末継の顔を覗き込む。


顔色は良く、呼吸も正常だ。額にそっと手を置いて体温を計る。


――36.4度。平熱だ。熱は下がったようだ。よかった、よかった。


「……ん?……んん?」


瞼をピクピク動かすと末継はゆっくりと目を開いた。


「おこしたか?」


「…………誰…………?」


「若林恵です」


「……わか、ばやし?……ああ、恵か……」


目をゴシゴシと擦りながら、末継は上体を起こした。


「気分はどうだ?」


「うーん………ああ、だいじょーぶ。寝起きでまだ、ぼんやりするけどね」


「それはなによりだ」


「恵のおかげ…かな?……ありがとう」


「…………やっぱり、まだ体調が芳しくないようですね。普段なら、あなたがお礼を言うはずがありません」


「う、うるさいわね!たまには素直になったっていいじゃない!」


「冗談ですよ。それより、これから朝食を調達にコンビニにいきます。ついでに赤子の朝食も調達してきますので、なにかリクエストはありますか?」


「ああ、それなら私も行く。そんな世話になってもいられないし。それに、寝てばっかりいたから、少し体を動かしたい」


「うーむ。まあ、いいでしょう」


「それじゃ、外で少し待ってて、すぐに着替えるから」


わかりましたと言って俺は部屋を出る。


「どうだったの?」


部屋の外で待っていた委員超に声をかけられた。一通りいきさつを説明して、二人で待つこと数分。末継の部屋からドタバタと音がすると、ガチャと音を立ててドアが開くと中からひょっこりと末継が出てきた。


「おまたせ―――って、あんたは!?」


末継の視線が俺の隣の委員超へ向けられる。


「おはようございます。末継さん。相変わらずの大艦巨砲が妬ましいですね」


「くっ、おかしいと思ったら、全部あんたの仕業ね!」


「はて?なんのことを言ってるのかさっぱりですね?」


首を傾げて惚けて見せる委員超。


「惚けるんじゃないわよ!白々しい!折角、私と恵の仲が幼なじみの関係から、一歩進んだ甘く切ない初々しい関係になって、これからキャッキャウフフでいちゃいちゃしまくりのバカップルになっていく予定だったのに!よくも邪魔してくれわね!」


「そんな展開は例え読者が望んでも私が許しません。こんな早期の段階で主人公が彼女持ちなんて赦されないことです。大人しく諦めなさい。この世界ではあなたとワカメがやっちゃった事実なんてないんですから」


「横暴だわこんなの!理不尽よ理不尽!私の初体験を帰せ!」


「文句が言いたいのは私のほうですよ。当初、出る予定も立ち絵もボイスも用意されてなかった、お隣りさんそのAごときがヒロインどころかさらにランクアップしてあろうことか幼なじみにまでなっている。なんですかこのビップ待遇は?横暴?理不尽?そんなのこっちらの台詞ですよ。今回の超分断は当然、むしろ必然の処置です。本当は幼なじみの設定もなかったことにしたかったんですが、流石にそこまでやるとなると世界の歪みも尋常じゃないことになってしまいますからね。残念です」


「そんな都合は私の都合となにか関係があるの?そうぐだぐたと理由を並べてはいるけど結局はただ悲願でるだけでしょ?」


「あー…………あー………あー……あー…あーあーあーあーあーあーあーあーアーアーアーアーアーアーアーアーアーこっちが下手に出てりゃ付け上がりやがって……………!」


「す、末継さん?」


やばい!なんかスイッチ入った!


「………いい加減にしろよてめぇ………世界の歪みなんて知るか今すぐこの世界から消してやる!」


「はんっ!よくいうわね!あなたがあたしにかなうはずないじゃない!どうせ、あなたのことだから超分断の時あたしごと消そうとしたんじゃない?でも、結局は消せなかった…そうでしょ?」


「だからなんだっつうんだよ!この糞女!」


委員超はどこからともなく木製のバットに五寸釘を何本もあしらえた魔が魔がしい所謂一つの『釘バット』を取り出した!


委員超はそれを問答無用で振り上げ末継に襲い掛かる。


その攻撃を末継は軽々と交わしながら言葉を紡ぐ。


「図星みたいね!ふふーんそうなるとどうやら世界もあたしの味方のようね!」


「ごだごたうるせえ!ここで消えろ!」


委員超の猛攻。その一撃一撃は重く末継を逸れた打撃は軽々とコンクリートの床や壁をえぐっていく。


「ところで赤子」


「ん?どうかしたの恵?」


委員超の猛攻を避けつつ末継は応えた。


「超分断とか世界の歪みって何のことだ?」


「んん?ああ、超分断はご都合主義的超パワーで世界そのものを捩曲げて、あったことをなかったことにする必殺技のこと。それで、世界の歪みってゆうのは超分断の時に生じた不自然による綻びのことよ。まぁ、世界を捩曲げておいてなんのリスクも逐わないわけではないってことね」


「ふーん……なるほどな」


それで俺と末継の規制事実をなかったことにしたわけだな。


裏を返せば俺はあの時、末継と本当にやっちゃったってこてにもなるが……。


「見切った!消えろ!」


一瞬の隙をついて委員超の横薙ぎが末継の脇腹にクリンヒットした。


ゴッ!


鈍い音。衝撃で末継の身体が壁に打ち付けられる。


「ぐぅ……あんたやったわね!」


「五月蝿いですね。とっとと消えてください」


いつのまにか委員超はいつもの調子に戻っていた。


「いい度胸じゃない!あたしに一撃いれたこと一生後悔させてやるわ!」


末継はポケットからメリケンサックを取り出すとそれを指に嵌めて構えをとる。


「負け惜しみですか?見苦しい。糞女は早く消えてください」


「よく言うわね。まな板女が!そんな貧相な身体してるから寝とられるのよ!」


「黙れ!消えろ!」


委員超が吠える。釘バットを振りかぶり末継に襲い掛かった。それを軽々と避けながら末継は間合いを積めていく。直も続く打撃の嵐を右へ左へ避け、そのまま懐に潜り込んだ末継。


ゴッ!


鈍い音とともに末継の右拳が委員超の鳩尾に突き刺さる。だが、委員超はそれを喰らっても平然と何事もなかったかのように、釘バットを上から末継の頭部を狙って振り下ろす。末継はそれを驚異的な反射神経で紙一重で避けると後ろに下がって距離をとった。


「あたしの一撃を喰らって平然としてるなんて……化け物め」


「あなたこそ、私の釘BUTの一撃で死なないほうが、よっぽど化け物でしょう」


どっちもどっちだろ。


俺は心の中でツッコミを入れた。


むやみに巻き込まれたくないしな。


一呼吸おいて戦闘が再開される。


委員超が釘バットを振り回し、末継がそれをかわしながら拳を繰り出す。


激闘と呼ぶに相応しい。


そこにはヒロインたる自覚はない。ただ己の本能のまま暴れ回る獣が二匹いるだけだった。


それにしても……そろそろお腹かがすいてきた。


俺にこの二匹を止めるのは不可能にちかい。


となれば俺のやることは一つ。



朝食を買いに行きましょう!


俺は気配を消して戦場から脱出した。


よくわからないことになってきました……それでもこのまま突っ走るのでよろしくおねがいします! 次回予告!ついにあの子が帰ってくる!? 第13話:計画なんて言葉はこの世に存在しません!

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